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12.アンテナチューナー(カップラー)のコイルとバリコン

12.アンテナチューナー(カップラー)のコイルとバリコン
                         パソコン関係は こちら   総目次は こちら
......................カテゴリ「アンテナと整合」の8~11までのページ
...........8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRがさがる
...........9.非同調フィーダーと同調フィーダー
........10.アンテナチューナー(アンテナ カプラー:空中線整合器)
........11.続:アンテナチューナー(オートチューナー)

このページは「11.続:アンテナチューナー(オートチューナー)」の続きです。前項で説明しましたがオートアンテナチューナーは,複数のコイルとコンデンサーを組合わせてチューニング(整合)をとるため複雑に見えますが,基本的には下図の回路を構成しているのに過ぎないのです。
     L型整合器A2B2
さまざまなインピーダンス(ZL)のアンテナに整合させるためには,上図のコイル(L)とコンデンサー(C)の値を変化させる仕組みが必要です。オートアンテナチューナーはリレー接点を用いて複数のコイルを短絡させたり,コンデンサーを並列にしたりして整合に必要な値を作ります。
このページでは,コイルの値(インダクタンス)を変化させるためコイルにタップを設け,コンデンサーの値を変化させるために「バリコン=可変コンデンサー」を使用して,シンプルで安価かつ高性能のアンテナチューナー(カップラー)を試作してみましょう。(バリコンの入手はこのページ下部をご覧ください)

【アンテナチューナーのコイル】
短波帯のアンテナチューナ用のコイルとしてはソレノイドコイルが良いでしょう(トロイダルコアに巻いたものもありますが,高い周波数で性能が下がる場合があります…価格的にも割高)。
送信電力を扱うので大きな高周波電流に耐えるとともに高周波損失の少ないコイル(Qの高いコイル)を使用する必要があります。
Qについては後で記述しますが,高周波抵抗が少ない太い線を用いて高周波絶縁の高い巻枠を使用すればQの高いコイルが作成できます。巻き線は太い銀メッキ線が理想的です。巻枠はステアタイト(できれば空芯)がベターです。
       ステアタイトについて詳しくは こちら
次の写真はアンテナチューナ用として使用できるコイルの例です。ステアタイトの巻枠を使用しています。コイルの途中からタップを出してコイルの値を切り替えることができます。(写真はクリックで拡大します)
   タイトコイルIMG_1563 タイトコイル520用IMG_1565
下の写真は「エアーダックスコイル(巻枠なしの空芯コイル air dux coil , air dielectric inductor)」です。トヨムラ製のものが販売されていました。必要な長さに切って利用しました。(写真はクリックで拡大します)
   エアーダックスコイル エアーダックスコイル2
下の写真は遠洋航海船舶用無線機で使用していた送信用コイルです(一緒に写っているお茶のペットボトルが小さく見えます)。(写真はクリックで拡大します)
     船舶用送信機コイルB
これらのようなコイルは入手が難しいため,今回は身近で入手できる材料でコイルを自作します。性能はオートチューナーの中のコイルより優れた性能のものをめざします。

【コイル線としてVVFケーブル心線を活用】
住宅の電気配線に使用する「VVFケーブル=600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル」の心線を使用します。内部の銅線のサイズが1.6mmφのもので良いでしょう(2.0mmφでも良い)。
 (アース配線用の緑色の単線=IV線1.6mmφでもOK
日曜大工店では1mあたり80~90円程度で切り売りしてくれます。今回は近所の住宅工事現場から切り落とし線(1.5m)を無料でいただいてきました。銅線の絶縁被覆をとります。カッターで縦に薄く傷をつけて被服を引張れば簡単にとれます。カッターで手を切らぬように左手にタオルを巻いて行います。(写真はクリックで拡大します)
  VVFケーブル VVF線を剥ぐ2

【コイルを自作】Homebrew air dielectric inductors
銅線の先端を固定し一直線に引っ張った状態で,単一乾電池を回転させて銅線を巻きつけます。巻き終ったら電池を抜きます(巻がゆるんで抜けます)。下の写真は巻き終ったところです。エアーダックスコイルより貫禄があります。(写真はクリックで拡大します)
   VVF心線のコイルとエアダックス1
無料でもらったVVF線1.5mで巻いたコイルは長さ(L)65mm,直径(D)48mm,巻き数(N)17回となりました。これらの数値から計算すると,このコイルのインダクタンスは5μHです(アマチュア的手法で実測した結果5.2μHでした)。
 測定器なしでインダクタンスを調べる方法は ⇒ こちら のページです。

