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外洋ヨット用21MHzアンテナと簡易なマッチング方法

外洋ヨット用21MHzアンテナと簡易なマッチング方法
   (簡易に見えるマッチングですが,挿入損失はオートチューナより少なく,かつ,故障の心配がありません)

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 このページは目次の,
    A14.長距離航海ヨットの通信用アンテナ ⇒ こちら
    A15.続:長距離航海ヨットの通信アンテナ(アンテナ給電線とアース配線)  ⇒ こちら
    A16.続2:長距離航海ヨットの通信アンテナ (バックステーアンテナの盲点)  ⇒ こちら
 の続編です。


下図は垂直接地アンテナ(ANT)の基本図です。
ANT線はコイルとコンデンサの性質があるので給電点のインピーダンスはANTの長さや周波数で変化します。
インピーダンスは R±j X の形で表します。  (Rは位相に関係しない値,j X は位相に関係する値)
    01_垂直ANTの長さとインピーダンス

ANT線の長さが21.2MHzの1/4波長(3.538m)の時,給電点のインピーダンス は下表①の値 Z= 39+j 22 になります。
上図のように給電点に特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルを接続すると,リアクタンス分(+j 22)があるためSWR:は1.7となります。
1/4波長より約3%短くすると,給電点の Z は下表②の値になり,リアクタンス分が±0となります。この状態を「アンテナが共振している」と言います。
  …ですが,Rが36Ωなので50Ωの同軸ケーブルを基準にするとSWRは1.4となります。
逆に1/4波長より約7%長くすると, Z は下表③の値となり,R分が50Ωとなりますが,リアクタンス分が+j74 となるので,SWRは4.0となります。
   01_垂直ANT21のインピーダンス

いずれの場合も給電点にマニュアルアンテナチューナまたはオートアンテナチューナを取付ければ50Ω同軸ケーブルとマッチング(整合)がとれます。
・・・ですがオートアンテナチューナは複数の周波数帯でマッチング(整合)できるようにコイルやコンデンサを切替える接点や制御用のIC回路が高密度に実装されているため,塩分・湿度・結露・雷誘導に弱く,故障したら容易に修理できません。

ANTと同軸のマッチング(整合)は,基本的にコイル1個とコンデンサ1個で完全整合できます。
ここで紹介する方法はシンプルですが理論に沿った整合方法なのでオートアンテナチューナの性能より劣ることはありません。
部品が少ないため故障が起きににくく,コストも安価で済みます。
 (この手法は身近で安価な部品の組み合わせでできるので電子部品の入手が難しい海外の港でも作製や修復ができるでしょう)
では,ヨットの遠距離通信用21MHzANTを例に具体的な話に入ります。

 :アンテナ線の長さを周波数に共振させて使用する方法】
  ヨットとの通信が行われているOkera-Net(21.437MHz),Seagull-Net(21,382MHz)を考え,中心周波数を21.4 Mhzとすると 1/4波長は3.51mです。
ANT線の長さを1/4波長に短縮率0.97を乗じた長さ3.40mにすると,共振状態となり給電点のインピーダンスが36Ω±j 0 となりまります(上表は21.2MHzなので21.4MHzでは若干短くなる)

ANTのインピダンス36Ωを50Ω同軸ケーブルとマッチング(整合)させるためコイルとコンデンサを使用します(下図)。
   1_ヨット垂直ANT接続(36Ω)2


 :アンテナ線の長さを1/4波長×1.07 で使用する方法】
  この方法は上表の③の状態の使用方法です。
給電点のインピーダンス Z=50+j74 のリアクタンス分 +j 74 を打消してやればよいのです(下図は21.4MHzで計算したので+j78 となっています)。
+j 78 を打消すには -j 78 を直列に挿入すことででOKです( Z=50+j 78 -j 78  ⇒ 50±j0 となる)。
リアクタンス-j 78 を周波数21.4MHzにおけるコンデンサの値に計算すると96pFとなります。
具体的には下図のようにANT給電点と同軸ケーブルの間に96pFのコンデンサーを1個直列に入れるだけでマッチング(整合)できます。
コンデンサー1つの最も簡易なアンテナチューナ(Ultimate Simple Antenna tuner)です。
 (ANT線のみでは共振していないが,直列コンデンサを含めて共振状態になったのです)
   2_ヨット垂直ANT接続(Cのみ)2


