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7.アマチュア無線用SWR計と注意点

7.アマチュア無線用SWR計と注意点
                                                    総目次へもどるは ⇒ こちら
アマチュア無線用のSWR計の問題点と注意点です。
SWR(Standing Wave Ratio)については前章をごらんください。
     ......4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
     ......
5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)
     ......
6.SWRの測定と問題点は こちら


SWR計は同軸ケーブルに発生した定在波(Standing Wave)を調べる測定器です。測定器なので精度が重要ですが,アマチュア無線用のSWR計は真のSWR値より甘く表示するものが多くあります。何故,SWR値が甘い表示になるのかを調べてみました。
次の写真はアマチュア無線用のSWR計の内部(1例)です。外観は前6章の写真を見てください。
--- 図7.1 ---   (写真はクリックで拡大します)
       1_SWR計内部e
上記の構造のSWR計は「CM型SWR計」といいます。下図は,検出ライン式のCM型SWR計の基本回路です。
下図のINからOUTへの太線は同軸ケーブルの中心導体に相当する部分です。図の太線と並行の2本の導体は検出ラインです。緑色の円は中心導体と検出ラインの磁気結合M(相互インダクタンス)を表したものです。青色の円は静電容量Cによる結合を表したものです。このM結合とC結合によって進行波と反射波の電力の一部が検出ラインに生じます。検出ラインに生じた電力を整流し,SWR計の電流計を動かします。Geはゲルマニュウームダイオード,Rは検出ラインの特性に合わせた抵抗器です(上記の写真の矢印の部品)。
--- 図7.2 ---           (図はクリックで拡大します)
        4_SWR基本回路
説明のために,検出ラインが見える構造のSWR計を例示しましたが,次の写真のようにINからOUTへの伝送路を同軸構造としたものもあります。検出ライン方式でなくトロイダルコアを使用したCM型SWR計ものもありますが,後で述べることにします。(写真はクリックで拡大します)
        SWR-200B内部

下図はアマチュア無線用として市販されているSWR計の表示値です。図の赤色の点線が計算値のSWR=1.5です。本来,SWR計も1.5と表示されなければならないのに周波数10MHz未満ではSWR=1.0~1.1と表示されています。大きな誤差です(最新のSWR計で精度の良い製品を使用すれば少しましかも)。
--- 図7.3 ---     (図はクリックで拡大します)
       6_2_誤差SWR1.5
下図はSWR=3.0の状態におけるSWR計の表示値です。3.0と表示されるべきなのに周波数3.5MHzにおいてはSWR=1.25~1.75と表示されています。SWR計で2.0と表示されていたら実際のSWRは3程度と考えねばなりません。
--- 図7.4 ---    (図はクリックで拡大します)
       6_3_誤差SWR_00033

上記のように,アマチュア無線用のSWR計は真の値より非常に甘いSWR値を表示するものが多いのです。この原因の一つに,検出ラインの微小電力を整流するダイオードの非直線性の問題があります。下図はアマチュア用のCM型SWR計のダイオードの特性です。
--- 図7.5 ---    (図はクリックで拡大します)
               ダイオードの特性
ダイオードは電圧が順方向でも電圧が低いと電流が流れません。一般的なシリコンダイオードは0.55~0.6Vまで電流が流れません。ゲルマニューム(Ge)ダイオードは0.3V以上になると流れはじめます。SWR計の反射電力検出側の検出ラインの電圧は,SWR値が低いほど小さな電圧となります。その電圧が0.3Vより小さくなるとGeダイオードでも電流が流れなくなります。即ち,SWR計の針が動かない…SWR=1.0の指示のまま動かないとなるのです。
0.3Vより少し高くなっても,上図のように電流は少しずつ流れはじめるのですから,SWR計の針の振れは小さくなります。これらのことから,アマチュア用のCM型SWR計の指示値は真のSWR値より甘い表示となるのです(0.1V以下でも流れるダイオードは見当たりません)。

上図の検出ラインのGeダイオードを取り外し,インピーダンスに合った抵抗で終端して,検出ラインに生じた電圧を高周波電圧計で測定しSWRを求めると計算値とほぼ同じ値となります。このことから,28MHz以下の周波数では検出ラインの構造の問題は少ないと考えられます(50MHz以上ではその限りでない)。

