皆空の中で...

3.アンテナとフィーダー

【3.アンテナとフィーダー 】
................このページは次の1~8の中の「3」です。   総目次へもどるは ⇒ こちら
..........1.アンテナと共振周波数
..........2.アンテナとインピーダンス
..........3.アンテナとフィーダ(給電線)
..........4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
..........5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)
..........6.SWRの測定と問題点
..........7.アマチュア用SWR計と注意点
..........8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRが下がる?


このページは「2.アンテナとインピーダンス」の続きです。
前ページで説明しましたが,アンテナは地上から十分な高さに設置する必要があります。
また,家屋や電力線からも十分に離れている必要があります。
そのような位置のアンテナへ送信機から送信電力を送る導体を「フィーダー,または給電線」と言います。
(アンテナから受信機へ受信電力を送る役目もします)

フィーダー(給電線)の原形は平行2線式フィーダーです。
2線を大地に対してバランスした状態で使用することが多いため平衡フィーダとも言います。

平行フィーダ-に対して,2線の片側の導線を板状にして,片側の導線の周りを円筒状にくるんだ形のフィーダーを同軸フィーダー(同軸ケーブル)と言います。
同軸ケーブルは中心導体と円筒状にとりまく導体が大地に対してバランスしないため不平衡フィーダとなります。

平行フィーダ-であれ,同軸フィーダーであれ,フィーダーはそれぞれの構造と導体間の絶縁物質の誘電率によって決まる「特性インピーダンス」をもっています。
特性インピーダンスとは同軸ケーブルの50Ωとか75Ωとかの値のことです。
特性インピーダンスとは,構造等から決まるフィーダー個体のものであり,周波数や長さによって変化しない値です。

下は平行フィーダーの例です。
写真は,かってVHF帯のテレビアンテナからテレビまでのフィーダーとして利用された特性インピーダンスが300Ωの「リボンフィーダー」です。
同軸ケーブルが安価でない時代にTV受信用として使用されました。2線の間はポリエチレンです。
写真上は透明なポリエチレンを使用したものです。
リボンフィーダは同軸ケーブルより安価で損失が少ない利点がありましたが,雨が付着したり金属物に接近させて配線するとフィーダの特性インピーダンスが変化する欠点がありました。
          ---- 図 3.1 ---     (すべての図はクリックで拡大します)
     300Ωフィーダ1

次の図3.2は,UHFテレビアンテナからテレビまでのフィーダーとして使用された200Ω平行フィーダーです。
断面がメガネのように見えるので「めがねフィーダー」と言われました。
このフィーダーは導線の周りのポリエチレンを多くして,雨などによる性能低下を改善したもので,同軸ケーブルより安価で損失が少ない利点があります。
          ---- 図 3.2 ---     (すべての図はクリックで拡大します)
     めがねフィーダー

下はめがねフィーダ-の写真です。     (写真はクリックで拡大します)
   めがねフィーダー200Ω断面写真 めがねフィーダー200Ω


下はめがねフィーダー包装紙の表と裏です(フィーダー損失が記載されています)。   (クリックで拡大します)
   めがねフィーダーラベル表 メガネフィーダーラベル裏

「リボンフィーダー」「めがねフィーダー」とも同軸ケーブル(7C2V)より大幅に損失が少なく優れた特徴があります。
金属物にそわせたり,密着して配線すると損失が急激に増加する欠点があるため,TVアンテナマストから7~10㎝程度離して配線する必要がありました。
マストから離しての配線なので強風で切れたり、建物内の電気配線用金属管(コンジット管)などとも離して配線しないといけないなど配線方法による制約がありました。
その後,同軸ケーブルのコストが年々安価になったこと等から時代とともにテレビ受信用としても使用されなくなりました。

これらのフィーダーをアマチュア無線用として利用する場合は送信電力を50W程度までにおさえる必要があること,1/2波長アンテナ(中央給電)の入力インピーダンス(75Ω)とマッチしない等,やや使用しにくい点がありました。
(50MHzフォールデットダイポールアンテナ用としては利用されました)。
そのようなことで,アマチュア無線でも使用されなくなっていましたが,最近,100W以上の送信電力に耐えるUSA製の450Ωフィーダーを利用している方もいるようです。