両端に手持ちの樹脂スペーサを使用してコイルを浮かせました。スペーサーは「樹脂スペーサ」「ジュラコンスペーサ」「絶縁スペーサ」でネット検索すると見つかります。スペーサが無い時はプリント基盤を縦長にカットし,中央部の銅箔を剥いでスペーサーを作ることもできます。
コイルをスペーサで浮かせるのは,チューナを金属ケースに入れた時に金属板からコイルの半径以上の距離を作る必要があるからです。

 コイルの固定は,下の写真のように「うちわ」の握り部を切り落として利用しました(安価第一)。コイルが振動しないように中間部の下部にも樹脂スペーサを取付けました。コイルのタップ用圧着端子は右写真のように,角度をずらして取り付けます(角度をずらす理由はネジ締め作業を考慮したためです。)(写真はクリックで拡大します)
   VVF心線のコイル1 手巻きコイルIMG_1562

市販品のように,コイルタップ切替にステアタイト製の「ロータリースイッチ」を使用したいところですが,安価第一と考えロータリーSW無しとしました。また,タップ切替にワニ口クリップの利用も考えましたが,接触が不安なこと,大きな電力に耐えられそうにないことから,圧着端子を使用したタップ切替にしました。
圧着端子式は接触面積が大きく,締付圧力が加わることから,電力容量的にはロータリースイッチ接点より優れていますが,タップ切替がネジ操作となるため少し時間がかかります(無銭家向き?)。頻繁にアンテナを切替えない場合は圧着端子式で十分です。
次の写真は「圧着端子によるタップ接続」の模様です。圧着端子の数は多いほどきめ細かくチューニングがとれます。(写真はクリックで拡大します)
   試作カップラーコイル端子2

【バリコン:可変容量コンデンサー】
アンテナチューナーに使用するバリコンは,送信電力が加わるため耐電圧が必要です。1~2W程度の送信電力であれば受信用のポリバリコンでも代用できますが,それ以上の送信電力が加わる場合は次の写真のようなタイトバリコンを使用します。左写真の大きなものは容量200pF耐電圧1kv,中央のものは100pF/1kv,小さなものは100pF/500Vです。右写真は耐電圧2Kv容量200pFです。(写真はクリックで拡大します)
   バリコンIMG_1557 バリコン中2

【秋葉原のタイトバリコン販売店】
試作コイルは送信電力200Wに耐えられそうなので,200pF/1kvのタイトバリコンを使用することにしました。試作は手持ち品を使用しますが,同クラスのバリコンは秋葉原で購入できます。(写真はクリックで拡大します)
   バリコン150pf バリコン250pf
次の写真は秋葉原ラジオデパート3階の門田無線に並んでいた1kv耐圧のタイトバリコンです。左から50pF,100pF,150pF,200pF,250pFの5種類がありました(2012年7月)。写真の右奥に500V耐圧のバリコンがならんでいました。全く同じ製品かどうかはわかりませんが,同フロアのシオヤ無線にもありました。シオヤ無線の隣の斎藤無線には本格的な耐圧2Kvのものがありますが,特注品なので値段は高くなります。 (写真をクリックすると価格が読めます)
   門田無線のバリコン

バリコンを購入する時,50pF/1kv,100pF/1kv,150pF/1kv,200pF/1kv,250pF/1kの選択ですが,3.5MHzでも使用できるアンテナチューナを作る場合は250pFを選びます。50MHz用を作る場合は50pFで十分です。容量の大きいものは小を兼ねることができますが,わずかな回転角度で容量が大きく変化するのでチューニングがやりにくい欠点がありますので,容量が大きいものがベターとは言えないでしょう。
250pFのバリコンを21MHz~50MHzで使用する場合は,100pFのコンデンサーを直列に挿入すれば71pFのバリコンとなります。

参考:秋葉原のタイトバリコン販売店 (2012年7月現在)
(1) 東京ラジオデパートのページは → こちら
(2) 東京ラジオデパート3階 門田無線は → こちら (通信販売もOK)
(3) 東京ラジオデパート3階 シオヤ無線は  → こちら
(4) 千代田区神田佐久間町1-7 国際ラジオは → こちら
(5) 秋葉原ラジオセンター2階 菊池無線の場所は → こちら
(6) 東京ラジオデパート3階 斎藤電気商会は → こちら(特注バリコン)

コイルとバリコンが揃ったのでローコスト万能型アンテナチューナとして組み立てます。

次のページは → こちら Next page should click here.

