皆空の中で...

4.フィーダー上の高周波電力

【4.フィーダー上の高周波電力】         総目次へもどるは ⇒ こちら
................このページは次の1~8の中の「4」です。
    ..........1.アンテナと共振周波数
     ..........2.アンテナとインピーダンス
     ..........3.アンテナとフィーダ(給電線)
     ..........4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
     ..........5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)
     ..........6.SWRの測定と問題点
     ..........7.アマチュア用SWR計と注意点
     ..........8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRが下がる?


このページは「3.アンテナとフィーダ」の続編です。
前ページの後半で,フィーダの先端に接続されている負荷抵抗の値が,フィーダの長さによって異なる値になってしまう話をしました。何故でしょうか?
下図は前ページの 図 3.6と同じです。
     ---- 図 4.1 ---(前3章の図3.6)  (図はクリックで拡大します)
     フィーダーの影響14波長

何故,フィーダを経由することで電圧と電流が変化するのでしょうか?
次の図4.2は,右の受端(先端)に何も接続されていない状態のフィーダへ左の送端から高周波を加えた時のフィーダー上の電圧と電流の分布です。
(上の図4.1と左右を逆に書いています。すみません。)
下図4.2の赤の実線が電圧分布青色の点線が電流分布のイメージです。

        ---- 図 4.2 ---        (図はクリックで拡大します)
   1全反射時の定在波

左側の送端から高周波を加えると,右側の受端方向へ高周波電力が進みます。
この負荷方向へ進む電力波形を「進行波」と言います。
右の受端(先端)まで波形が進むと,開放状態のため,そこから先へ波形は進めないので,折返して,左側へもどります。
この戻る波形を「反射波」と言います。

右の受端に何も接続されていない場合は,進行波は全て反射波としてもどります。
進行波ともどる反射波が重なり合って大きくなる点と,打ち消しあって小さくなる点が発生し,フィーダー上に図のような電圧分布波形と,電流分布波形が生じます。
この分布波形はフィーダーの長さが変化しても一定の状態を保つため「定在波」と言います。

フィーダーの定在波の電圧最大値(Vmax)と電圧最小値(Vmin)の比を「定在波比」と言います。
英文字ではVoltage Standing Wave Ratioと表現します。これを略してVSWR,更には「SWR」
と言います。
           
        定在波比SWR式

次の図4.3は,受端(先端)に何らかの負荷・・・図では200Ω・・・を接続した時の定在波です。
負荷が電力を消費するので,反射波が小さくなり進行波と反射波が重なり合う点の電圧(Vmax)が低くなります。
また,打ち消しあう点も反射波が小さいため完全に打ち消されず,電圧最小点(Vmin)の電圧は0より高くなります。
     ---- 図 4.3 ---        (図はクリックで拡大します)
     2反射が多い時定在波

負荷の値が,フィーダーの特性インピーダンスに近くなると,進行波の大部分は負荷へ吸収され,反射波は更に小さくなります。
下図4.4は,特性インピーダンスが50Ωのフィーダ-の先端に75Ωの負荷(アンテナ)を接続した場合の定在波のイメージ図です。
     ---- 図 4.4 ---        (図はクリックで拡大します)
     3反射少ない定在波

先端の負荷がフィーダの特性インピーダンスに近くなると,反射波は少なくなり,定在波のVmaxとVminの値に差が少なくなり,下図4.5のような定在波となります。
     ---- 図 4.5 ---         (図はクリックで拡大します)
     4反射波が非常に小さい時の定在波


フィーダの特性インピーダンスと負荷のインピーダンスが同じ状態になると,反射波は発生しません。
反射波が無いので進行波との重なり点,打消し点が存在せず,電圧最大値(Vmax)と電圧最小値(Vmin)の値が同じ=即ち,分子と分母の値が同じなので定在波比は1となります(SWR=1.0)。
--- 蛇足ですが,比ですから1より下の数値にはなりません。

