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1.アンテナと共振周波数

【1.アンテナ線と共振周波数】
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短波帯の無線通信とアンテナの話です。
アンテナの話をどこから書き始めるかですが,「電波とは何か」,「導体からどのように電波は放射されるのか」をわかり易く書くのは,なかなか難しいことなので,マックスウエル先生の理論に詳しい専門家に任せしましょう。電磁波の放射(東京工業大学 工学入門講座) は こちら)
ここでは,アマチュア無線用のアンテナ設計,フィーダー,整合などのポイントを「やさしく」まとめましょう。

まず,第1話「アンテナ線と共振周波数」の話です。
下図1.1の左のような長さLの導体の中央に高周波電流計を入れて,導体へ高周波を加えます。
加えた高周波の周波数を少しずつ高くしてゆくと,右図のように,ある点で高周波電流が最大となり,更に周波数を高くすると電流が減少します。
                 ---- 図 1.1---  (すべての図はクリックで拡大します)
     1_ANT線の共振2



下図1.2の左のようなコイルとコンデンサが直列になったLCR直列回路へ高周波を加え,同様に周波数を変化させるとLCRに流れる高周波電流は右図のようになります。
                 ---- 図 1.2 ---   
(すべての図はクリックで拡大します)
     2_同調回路の共振

LCR直列回路の電流最大点はLCRが周波数 f0 に共振している点です(同調している)。
図1.2の電流が図1.1の導体Lの電流の変化(右図)と同様なことから,導体Lは図1.2のLCR回路の性質を持っていると考えて良いでしょう。
即ち,導体Lが周波数 f0 で共振している(同調している)と考えることができます。
この時の導体Lの長さは,共振周波数 f0 の約 1/2波長となっています。


下図1.3は1/2波長の長さの導体の高周波電流と高周波電圧の大きさ(分布)を図示したものです。
両端は開放状態ですから電流はゼロ,中央部分が最大となります。
この電流(電圧)分布は高周波電流が導線上を両開放端へ進行する波と両開放端から反射して戻る波が重なって生じた「定在波」です。
このようにアンテナ線に定在波が生じるアンテナを「定在波アンテナ」と言います。
           ---- 図1.3 ---   
(すべての図はクリックで拡大します)
     3_ANT電流分布2



以上から周波数に共振する導体(1/2波長アンテナ線)の長さが計算で求められます。
1/2波長アンテナの長さL=(光速÷周波数)×1/2
書き換えると,L(m)=300÷ f0 (MHz)×1/2 =(150÷ f0 (MHz))ですから,
7.1MHz用の場合,1/2波長アンテナは,150÷7.1=21.1mと計算されます。
21.3MHz用の場合,1/2波長アンテナは,150÷21.3= 7.04mと計算されます。

実際には,アンテナ導体を伝わる高周波電流の速度が光速よりわずか遅くなること,両端に使用される絶縁物(碍子)などによる容量増加などで,アンテナ導体の長さは若干短くなります。
この短くなる率を短縮率と言います。
アンテナ導体として使用する電線のサイズが2㎜程度の場合の短縮率は約 0.95 と考えればよいでしょう。150×0.95=約143ですから,実際の1/2波長アンテナの長さは次の計算で求めます。

     143÷ 周波数(MHz) =1/2波長アンテナ線の長さ(m)

なお,144MHz帯など1/2波長の長さに比べて直径の大きいパイプをアンテナとする場合は,更に短縮した値になります。

7MHz用として,143÷7.1MHz=20.14mのアンテナ線を左右180度に張ることができれば良いですが,敷地や周辺の理由で,片側6m×2=全長12mの長さしかアンテナ線を張ることができなかったとします。全長12mのアンテナ線は,143÷12(m)=約11.9(MHz)の周波数に共振点があります(目的の7.1MHzには共振していません)。

ここで,前述のLCR直列回路を思い出してください。
LCR直列回路の共振周波数を11.9MHzから目的の7.1MHzへ下げるにはコイルの巻き数(インダクタンス)増やせばよいですよね。
次の図の右のようにLCR直列回路へコイル(インダクタンス)を追加すると共振周波数がさがります。これをアンテナ線におきかえれば,下図の左のようにアンテナ線の途中にコイルを挿入すれば良いのです。なお,アンテナ線へ挿入するコイルは,2つに分けて左右のアンテナ線の中間部に挿入してもかまいません。
        ---- 図1.4---  (図はクリックで拡大します)
    4_ANTへコイル挿入


逆に,アンテナ線の長さが目的の周波数のものより長い,例えば,全長が25mのアンテナ線の場合は,共振周波数が143÷25m=5.7MHzとなり,7.1MHzに共振していません。この場合,下図のようにLCR直列回路ではコンデンサ(キャパシタンス)を直列に挿入します。コンデンサを直列にするとコンデンサ容量は減少しますので,LCR回路の共振周波数が高くなります。
   ---- 図1.5 ---   (図はクリックで拡大します)
   5_コンデンサでANT共振周波数を


ここまでをまとめると,
(1)アンテナ線は共振回路(同調回路)のような性質があり,長さによって特定の周波数に共振する。
(2)アンテナ線が目的の周波数の1/2波長の長さであればアンテナ線のみで共振することができる。
(3)アンテナ線の長さが目的の周波数の1/2波長の長さでなくてもコイルやコンデンサを使用すると,目的の周波数に共振させることができる。

---言い換えると「アンテナ線自身の長さは必ずしも目的とする周波数の波長に合っていなくても大丈夫」ということです。
その例として,垂直型アンテナでは電波を低い角度で発射できる 5/8波長アンテナがあります。
また,自動車から7MHzの電波を送信する場合,2m(0.05波長)の長さのアンテナを使用する例もあります。

但し,短いアンテナ線へコイル(L)を追加して共振させる方法では,コイルで生ずる高周波損失を少なくするため,大きなコイルを使用する必要があります。これらのことから,アンテナの長さはアンテナ線のみで目的の周波数に共振する長さであることが望ましいことは言うまでもありません。

ことわり:
LCR直列回路の共振周波数は1つですが,アンテナ線は1/2波長の整数倍の周波数に共振します。ここでは話を簡単にするため,そのことには触れないことにしました。

もう1つ:
アンテナ線へ電流(電圧)の定在波を生じさせて使用する場合を「定在波励振」と言います。一方で,アンテナ線へ定在波を生じさせない方法を「進行波励振」と言います。アマチュア無線では前者の「定在波励振」を使用します。後者の方式としてロンビックアンテナがありますが,非常に広大な土地が必要なため,アマチュア無線での使用例は殆どありません。


次は,アンテナ線のインピーダンスへ続きます。


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  1. 2011/12/27(火) 18:25:06|
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