---------閑話休題:参考----------------
   昭和34年発行「アンテナハンドブック(CQ出版)」には次の記載があります。
   ポリエチレン絶縁平行フィーダーとして
     (1)銅線0.29㎜×7本撚り,線間隔09㎜,特性300±15Ω,短縮率85%,TV用 
     (2)銅線0.70㎜×7本撚り,線間隔17㎜,特性200±10Ω,短縮率75% TV用 
     (3)その他,線間隔6㎜,特性140±10Ω,短縮率75%,TV用?
   が記載されている。(「めがねフィーダ]でない200Ωフィーダーがあったのです。)
   また,
   銅線0.32×7本撚りの「リボンフィーダー」と「めがねフィーダー」の100mあたりの損失値は,
     「リボンフィーダー」は, 2.0db(28MHz),5.0db(144MHz)/100m
     「めがねフィーダー」は,2.2db(28MHz),5.0db(144MHz)/100m
  しかし,雨に濡れた状態では,
     「リボンフィーダー」は, 12db(28MHz), 36db(144MHz)/100m
     「めがねフィーダー」は,2.5db(28MHz),14db(144MHz)/100m
  と損失が大きくなる,と記載されている。
------------------------------------------------


下図3.4の写真は「はしごフィーダー」と呼ばれる2線平行フィーダーです。
直径1.6㎜φの導線を10㎝間隔で平行に張ると特性インピーダンスが600Ωのフィーダーとなります。
2線間は空気絶縁ですから損失が非常に少なく(7C2Vの10分の1),大電力に耐えられる特徴があります。
かってはアマチュア無線だけでなく,業務用短波送信所などで使用されました。
          ---- 図 3.3 ---     (クリックで拡大します)
     はしごフィーダー

平行フィーダーの特性インピーダンスは導線の直径dと,導線の間隔(D)で決まります。
下図3.4は,導線間の絶縁物が空気の場合の算出式です。
2つの導線の間隔を保つ材料として業務用は専用の碍子を使用しているものがありましたが,アマチュア無銭家は割りばしにパラフィンを浸みこませたもので代用しました。
現在は,園芸用のFRPやABS材料などを使用している例があります。
          ---- 図 3.4---  
            平行フィーダのインピーダンス
線径d=2mm,間隔D=12cmの時→574Ω,D=10cmでは552Ω,D=8cmでは524Ω,D=5cmでは470Ω,D=4cmでは440Ω,D=2cmでは360Ω,D=1.2cmでは299Ωとなります。

このように,2線の間隔を狭くすると特性インピーダンス300Ωのフィーダが容易に作成できます。
損失が周波数100MHzにおいて,100mあたり1.2db程度と低損失なことから,山間地においては,山上へTV受信用アンテナを建て,山頂から自宅のテレビまで150~200m長の「はしごフィーダ(300Ω)」を用いている例がありました。

-------またまた,参考です。-----------
昭和28年発行の「ラジオ アマチュア ハンドブック」(日本アマチュア無線連盟)に,オープン型平行フィーダー(はしごフィーダー)の損失について次のように記載されています。
…「フィーダーによって送られる電力は,フィーダーの輻射,銅線の抵抗,スペーサの誘電体損によって一部が失われる」,
   2㎜導線の600Ω平行フィーダーの100mあたりの損失値は,
   10Mcでは0.2db,30Mcでは0.35db,100Mcでは0.5db ---Mc はMHz

   同軸フィーダーRG-11U(7C2V相当)の100mあたりの損失値は,
   10Mcでは1.8db,30Mcでは3.1db,100Mcでは6.5db ---Mc はMHz

比較すると,直径10㎜の同軸ケーブルよりオープン型平行フィーダー(はしごフィーダー)の損失がきわめてすくない。また,平行フィーダーは,かっては「Twin Lead」の商品名で呼ばれ,特性インピーダンスは75Ω,150Ω,300Ωの種類があり,スペーサーとしてはセラミック,ポーセレイン,ガラス,ポロスチロールなどが用いられる。映画用の古いフイルムのコマ送り穴を利用することもできる。木の棒をパラフィンで煮たものでも使いものになる」…と記述されている。
更に,アンフェノール社から平行フィーダー(Twin Lead )の型名として,
   14-080  75Ω 波形短縮率68%
   14-079 150Ω 波形短縮率77%
   14-022 300Ω 波形短縮率85% ---(送信用)
などが製品化されていると記述されている(昔は300Ωだけでなかったのだ。映画のフイルムを利用して作ったのだろうか?)。
-------------------------------------