横道にはずれますが,最初の図4.1「Rの値が10Ωの時,Zabが250Ωとなる」仕組みの説明です。
  (下図4.6は最初の図4.1と左右が逆になっていますが,他意はありません,すみません)。
下図のフィーダーの特性インピーダンスが50Ω,右の負荷(アンテナ)が10Ωとすると,インピーダンスが異なるので,反射波が生じ,フィーダ-上に定在波が発生します。
定在波の電圧最高点は1/4波長の点では電圧最低点となります。
抵抗=電圧÷電流と同じように,インピーダンス=高周波電圧÷高周波電流です。
定在波によってフィーダー上の電圧と電流の値がフィーダー上の位置により変化するため,位置ごとにインピーダンスも変化します。
  (反射波が無い場合は,定在波が発生しないので,フィーダ上のどの位置も電圧と電流は同じです)。
定在波が発生していると次の図4.6のようになります。(下図において,赤は電圧分布,青は電流分布を表したものです)。

     ---- 図 4.6 ---        (図はクリックで拡大します)
     フィーダー上の定在波2

上図でもわかるように,フィーダ-長が1/2波長の点で定在波の電圧と電流がアンテナ接続点と同じ値になるため,インピーダンスもアンテナ接続点と同じになります。

フィーダーの長さが,1/4波長でもない,1/2波長でもない長さの点のインピーダンスは,その位置の定在波の電圧と電流で決まりますが,リアクタンス分が大きく影響するので,簡単には算定できません(フィーダー長とはフィーダーの電気的な長さ:文末の参考を参照)。

定在波が少しでも生じている場合,リアクタンス分によりインピーダンスが大きく変わるので,フィーダ-長は1/2波長(その整数倍)の長さで使用するとアンテナ接続点と同じ状態(Lab=Zab)となり,送信機とフィーダーの接続が容易となるのです。
(定在波が小さい=SWRが1に近い場合はフィーダーを任意の長さで使用しても問題は少ないでしょう)


定在波比(SWRの値)が大きいと どのような問題が起きるのでしょうか?
アマチュア無線家の中に「定在波比(SWR値)が大きいと,送信機からフィーダーを経由して負荷(アンテナ)へ送られた電力が,フィーダーとアンテナの接続点から反射波となってもどるため,アンテナから放射される電力が小さくなる。結果として,電波が飛ばない」と理解している方がいます。

この理解は大綱で誤りではありませんが,十分とはいえません。
反射された電力がどのようになるかを考えてみましょう。下図4.7は反射された電力のイメージ図です。
               ---- 図 4.7 ---    (図はクリックで拡大します)
     反射波は再び進行波となって

上図において,左の送信機から整合器(インピーダンス変換器)までの間は,送信機出力50Ω,フィーダー50Ω,整合器入力50Ωと整合状態なので反射波は生じません。
言い換えると,整合器から送信機側へもどる反射電力が生じない状態です。

図右端のアンテナ入力インピーダンス100Ωがフィーダーの特性インピーダンス50Ωと異なるため,進行波の全てがアンテナへ送り込まれず,一部が反射波となってフィーダーを逆方向へもどります。
 (この例では,SWR2となるので進行波の89%分がANTへ送り込まれ,11%が反射します)

反射波も進行波も同じ周波数(波長)の高周波電気エネルギーとして変わりはなく,フィーダー上を1/2波長進むにつれて(戻るにつれて)位相が180度遅れます。

お詫び、以降の記述に正しくない部分があります。近日中に書き換えます。

反射波(エネルギー)は次に進んできた進行波(エネルギー)と位相が同位相となった点では強め合い,逆位相になった点では弱め合い,フィーダー上に電圧,電流が高くなったり低くなったりした合成エネルギー波形を作ります。 (この時の電圧波形の最大値と最小値の比がVSWRです)

次の位相で送られてきた進行波エネルギーに反射波エネルギーが加算合成された高周波エネルギーとなってフィーダ上を経由してANT給電点に加わり,合成された高周波エネルギーとしてANT給電点からANTへ進むと考えます。

反射波エネルギ-の一部が整合器まで戻ったとしても、整合器の集中定数回路(LとC)を流れる送信機からの同一周波数の高周波電流(エネルギー)と合成されると考えます。


合成高周波波エネルギーとなった状態から,反射波エネルギーとしての分離して整合器を逆方向へ通過して送信機出力端へ戻るとは考えられません。(整合器出力端はフィーダから見るとフィーダと整合がとれた状態の高周波エネルギー発生源です。)
   