ではSWR計の誤差を少なくするにはどうしたらよいでしょうか?
対策1:SWR計の定格最大の電力で測定する(最大100W用のものは20W切り替えがあっても100Wで測定すると図7.2のように,いくらか誤差が少なくなります)。
対策2:Geダイオードを,低い順方向電圧で流れはじめるISS106(ショットキーバリアダイオード)などへ交換してみる。
対策3:業務用のように測定周波数と測定電力を定め,それに最適の検出ラインを備えたSWR計を個別に作る。(検出ラインが長すぎるとインダクタンスによる誤差が生ずる)。....430MHz用はIN,OUT接栓にN型コネクタ,またはBNCコネクタを使用する。
対策4:検出ラインとGeダイオードの間に高周波増幅回路を設け,増幅後の信号をGeダイオードで整流する仕組みにする(問題点:広帯域の増幅器が必要なこと,計測前に校正する必要があること)。

話は横に飛びますが,業務用のSWR計測器は,周波数と電力に合った「方向性結合器」を使用します。3.5MHzから50MHZまで使用できるとか,10W~200Wまで使用できるとかという業務用SWR測定器はありません。業務用の「方向性結合器」そのものが持つSWRが1.2以下などとの仕様ですから,アマチュア用のSWR計で表示値が1.0などという場合は誤表示と考えるべきです。
               3_SWR計目盛2

業務用の「方向性結合器」は計測用として機構的に精密に加工されますので,価格はアマチュア無線を購入するより高価です。アマチュアの場合は,手持ちのSWR計の誤差を把握しておいて,測定の都度,誤差分を自分で補正すれば良いでしょう。

次はSWR計の誤差の把握方法です。
操作1:SWR計の出力側に何も接続しない状態(出力オープン状態)でSWRの表示値が∞になるか確認する。
操作2:SWR計の出力側を短絡させてSWRの表示値が∞になるか確認する。
操作3:SWR計のINとOUTを逆にして操作1と2を行いSWRの表示値が∞になるか確認する。

操作4:SWR計(50Ω用)の出力側に終端抵抗を接続して,計算値と表示値の誤差を把握する。
....操作4-1:100Ωの終端抵抗を接続した時,表示が2.0か?,誤差は?
....操作4-2:75Ωの終端抵抗を接続した時,表示が1.5か?,誤差は?
....操作4.3:60Ωの終端抵抗を接続した時,表示が1.2か?,誤差は?

下図はSWR計を校正する時に使用する終端抵抗の自作方法です。抵抗器はP型抵抗器を使用します。
誤差の少ない抵抗器なら1つで構成しても良いですが,価格が高くなるので,一般的な誤差の金属皮膜抵抗器でも十分です。安価な抵抗器を使用する場合は1つで構成するよりも複数個で構成するほうが,抵抗値の誤差が相殺されて小さくなります。
抵抗器の電力耐量は測定電力に合ったものとします。2Wの抵抗を10個並列使用した場合は20Wまで使用できる。短時間なら50W以上でもOK。ファンで冷却すれば5倍程度までの電力に耐えられます。液冷にすれば10倍程度まで耐えられます。
--- 図7.6 ---(図はクリックで拡大します)
          SWR計校正用終端抵抗の作成

          SWR12校正用終端抵抗

SWR=2.0の校正用の終端抵抗器は上図の抵抗器を1kΩ(2W)×10個並列で作ります。SWR=3.0の校正用は1.5KΩ(2W)×10個並列で作ります。終段増幅回路が半導体の送信機(トランシーバ)の場合,SWR=3.0付近になると保護機能が働いて送信電力を低下させるものがあります。そのような場合は1kΩ(2W)×8並列=125Ωの終端抵抗器でSWR=2.5の校正をします。

終端抵抗75ΩでSWR計の表示が1.5,終端抵抗器60ΩでSWRが1.2と表示できたらすばらしい性能です。終端抵抗器60Ωの校正結果がSWR=1.2でなく,SWR計の針がほとんど振れない場合は図7.5で示したようにSWR計内部のダイオードの直線性が悪いのでしょう。

上記に書き忘れましたが,図7.2のRの値についても調整が必要です。この値が合っていないと,SWR計のインピーダンスが50Ωと異なった値となり,計測器であるべきSWR計自身のインピーダンスが狂ってしまいます。

以上,検出ラインを使用したCM型SWR計を対象に書きました。次の写真はトロイダルコアを用いたCM型SWR計です。この方式は,低い周波数から高い周波数まで検出電圧が変化しないため,低い周波数ほど誤差が多いという症状が少ない特徴があります。検出した電圧を整流するダイオードの非直線性の問題は残るので誤差を把握しておけば良いでしょう。(写真はクリックで拡大します)
          SWR検出部コア型

SWR計は計測器なので定期的に校正をして使用するのが正しい使い方です。

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  1. 2012/02/01(水) 13:27:28|
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