ヨットでの具体例: コンデンサ1個でマッチングさせる時の接続,アース配線】
  上図の方法2でヨットANTを作ると,下図のようになります。
ポイントは,
  (1) 垂直ANT部の長さを3.77mにする(3.87mで作り調整しながら長さを切り詰める)。
  (2) ANT線はグラスファイバー釣竿に通線がベスト,通線できない場合は竿の外側でもOK。
           (最適な通信用FRPロッドは ⇒ こちら)
  (3) ANT下部は金属パイプと平行させない(させる場合は平行部分を短くする)。
  (4)  アース配線を太い電線で短く配線する(パルピット裏ナットに締付け,船内をバウまで配線する)。
                      (パルピット裏配線は1.4mmφのステンレス線でOK)
  (5) 船底内側に1平方メートル以上の金属板を張り,アースとする。
                      (海水との間に大きな容量ができ良いアースとなる)。
  (6) 同軸ケーブルは,4.70m,9.39m,14.09mの長さで使用するのがベター。(理由は文末参照)

   3_ANTから送受信機への接続図2
  上図のANT取付用のFRPパイプは,外径48mmの塩ビパイプ(PVC)に包帯を巻くようにガラスマットを巻きFRP樹脂でコーティングする。これを2回実施して強度を高める。


下図は上図のANT下部の「接続箱」の部分です。
ANT線と同軸ケーブル中心導体との間に挿入するコンデンサとしては耐圧1kv150pFのバリコンがあれば調整が容易ですが,防水が心配なので下図右のセラミックコンデンサを使用するのが安価で防水も容易です。
下の右写真のセラミックコンデンサは右から100pF/3kv,47pF/3kv,33pF/3kvです。
47pFと33pFを並列にすると80pF/3kvになります。
コンデンサーは(1.0 1.2 1.5  1.8  2.2  2.7 3.3 3.9 4.7 5.6 6.8 8.2 )×10・・・の数値のステップで作らているので, 68pFと27pFを並列にするか,56pFと39pFを並列にすると約96pFとなります。

(送信電力が50W以上の場合は,22pF3個+33pF1個と 計4個など並列にするなるコンデンサの数を増やして,1つのコンデンサを通過する高周波電力を分散させます)

価格は1つ110円でした。1円玉より小さいので防水箱は簡単です。同軸ケーブルの中に水が入らぬように「エフコテープ」などでしっかり防水します。
     4_3.77mANTの接続部25_DSC01319.jpg


防水が完全ならコンデンサとしてバリコンを使用すると調整が楽です。
バリコン=バリアブルコンデンサは回転羽を回転させることで連続的にコンデンサ容量を変更できます。
下の写真の小さなものは50pF/500v,100pF/500v,大きなものは200pF/1kvです。
ヨットでも船内にマッチング(整合)箱を取り付ける場合はバリコンを使用しても良いですが,上の図3のように船外でマッチングさせる場合はセラミックコンデンサを複数並列にして使用する方法がベターです。
(セラミックコンデンサの利用でバリコンより性能が低下することはありません。)
     6_DSC01321.jpg
以上の説明で省略しましたが,マッチング(整合)が完全にできているか否かはマッチング部の同軸ケーブル接続部(図1,図2のb点)へSWR計を挿入して調べるのが原則ですが,作業がしにくいので,トランシーバ出力部と同軸ケーブルの間にSWR計を入れて調べます(図1,図2のa点)。
  (トランシーバにSWR計測機能があれば,それで計測します)
この時,同軸ケーブルを任意の長さで使用すると,給電点のマッチング(整合)状態を調べることができません。
給電点の状態を送信機出力部に挿入したSWR計で調べるためには,同軸ケーブルの長さを (1/2波長×短縮率)×整数 の長さで使用する必要があるのです。
21.4MHzの場合は,図1,図2に記入したように5D2Vなら 4.70m,9.39m,14.09m の状態で使用します。
     次の写真はSWR計の例です(古いものです)。
          アナログSWR計の例
     次の写真はトランシーバ内臓のSWR計です。送信出力100W目盛まで点灯していますが,SWRの値は1 と非常に良好なマッチング状態を示してます。
          トランシーバのSWR計 


