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8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRがさがる?

8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRがさがる?話の検証です。
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   ...........1.アンテナと共振周波数
   ...........2.アンテナとインピーダンス
   ...........3.アンテナとフィーダ(給電線)
   ...........4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
   ...........5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)
   ...........6.SWRの測定と問題点
   ...........7.SWR計と注意点

同軸ケーブルに定在波(Standing Wave)発生する原因はアンテナ給電点のインピーダンスとフィーダー(同軸ケーブル)の特性インピーダンスが合っていないことによるものです。言い換えると,アンテナ給電点のインピーダンスを同軸ケーブルの特性インピダンスへ合わせない限り,定在波の大きさは変わりません---定在波比(SWR)の値も変りません。

なのに,同軸ケーブルを長くしたり短くしたりするとSWR値が下がる?....同軸ケーブルの長さを調整してSWRをさげる?...同軸の長さでSWRが変わる?と言う話が時々でてきます(40年前のCQ誌にも話がでてきます)。これは,どのようなことでしょうか?...具体例をあげて検証してみましょう。

【検証:1】
前3章の図3.6~図3.8で説明しましたが(3章はこちら),同軸ケーブル長が1/2波長の点はアンテナのインピーダンスが同軸ケーブルの特性インピーダンスと合っていなくても(同軸ケーブル上のSWRが高くても),アンテナのインピーダンスと同じ値となります。この特性を考えながら次の図を見てください。
(蛇足:同軸ケーブル長とは短縮率を含む長さ。同軸ケーブルの特性インピーダンスとは同軸の構造や絶縁物の誘電率によって決まり,周波数などで変化しない値。同軸ケーブル上のインピーダンスとは周波数や接続されたアンテナなどによって変化する値です。)(図はクリックで拡大します)

---図8.1...  同軸ケーブルの長さが1/2波長の点にSWR計を接続した場合---
        1_12波長SWR変化
上図の右(A)点でインピーダンス75Ωのアンテナと特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルを接続すると,不整合による反射波によって,同軸ケーブル上に定在波が生じ,定在波比SWRは1.5となります。アンテナ接続点[(A)点]から左側へ進むにつれて同軸ケーブルのインピーダンスはリアクタンス成分(±jx)を含む形で変化します(SWR値は変化しません)。
同軸ケーブル長が1/2波長の点(A')に到達すると,リアクタンス成分が±0となり,同軸ケーブルのインピーダンス(A')は(A)点と同じ状態(A'=A=75Ω)となります。そのA'点(75Ω)に特性インピーダンス50ΩのSWR計を接続するとSWR計の値は1.5となりますが,特性インピーダンス75ΩのSWR計で測定すると,(A)=(C)なのでSWR計の値は1.0となります。
(50Ω用のSWR計の特性インピーダンスが+20%=60ΩへずれていたらSWR計の計測値は1.25となります。)
上図の同軸ケーブル部を1/2波長の「はしごフィーダー(600Ω)」としたらフィーダー上のSWRは8と大きな値になりますが,(A')点は(A)点と同じ75Ωとなるので,SWR計の値は1.0となるのです。

【検証:2】
同軸ケーブルの特性インピーダンスをZ0,アンテナのインピーダンスをZaとすると,同軸ケーブル長が1/4波長の点におけるインピーダンスZは次のようになります。(式はクリックで拡大します)
                            2_Qマッチ計算式
下図は接続のイメージです。1/4波長より短い点,あるいは長い点へSWR計を挿入すると,インピーダンスが上の式の値とならないため,特性インピーダンス50ΩのSWR計で測定するとSWR=1.0とはなりません。
---図8.2---  (図はクリックで拡大します)
       2_14波長SWR変化
上図の上段は,1/4波長の点の特性を利用し,その点から無線機までを50Ωの同軸ケーブルで給電する整合方法です。この整合方法を「Qマッチ」と言います。

下図は車載用(モービル用)アンテナなどで考えられるケースです。1/4波長垂直アンテナの給電インピーダンスは1/2波長ダイポールアンテナの約半分の値=33Ω程度です。33Ωに50Ωの同軸ケーブルを接続すると同軸ケーブル上のSWRは1.5(50÷33)となります。同軸ケーブル長が1/4波長(奇数倍)の点のインピーダンスは,上式により75.8Ωとなるので,その点へ特性インピーダンスが50Ωでなく,-20%ずれた40ΩのSWR計を接続すると,下図のように,同軸ケーブル上のSWRは1.5なのにSWR計の値は2.0となってしまいます。
---図8.3---  (図はクリックで拡大します)
           4_14波長でSWRが下がる3

前編のまとめ
同軸ケーブルの長さを調整しても同軸ケーブル上のSWRは変化しないが,SWR計を挿入するポイントによって,また,SWR計自身の特性インピーダンスが正確でないとSWRの表示が高くなったり低くなったりする現象が発生する場合がある....と言えます。

【アマチュア用SWR計本体の特性インピーダンスは正確か?】
手持ちのSWR計の取説に50Ω用として書いてあるので,上記のようにインピーダンスが60Ωとか40Ωなど±20%近くもずれているはずはない?と考えそうですが…
アマチュア用SWR計の入力と出力接栓に使用されるM型コネクター(セクレタブル,中継コネクタ含む)の規格が「いいかげん」なことをごぞんじでしょうか?
M型コネクタ-は外導体,中心導体の寸法は決まっていますが,なんと「インピーダンスについては考慮しなくてよい」ことになっているのです。次はおなじみのM型コネクターの外観図です。(写真はクリックで拡大します)
       フェノール絶縁Mオス フェノール絶縁M型オス拡大 テフロン絶縁Mオス M型レセクタブル M型中継コネクタ