総目次へもどるは
 → こちら


  1. 2012/07/08(日) 14:07:31|
  2. 無線アンテナと整合
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  4. | コメント:6
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コメント

アンテナチューナー初挑戦

初めまして、7L4NDL/NOBと申します。
(回路製作初心者です)

自作したアンテナ(VCH、DELTALoop)をマルチバンドで自在に操りたく、こちらのページでアンテナチューナーの構造や仕組みを勉強させていただいております。
そろそろ覚悟が決まったので、部品を揃えて製作に取りかかろうと思っています。

そこでいくつか教えていただいたいと思い、コメントを書かせていただきました。

・チューニング対象バンドは、14MHz~28MHz(できれば10MHzも)。
・バリコンは100p/1KVが1コあります。
・コイル用銅線は1.0mmと1.6mmを用意してあり、1.6mmで作ろうと考えています。

ここで、質問なのですが、
・チューナーの回路構成が色々とれるようですが、バリコンが1コしかないので、T型整合器(LCL型)かL型整合器AまたはL型整合器Bの中から選択となりますが、やはりT型整合器(LCL型)がよいでしょうか?
・コイルのインダクタンスですが、単2電池に銅線16回まいて(L=78mmの場合)、3.8マイクローヘンリーとありますが、10MHzから28MHzの場合、これで十分でしょうか?
※LとCから求める共振周波数の計算式がここで成り立つのかどうかが分かっていません。
以上となります。
  1. 2014/07/29(火) 21:30:31 |
  2. URL |
  3. 7L4NDL/NOB #1/HVITno
  4. [ 編集 ]

Re: アンテナチューナー初挑戦

コメントありがとうございます。
VCH DeltaLoopの詳細(地上高,Loop全長,給電方法など)がわかりません.
ANTチューナー(整合器)を,ANT給電部へ取り付けるのか,無線機の出力から1m程度(近い位置)に取り付けるのかが文面から読み取れません。
ANTチューナーを無線機に近い場所へ取り付けても,チューナーからANT給電点までの同軸ケーブルの区間のSWR値は改善されないので,電波が飛ぶとは言えません。
基本的には,ANT給電点と給電ケーブル(同軸ケーブル)のインピーダンスをあわせることが必要です。

例えば,21.3MHz用のDeltaLoopでしたら,Loopの全長は14.79mの時,ANT給電点のインピーダンスが約100Ω程度となります。この給電点へテレビ用の75Ω同軸ケーブルを接続して無線機へ引くと,同軸上のSWR値は2以下となるでしょう(100Ωの同軸ケーブルは入手困難)。
無線機の出力は50Ωですから,無線機と75Ω同軸の間にL型整合器を使用すると両者の整合がされて無線機は効率よく働きます。

LCL型整合器でもOKです。LCL型整合器でめんどうなのは,Cのバリコンを回転させるだけでなく,左側のLの値,右側Lの値を増減させて整合させる必要があり,このLの増減がめんどうです。
周波数が変わったら,再び,左Lも右Lも細かく増減させてCも変化(回転)させる操作が必要です。
この手順で14,21,28と3バンドで整合させようとすると,Lの値変更で大変です。

LCL型やL型A,L型Bはシングルバンド向きのANTチューナと言えます(やればマルチバンドでもできますが切替時の手間が大変ですよ…)。
参考:次のURL「垂直接地アンテナと同軸ケーブルの整合(マッチング)」の後半部を見てください。
http://take103.blog.fc2.com/blog-entry-123.html

そのため,メーカ製のチューナ(整合器)では,バンド切替がラクで,調整も楽なCLC型が採用されています。
ケンウッドTS930,TS940などではCLC型を採用し,バリコンCをモーターで回転させていました。

π型はバリコンの耐圧は小さくて済みますが,整合できる範囲がやや狭い欠点があります。
整合できる範囲が広いのは,次のトランスマッチ型です。
この方式は耐圧の高い2連バリコンが必要な問題があります。
CLC型はπ型よりも整合範囲が広く,バンド切替もコイルのタップ切替で済むので,市販のANTチューナに採用されています。

NOBさん,まずはシングルバンドで試してみることをお勧めします。
以下は参考ページのURLです。クリックして見てく出さい。

18.トランスマッチ方式のアンテナチューナー回路例
http://take103.blog.fc2.com/blog-entry-63.html

17.東京ハイパワー HC-500 アンテナカップラー(チューナー)
http://take103.blog.fc2.com/blog-entry-62.html