当然ですが,合成高周波エネルギーもANT給電点で再び一部が反射され,それらの反射波はフィーダ上で次に遅れてきた進行波と合成波高周波エネルギーとなってフィーダ上をアンテナ側へ進み,一部が反射される・・・との状態を繰り返しながらANT側へ進むと考えます。
(繰り返す過程でフィーダー損失+SWR増加分によって合成高周波エネルギの一部は熱損となる)。

昔から,ハシゴフィーダーでは両線間の高周波絶縁が高くフィーダーの損失が小さいから,フィーダ長が1/2波長~1波長程度であればSWRが少し高くても反射波はフィーダーを行ったりきたり来たりして,送信電力の大部分はアンテナから放射されると教わりましたが,あたらずとも遠からじと思います。

反射波によってフィーダ上に電圧が高くなったり低くなったする点が1/4波長ごとに生じます。
その電圧波形は一定なので定在波と言います。
反射が全く発生しなければ合成波(定在波)は生じないため,電圧や電流が高い点が発生しないためフィーダの損失値はSWR1の状態の値ですが,反射によって定在波が生ずると,電圧が高い点ではフィーダ線間に存在する絶縁物での漏れ電流損・誘電率損が増し,電流が高い点ではフィーダ線に連続して存在する微小インダクタンスに発生する高周波抵抗損などで増します。
これが,定在波発生時の損失増加分で,進行波分の損失も増加します。

(同軸ケーブルのカタログ損失値はSWR=1のもの,SWRが増えるとカタログ値より増加する)。

        下図はフィーダの等価回路です。
        フィーダの等価回路2

「はしごフィーダー」は,導体2線間が「空気」で,かつ,間隔が10cm程度と離れていて,2線を保持する絶縁物が20~50cm毎となるなるため,絶縁物(誘電体)の損失は非常に小さく,2線の直径が2mmφ程度あれば高周波抵抗損失も小さいため,フィーダーとしての損失が非常に小さくなります。

1/2波長ダイポールアンテナの中央部(75Ω)へ特性インピーダンスは約600Ωの「はしごフィーダー」を接続して使用しますが,その時のSWR値は8となります。
フィーダ上にSWR8の反射波が生じても,フィーダ長が1/2波長~1波長程度であれば発生する損失が少ないため,フィーダへ送り込まれた送信電力のほとんどがアンテナから放射されます。

(送信機出力とハシゴフィーダーは整合器=チューナーで整合させていなければなりません)

同軸ケーブルの損失値は,中心導体と外部導体の間の絶縁方法の違い,導体のサイズなどによって変わります。
5C2V,5D2V,7C2V,8D2Vなどは絶縁物としてポリエチレンを充填した構造です。
発泡ポリエチレンを使用しても,真空と比べると高周波損失(誘電体tanδ損など)は避けられません。
このような同軸ケーブルを高いSWRで使用すると絶縁物(誘電体)による高周波損が増加しケーブル内で熱損となります。

前3章の図3.5の写真のような高周波同軸ケーブルでは,中心導体と外部導体間の絶縁物が少ないため損失が小さくなります。

【SWR値が高いと問題なのか?】のまとめ
   【1】 同軸ケーブルではSWRによって損失が大きく増加するので送信電力が効率よくANTへ送り込めない。
   【2】 「はしごフィーダー」は損失が少ないためSWRが少し高くても長さが1/2波長~1波長程度であれば,
      最終的に送信電力の大部分をANTへ送り込める。
   【3】 但し,SWRが高い場合,送信機出力とフィーダ間に整合器を挿入しないと,送信機からフィ-ダ側へ
      電力が送り込めない(フィーダーの入口で送信電力が反射される)。

    送信機は,電力が送り込めない状態を検出すると,送信機の出力半導体を保護するため,
     送信電力を急激に下げる保護モードとなる---結果,送信される電力が更に小さくなる。
     (真空管送信機は保護機能が無かった)