M型コネクタ-の特性インピーダンスを同軸ケーブルの計算式で求めると次のようになります。(式はクリックで拡大します)
          M型コネクタの特性INP
中心導体と外部導体の絶縁体として品質の良いテフロン製のM型コネクタ-でも特性インピーダンスは33Ωです。
M型コネクタ-の長さはセクレタブルを組合わせて約27㎜程度です。この27㎜は,50MHzでは0.006λ,144MHzでは0.013λ,430MHzでは0.055λに相当します(テフロンの短縮率含む)。
上の写真の中の絶縁体が黄色/茶色のものはフェノール絶縁です。フェノール絶縁製品はインピーダンスが20Ωと更に悪くなります。

この33Ωの部分がSWR計のIN側とOUT側に2箇所存在します。その合計の長さが使用周波数に対して無視できない長さになるとSWR計の特性インピーダンスが変化します。M型コネクタ部分のみならず,SWR計のINからOUTまでの内部伝送路の機構が50Ωとなるように精密に仕上げられていない製品,検出ラインのC結合とM結合が適正に仕上げられていない製品ではSWR計自身の特性インピーダンスが大きく変化します。

次の写真はアマチュア用で短波周波数帯用のCM型SWR計の内部伝送路と検出ラインです。2つを見比べると中心導体のサイズや検出ライン導体との間隔差が見られます。また,IN/OUTコネクタと内部伝送路の外部導体との接続などが異なります。このような構造のSWR計の特性インピーダンスが取説通りに50Ωなのかどうか疑わしい感じです。(写真はクリックで拡大します)
          SWR内伝送路機構
次の写真はV・UHF用のSWR計の検出部と入出力コネクタです。検出部をスプリットライン式で設計しシールドしています。コネクタを差し込むIN・OUT端子のレセクタブルは絶縁材の使用を最小限にする努力をしています。本来ならN型かBNC型コネクタ-を使用して欲しいと思いますが,価格がアップすること,接続用ケーブルの加工がやや難しいこと等(結果的に売れない)から簡便なM型コネクタ-を使用しているのでしょう。(写真はクリックで拡大します)
       UHFSWR計検出ライン UHF中空絶縁レセクタブル
144MHzや430MHzではM型コネクタ-の使用を避け,N型やBNC型コネクタを使用すると良いでしょう。SWR計の内部伝送路でのインピーダンス変化を防ぐには,銅やアルミの丸棒を旋盤で加工してキャビティ形とするなど精密な作りが必要でしょう。間違っても,U・VHF帯でM型中継用セクレタブルの使用は避けるべきです。

まとめ:

同軸ケーブルの長さを調整しても同軸ケーブル上のSWR値は変化しませんが,特性インピーダンスが正確でないM型コネクタ-や内部伝送路を使用したSWR計を使用すると,SWR計を挿入した場所によってSWR計の表示が悪化したり改善されたりする場合があります。
では,同軸ケーブルの長さを調整してSWR計の表示がさがるポイントを探すことは意味がないかと言えば,必ずしもそうとは言えません。図8-1のように1/2波長の整数倍の長さで使用すればリアクタンス成分が最小になり,送信機と同軸ケーブルの整合状態が良い状態になります。また,図8-2のように,1/4波長の点で生ずるインピーダンス変換特性を利用して真のSWRを改善することもできるのですから。同軸ケーブル上のSWRは変化しなくても,送信機(トランシーバー)の出力と同軸ケーブルの接続点のインピーダンスが合うことは,送信電力増幅部の動作効率に効果があります。
アンテナと同軸ケーブルの接続点のインピーダンス整合(同軸ケーブル上のSWRを下げる)が最も大切ですが,同時に,送信機出力と同軸ケーブルの接続点の整合も大切です。この点が不整合ですと「送信機から同軸ケーブルへ送り込まれる電力が大きく減少する=送信電力が出なくなる」ので,同軸ケーブル上のSWRによる損失うんぬん以前の問題となります。

あとがき:
SWRの値が高いと,送信機からの電力がアンテナへ送り込まれない...電波が飛ばないと考えますが,SWRが2以下であれば,電力のほとんどがアンテナから輻射されます(HF帯のはしごフィーダーなどはSWR=8ですが,反射された電力が再びアンテナへと行ったり来たりして大部分がアンテナから輻射されるのです--- この辺の説明はこちら 5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算))。

SWR=1.5とSWR=2.0の送信状態を遠方の受信点で測定した場合,その差はわからないでしょう。
特に,短波帯は電離層の反射状況が通信のすべてを左右しますから,SWRは一定の値以下であれば気にするほどのことではないでしょう。VHF/UHFモービルの場合でも地形が最も左右します。
モービルの場合は同軸ケーブル長も短いのでSWRの値は一定以下なら気にするほどのことはないでしょう。

それよりも,電力増幅部が半導体の送信機(トランシーバー)では出力インピーダンスが50Ωと固定なので,送信機出力端子において同軸ケーブルとの接続に不整合が生ずると,送信電力増幅部の動作効率が悪化するため,効率よく同軸ケーブルへ送り込まれるように整合器(アンテナチューナ=カップラー)の利用も重要です。

次の9項「同調フィーダーと非同調フィーダー」は ⇒ こちら

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  1. 2012/02/04(土) 17:49:48|
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