13.アンテナチューナー(カップラー)の自作-1
http://take103.blog.fc2.com/blog-entry-58.html

書き忘れましたが,整合できたかどうかを把握するためにはSWR計などが必要ですよ。

不明の点は再度コメントください。
管理人より。
  1. 2014/07/30(水) 11:28:17 |
  2. URL |
  3. take103kota2 #-
  4. [ 編集 ]

Re: アンテナチューナー初挑戦

続:参考です。

Yahooのオークションを開いて,検索枠に「バリコン」と入れて検索したら次のようなバリコンがでてきました。
このようなバリコンを手に入れて,CLC型で試作してはいかがでしょうか?
200pfバリコン TS-520からの外し品
http://page8.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/h191163531

参考2:
Yahooオークションの検索枠に「アンテナチューナー」と入れて検索したら次のものがありました。
このページの写真(内部)を見るとCLC型です。バンド切替はコイルの端子切替のみです。
【DAIWA】アンテナ・チューナーCNW-319 (HF/50MHz)
http://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/187174065

以上,参考です。管理人より。
  1. 2014/07/30(水) 12:04:56 |
  2. URL |
  3. take103kota2 #-
  4. [ 編集 ]

Re: アンテナチューナー初挑戦

こんにちは、NOBです。
回答ありがとうございます。

>VCH DeltaLoopの詳細(地上高,Loop全長,給電方法など)がわかりません.
このあたりを書き忘れていました。すみません。
VCH、 DeltaLoopとも自作実験のつもりで作成しており、現在自宅2F
のベランダ(給電点は地上高6m位です)に設置しており、各バンドの整合状態や、飛びの具合などを確認しています。いずれは移動運用に持ち出したいと思って作っております。
VCHは7MHzに同調するようにコイルを撒いており、給電部にソータバラン(1:1バラン)をいれてあります。、DeltaLoopは28MHzに同調するようにエレメントの長さを取っております(MMANAの最適化値を考慮)。インピーダンスは頂点角90度で200Ωと考え、1:4バランを接続しています。各バランから50Ωの同軸をひいています。現在は主にVCHの動作確認中で、確認したいバンドに合わせ、コイルの位置をクリップ等で動かしている状態です。

チューナーの取り得る構成は様々で、それぞれメリットデメリット(調整の手間や部品の価格や入手方法も含めて)があるようですね。
また、私のような初心者には難しい面もあるようですね。

まずは、お勧めいただいたシングルバンドに挑戦したいと思います。
また、チューナーの挿入位置は給電部直下がベストなんですよね。今回の作成実験の中で、給電部から離したらどうなるかも体験したいと思います。

丁寧な回答をありがとうございました。ガンバってみます。

PS.実験の際の測定器ですが、SWR計の他にアンテナアナライザー(AA-54)を持っておりますので、なんとかなるのでは?と思っています。
  1. 2014/07/30(水) 17:54:58 |
  2. URL |
  3. 7L4NDL/NOB #1/HVITno
  4. [ 編集 ]

Re: Re: アンテナチューナー初挑戦

NOBさん

先の回答の修正です。
VCHアンテナ用のANTチューナーであればコイル1つとバリコン1つで整合できると思います。
VCHアンテナはウインドムアンテナの一種なので給電点のインピーダンスは600Ω~200Ω程度でしょう。
(給電点の地上高が低いと,値はもう少し低くなるかもですね)

給電点のインピーダンスが50Ωより大きい状態の時は,L型整合器Bのタイプで整合できます。
L型整合器Bのコイルですが,7MHzの場合,NOBさんが巻いたもので試作され,コイルの巻き数の調整は,ICクリップ(または小型ミノムシクリップ)で短絡させる方法でトライしてみると良いでしょう。
コイルの巻き数が不足の時は,追加分のコイルを作って,継ぎ足しします。
追加分のコイルは基のコイルと同じ巻枠でなくてもOKです。

バリコンも手持ちのものでトライし,容量が不足するようなら,50~68pF/500V程度のマイカコンデンサーを並列に増やせば良いと思います。(それでも不足なら,更に50~68pFを追加すると言うようにします)。

良い計測器をお持ちですから,VCHアンテナを楽しんでください。

管理人より。
  1. 2014/07/31(木) 11:40:41 |
  2. URL |
  3. take103kota2 #-
  4. [ 編集 ]

Re^3:アンテナチューナー初挑戦

こんばんは、NOBです。

レスありがとうございます。

先日教えていただいた情報も含めて、こちらのページで色々勉強しながらチャレンジしようと思います。
ありがとうございました。
  1. 2014/07/31(木) 20:06:38 |
  2. URL |
  3. 7L4NDL/NOB #1/HVITno
  4. [ 編集 ]

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