   【4】 ハシゴフィーダが最も優れているかのように見えるが,
      2線の間隔を均一に保つ必要がある(回転式ANTではフィーダ線の間隔が均一に保てない)、
      フィーダ線を金属物から十分に離して配線する必要がある,
     ・・・などの問題が有ります。

ここまでで,ANT給電点での反射が多くても(SWRが高くても)問題は少ないかのように思う方がいるかもしれませんが,ANT給電点でフィーダと整合をとることが基本中の基本です。
そうすれば,フィーダでの損失は最小になるだけでなく,フィーダからの不要輻射も最小になり、受信時のノイズも少なくなります。


-----参考:リターンロスの話---------
リターンロス(反射減衰量)を,文字通り「反射してロスになる量」ととらえそうですが,入射波(進行波)に対する反射波の「逆数をデシベルで表現したもの」です。
リターンロス=0dbとは,総て反射した場合の値です。フィーダーとアンテナで考えれば0dbは全く良くない状態です(SWR値=∞の状態)。
フィーダーとアンテナのインピダンスが等しく反射波がほとんど無い状態,即ち,SWRが1に近い状態,即ち,良好な状態のリターンロス(反射減衰量)は40dbとか値が大きくなります。(40dbとは反射波が一万分の一)
「リターンロスが大きいほどアンテナとの整合(マッチング)が良い」,「ロスが大きいほど良い状態」との言い方になりますが,しっくりしない表現です。リターンロス(反射減衰量)の表現は,まぎらわしい名称であると思います。


参考2
下図はSWRと損失の増加分をグラフにしたものです。
SWR=1.0の損失が1dbのフィーダーをSWR=3の状態で使用したら,損失は0.5db増加し,総合損失1.5dbとなると読みます。
20mの「はしごフィーダー」の損失は0.1db以下(SWR=1.0の時)なので,下図では左のメモリより更に左となり,SWR=8で使用しても総合損失は0.2db程度です(図の横軸目盛0.2の更に左外)。
          (出典:昭和28年ラジオアマチュアハンドブック) 
     ---- 図 4.8 ---    (図はクリックで拡大します)
     SWRによる損失増加分

参考3
下図は「はしごフィーダーの損失」です。100mあたりなので,10mの場合は十分の一の値になります。
同軸ケーブルと比較する場合は長さの換算が必要です。
     ---- 図 4.9 ---    (図はクリックで拡大します)
     オープンワイヤーの減衰量

参考4【フィーダーの短縮率】
フィーダーはコイル成分とコンデンサ成分が分布した伝送路のため,高周波が伝わる速度が若干おくれます。
このため,フィーダーの電気的な長さは,物理的な長さにフィーダーの短縮率を掛けた長さとなります。
例えば,7.1MHzの場合,1/2波長は(300÷7.1)×1/2=21.13mとなりますが,ポリエチレンを使用した同軸ケーブル(フィーダー)長では 21.13m×0.67(短縮率)=14.15mとなります。
短縮率はフィーダーの構造・絶縁物の誘電率で異なります。
5D2Vなどポリエチレン充填のフィーダーでは短縮率は0.67,発泡ポリエチレンのものは0.80,はしごフィーダーでは0.98程度です。


定在波について参考になるページは沢山あります。
その1つに,東京工業大学 工学入門講座 オンライン版「定在波と干渉」があります。
東京工業大学 工学入門講座 オンライン版「定在波と干渉」のページは ⇒ こちら



次ページの「5章.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算例)」へ続くは ⇒ こちら


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  1. 2012/01/05(木) 21:24:13|
  2. アンテナと整合
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コメント

チューナーの入力端を、送信機側から見たときの整合状態(反射係数)と、チューナーの出力端をフィーダー側から見た時の整合状態(反射係数)は、同じではありません。仮に、両方とも反射係数ゼロ(完全整合)だとすれば、アンテナから戻ってきた反射電力はチューナーを逆に通って送信機に戻ります。続きは、他のコメントに書いた通りです。
  1. 2017/03/19(日) 05:50:13 |
  2. URL |
  3. Ryuji Suzuki #ftr86F3A
  4. [ 編集 ]

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