【参考1】 共振状態のANT線(1/4波長×0.97)の場合のマッチング方法
  このページの最初の表で,1/4波長×0.97の長さにするとアンテナ線が共振状態となり,リアクタンス分の無い36Ωとなると説明しました。
この状態でSWRは1.4 なので,5D2V同軸ケーブルの長さを 4.70 m,9.39 m,14.09 m にして使用すれば,トランシーバ出力部のSWRも1.4 となるので,給電点にマッチング回路を挿入しなくてもトランシーバからの送信電力の大部分は同軸ケーブルに送り込まれ,給電部からANT線へ流れ込み電波として放射されます。
・・・ですが,金属のバックステーワイヤが近いことなどから,計算の通り 3.40 m でZ=36Ω±0Ωとなるとは言えません。

そこで,36Ωと50Ωの同軸ケーブルのマッチング(整合)を計算してみた結果,次のようになりました。
        整合回路LとCの値2
コイルが 163.6nH (0.16μH)と小さな値です。
コイルのインダクタンスはコイルの直径・巻き数・コイルの長さで変化します。下表は,直径20mmでの巻き数・コイル長で計算した一例です。
巻き数3回,コイル長15 mm、または巻き数4回コイル長 33 mmで約0.16μHとなります。
実際は,単三乾電池に銅線を4回巻いてコイル作り,調整時に長さを25mm~33mm伸ばして良好なマッチング状態となれば良いのです。
        コイル図2
下の写真は単三電池に巻いて作成したコイルです。右は引き伸ばしてコイル長を3cmにしたものです。このようにして,コイルのインダクタンスを変化させます。
   整合用コイル1_DSC01326   整合用コイル2_DSC01

並列となるコンデンサC:92pFですが,前述のようにセラミックコンデンサを2~4個並列にして作ることもできますが,次のように同軸ケーブルの中心導体と外部導体の容量をコンデンサーとして利用する方法があります。
同軸ケーブル 3D2V, 5D2V, 8D2V の静電容量は1m当り100pFです。
下図のように長さ1m程度の同軸ケーブル5D2Vを取り付けて,同軸ケーブルの長さを少しずつ切ってゆくと92cmあたりで整合できるでしょう。(切り口はオープンでOKですが,水が入らぬようにします)
       同軸でコンデンサを代用2
次の写真は実際に作成したものです。コイルの巻き数が3回で整合できました。
          (クリックで拡大します)。
       1_バリコンを同軸で

35cmの同軸ケーブルを3本作り並列にして,その中の1本を少しずつ切って92pFとしても良いでしょう。
(3C2V, 5C2V, 7C2V を使用する場合 は1mあたり67pFなので長くなります。)

コンデンサの代用として同軸ケーブルを使用するマッチング方法はセラミックコンデンサが入手できなくても作成できるので最も簡便な方法と言えます。5D2Vを使用すれば送信電力100W程度でも使用できます。


以上はアンテナの付近に金属物が無いとして算出された計算値を用いての設計です。
ヨットでは,バックステーやトッピングワイヤなど様々な金属線がANTから近い位置にあるので,計算の通りとはなりません。
このためANTの長さは±10%変化させてみる必要があるかもしれません。マッチング用のコンデンサの容量やコイルのインダクタンスも±30%変化させる必要があるかもしれません。
それを考えると,調整時にはコンデンサ容量が変更できるバリコンを使用し,マッチング状態のバリコンの角度を調べて,その容量に相当するセラミックコンデンサへ取り替えると良いでしょう。
書き遅れましたが,これらの調整はヨットが海面に浮かんでいる状態で行います。また他のヨットと近接していない場所で行います。

【参考2】 7MHz,14MHz,18MHzにおける 1/4波長垂直ANTの長さとインピダンス
     長さとインピーダンス
上表はアンテナ線の直径2mmで計算したものです。ANTの短縮率が周波数が高くなるにつれて変化するのは波長に対するANT線の直径率が変化するためです。ANTをパイプにすると短縮率が0.95以下になります。


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  1. 2015/04/13(月) 16:15:20|
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