無線通信には利用されませんが,LANケーブルも特性インピーダンスが約100Ωの平行フィーダです。
平衡を保つため2線をツイストしています。
NTTの電話線も平行フィーダ(600Ω)です。NTT通信ビルから電話機へのケーブルは,2400対(4800本)の線が束になって数キロメートルに渡って配線されているのですが,平衡度がシッカリと確保されているため,隣接対へ誘導したり,誘導を受けたりしないのです。


次は同軸フィーダ(同軸ケーブル)の話です。
同軸ケーブルは平行2線フィーダとどのように違うか,次の図を見てください。
図下部の絵のように,平行2線フィーダの導体aを導体bで包んだものが同軸ケーブルです。
     平行フィーダと同軸ケーブル

同軸ケーブルは,中心導体をどのように固定するかが課題でした。
プラスチックが世に生まれる前は,中心導体を絹糸で吊る方法,ガタパーチャ(ゴムの一種)を中心導体と外部導体の間に入れて絶縁を保つなど,製造が難しいケーブルでした。
昭和20年代にポリエチレンが生まれ,製造が一挙に簡便となるとともに,性能が飛躍的に向上しました。
ポリエチレンを使用した同軸ケーブルに次いで,UHF周波数でも損失の少ない発砲ポリエチレンを使用したものも増えています。
業務用大電力給電用では,下の写真のように,中心導体から螺旋状に絶縁アーム突き出して中心導体との間隔を保つ構造のものもあります(導体間の絶縁物を最小にして高周波損失を少なくしています)。
同軸ケーブルの特徴は,その構造から外部からの影響をうけにくく,外部へも影響を与えにくいこと,近傍に金属があっても影響はないため配線にあたっての制約がすくないこと,風雨に対しても耐久性が高い特徴があります。
          ---- 図 3.5 ---     (クリックで拡大します)
 --- 左は小信号用同軸ケーブル ---- 右は大電力用同軸ケーブル----
     同軸ケーブル 大電力同軸ケーブル縦

ここまでのまとめ
     (1)平行フィーダは同軸ケーブルより損失が少ない。
     (2)リボンフィーダやめがねフィーダは雨に濡れると損失が増加する。
     (3)平行フィーダは金属から離して配線しないと損失が増加する。
     (4)平行フィーダを大地と平行に張る場合は一定間隔ごとに対を回転(ツイスト)し,平衡度を保つ。
     (5)同軸ケーブルは外部からの影響を受けにくい,外部への影響を与えにくい。
        (金属パイプに沿って配線しても影響が少ないなどから,配線に制限が少ない)

下図は,「ARRL:The Radio Amateur's Handbook」1964版に掲載されていた同軸ケーブルとハシゴフィーダーの損失グラフです。はしごフィーダーの損失は同軸ケーブルの10分の1です。
          (図をクリックで拡大して目盛をみてください)
     ARRLハンドブックフィーダーロス



フィーダのイメージはここまでにして,本題のアンテナの入力インピーダンスとフィーダの話です。

フィーダは構造と材質かから決まる「特性インピーダンス」があります。
この値は周波数やフィーダ(ケーブル)の長さに関係なく一定です。
このような性質のフィーダですが,フィーダの片端へ接続されたものによって,他の端からフィーダを見たインピーダンスは変わります。
次の図を見てください。
下図はフィーダの長さが1/4波長の長さの場合です。
フィーダ(ケーブル)の特性インピーダンスは50Ωと一定ですが,左端に接続された抵抗Rの値によって,右端からフィーダを見た時のインピーダンスを示したものです。
          ---- 図 3.6 --- 
     フィーダーの影響14波長


次はフィーダの長さが1/8波長の長さの場合です。
          ---- 図 3.7 ---
     フィーダーの影響18波長


次はフィーダの長さが1/2波長の長さの場合です。
          ---- 図 3.8 ---
     フィーダーの影響半波長


フィーダの長さがゼロの時は Rの値と Zabの値は同じですが,フーダーが間に入いると Zabの値が大きく変わる場合があるのです。この現象は,フィーダが同軸ケーブルでも平行フィーダでも同じです。
以上は,Rがリアクタンスを含まない純抵抗の場合です。Rが1/2波長アンテナのように目的の周波数を少しでもずれるとリアクタンス分が生ずる場合は更に大きく変わります。

このページのポイント
(1)Rの値がフィーダの特性インピーダンスと同じでない場合は,
  フィーダの長さによって  Zabの値が大きく変化する。

(2)Rの値がフィーダの特性インピーダンスと同じ場合(整合している場合)は,
  フィーダの長さが短くても長くても Zabの値は Rの値と同じ。

(3)フィーダの長さが1/2波長の時は Rの値と Zabの値が同じになる。

  (1/2波長の整数倍の時も同じ)

この性質は,平行フィーダも同軸フィーダ(同軸ケーブル)も同じです。
以上の基礎的なことを理解したうえでアンテナとフィーダの接続を考えることがトラブルを防ぐポイントです。
「アンテナとフィーダ」の前編はここまで,4章「フィーダ上の高周波電力」へ続きます。


フィーダ上の高周波電力へ続くは ⇒ こちら


総目次へもどるは ⇒ こちら


  1. 2011/12/26(月) 21:53:31|
  2. アンテナと整合
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

是非ご紹介させていただけないでしょうか。

初めまして、JA7HLJと申します。
本編、次編で1/4λ長、1/8λ長、1/2λ長のケーブルの、各種先端抵抗値でのリグ側インピーダンスの解説を拝見して、分かり易い説明なので大変参考になりました。

当局のブログで、URLと共に記事内容も紹介したいのですがご承諾いただけないでしょうか。
よろしくお願い致します。
  1. 2012/11/10(土) 08:55:54 |
  2. URL |
  3. JA7HLJ #9s6MsRus
  4. [ 編集 ]

コメントへのお礼

コメントありがとうございます。
どうぞご自由になさってください。
私のブログは「TKA目次」でネット検索くださると全体の目次が現れます。
また,「ヨットの電気設備」で検索下さると過去に書いたヨット用のアンテナ記事もみつかります。
余計なことですが,HLJさんのブログにも総目次のページがあると読者の方が過去記事を見つけやすいかもですね。
それでは,おもしろいブログを期待しております。ご活躍ください。
  1. 2012/11/10(土) 12:22:56 |
  2. URL |
  3. take103 #-
  4. [ 編集 ]

ありがとうございます。
早速のレスポンスに感謝致します。
早速ご紹介させていただきたいと思います。
当ブログも総目次として整理出来れば見やすくなると思いますが、その手法が解りません。ごった煮のちゃんぽん状態です((+_+))。
  1. 2012/11/10(土) 22:42:06 |
  2. URL |
  3. JA7HLJ #9s6MsRus
  4. [ 編集 ]

URLのリンク

HLJさん
私はgooのブログを使ったことがありませんが,次の手順でリンク先を書くと,その文字をクリックしてリンク先へ飛ぶことができる仕組みができるかもしれません。私の各ページの末に「総目次はこちら」と書いた文字をクリックすると目次のページへ飛びます。
以下はgooのブログを使用している知人からの手順です。
(1)その1
「TEXT」でブログ記事画面を作成している場合
 ①記事作成画面の右上にある「URL」のボタンをクリックします。
 ②「文字列を入力して下さい」と表示される。
 ③そこに「文字列」を入力して「OK」ボタンをクリックします。
 (文字列とは例えば“○○さんのページはこちら”,“目次のページはこちら”などです)
 ④「URLを入力して下さい」が表示されたらURLアドレスを入力して「OK」をクリックする。
  (URLの入力はリンク先のURLをコピーしてペーストがミスがない)
(2)その2
「HTMLエディター」を使用している場合
 ①「<a href="リンク先のアドレス">表示したい文</a>」と自分で入力します。
・・・余計なお節介でしたらお許しください。
  1. 2012/11/11(日) 13:30:39 |
  2. URL |
  3. take103 #-
  4. [ 編集 ]

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