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Smith V3.10 で整合回路のLとCの値を求める

フリーソフト「Smith V3.10」でアンテナチューナー(ANT整合回路)を設計
                                           総目次へもどるは ⇒ こちら

このページは,前頁の続きです。前頁へもどるは  ⇒ こちら
前頁では「MMANA」を用いて垂直アンテナのインピーダンスを調べました。このページは、そのインピーダンスに整合させる回路とLとCの値を便利なソフト「Smith V3.10」を用いて調べる手順です(Smith V3.10の使い方の例)。
(このページは2015年当時のSmith V3を用いた説明です。最新のSmith V4も基本は同じです)

「Smith V3.10」はスイスのベルン大学の「Fritz Dellspergerさん」によって提供されている便利なフリーソフトです。
SmithV3.10 is the convenient free software for which Smith chart is used by a computer.
This software is offered by Mr. Fritz Dellsperger of Bern university Applied Sciences, Switzerland.


Smith V3.10 (Smith V4)ダウンロードはこちら ⇒  http://fritz.dellsperger.net/smith.html
次の画面の赤丸をクリックするとダウンロードが始まります。
         (すべての図はクリックで拡大します)
     50 smith v3.10をダウンロードする


ダウンロードが終了すると画面左下に次が表示されます。zipファイルを展開します(開きます)。
途中で,表示される選択画面は,気にせず進めます。ショートカットの作成は了承します。
言語の選択は日本語にできません。
          52 ZIp ファイル


次のアイコンをクリックで「Smith V3.10」が起動します(次回からデスクトップのショートカットで起動)。
          54 ZIPファイルを開く


「Smith V3.10」が起動すると画面中央に次が表示されます。下図の中央をクリックすると作業画面となります。
          56.jpg


次が作業画面です。下図の太い赤丸はインピーダンス50Ω±jを表しています。
下図は説明のために赤太線にしました・・・(最新のSmithバージョンでは色が異なる場合があるようです)
太い赤丸の左端(全円の中心)はインピーダンス50Ω±j0の点です。
初めてスミスチャートの図を見た方には、難しそうに見えるかもですが,以下の操作をしてみると簡単に使えることがわかります。
         (すべての図はクリックで拡大します)
   58.jpg



では実際のデータを入れて操作をしてみましょう。
 ・画面上の「keyboard」をクリックします(下図赤丸)。
 ・reの枠へインピーダンスのRの値(今回は20.329)を打込みます。
 ・imの枠へインピーダンスのJXの値(今回は-123.299)を打込みます。
                     (マイナス記号を忘れないように)
 ・frequencyの枠へ周波数(今回は21.4)を打込みます。
 ・打込み数値を確認し、画面下の「OK」ボタンをクリックします。
          60打込み画面



スミスチャート画面の中にDP1(小さな黒色四角)が表示されます。このポイントがR±jX(今回は20.33-j123.30)のDatepoints値の点です。
右側のSchematic=回路図画面にも縦書きでインピダンスが表示されています。回路図にはLもCも無い状態です。

     62.jpg



ANTの長さが1/4波長より短い2.8mの場合なので,ローディングコイルを入れます。
画面上部のアイコン(下図矢印)で直列コイルを選択クリックします。
        64.jpg



直列コイルのインピーダンスの円(下図の緑の輪)がDP1から右回りに表示されます。
(SmithV4では緑色でない場合がある)
     66.jpg



上図の緑輪と、青円線20.0mが交差する点でクリックするとTP2点が表示されます。
緑輪の色が変わり、TP2から右側の輪は消えます(下図)。
     68.jpg




画面のメニューで,並列コンデンサーをクリックします(下図参照)。
     70.jpg



下図のB点からC方向へ線が表示されるので,マウスで50Ωの赤円と接するC点をクリックすします。
                         (全体円の中心C点は50Ω±j0Ωの点です)
これで,右のSchematic=回路図の枠に整合回路とL=1.1μH,C=179.5pFの値が表示されました。
この値のコイルとコンデンサーをSchematic図のように挿入すれば良いのです。
画面右下の「Cursor」の中に,この回路を挿入した時のTX側から見たSWR=1.02,Z=51.08+j0が表示されています。
              (図はクリックで拡大します)
     80 LC整合回路


【参考】
  上記のSmithV3, V4は50Ωへ整合のため、チャート図がシンプルですが、
  75Ωに整合させるとしたら 次の図のようになり、コイルのインダクタンスが1.2μHと少し増加し、
  コンデンサーの容量が162pFと少し小さくなります。
         (図はクリックで拡大します)
     75Ωにマッチングする場合



Smith V3.10の回路図の左右を書き換えると,次のようになります。
この回路を,手計算で求めたページのものと比較してみてください。
手計算のページ「垂直接地アンテナと同軸ケーブルの整合」へもどる ⇒ こちら
        96 整合器の回路と数値
アンテナチューナーの整合回路は1つのコイルと1つのコンデンサーで構成できることがわかります。損失の少ないコイルとコンデンサーを使用すれば,部品数が少ないので低損失のアンテナチューナ(整合器)となります。
参考:コイルのQ(Quality Factor)は次の式で表されます。
            Qの式
   1.1μHなので空芯コイルで作ればQは200以上となります。
   f=21MHz,Q=200を代入し計算するとコイルのR分は0.7Ωとなります。
   0.7ΩはANT給電点のR分に比較して十分に小さいので整合コイル内での損失は
   少ないと考えて良いでしょう。
   ANTが0.2λより短くなるとANT給電点のインピダンスが更に小さくなり,整合コイルの
   インダクタンスが大きくなるため,コイル内での損失が増加します。
   (整合できてもチューナ内のコイルで熱となり,放射される電力が小さくなる)


【その2】
以上は最初に直列 L を使用しましたが,最初に並列 L を使用すると下図のようになります。
並列 L によるLC整合回路はL=0.58μH,C=39pFで作成できるため,コイルの巻き数が少なく,更に効率が良い整合回路となるかもしれませんが、コンデンサー(バリコン)を絶縁する必要があります。
     84 LC整合

【その3】
次は最初に直列Cを挿入し,次いで並列 L を入れ,直列Cを挿入した整合回路です。
この回路でも整合がとれます。,市販のマニュアルアンテナチューナーで多く使用される回路です。最初の直列Cの線上でCの値が80pFの点を選んでも整合点(50Ω+j0)とすることができます=2つのCとLを変化させることで広範囲のANTインピーダンスに整合できることがわかります。
     90 CLC整合

【その4】
次は,最初に並列Cを入れ,直列 L を入れ,並列Cを入れた時のSmithチャートと回路図です。この回路も,2つのCとLを変化させることで広範囲のANTインピーダンスに整合できることがわかります。
オートアンテナチューナなどに使用されるπ型整合回路ですね~。
          (すべての図はクリックで拡大します)
     92 π型整合

以上は,例題として21.4MHzにおいて1/4波長より短い2..8mの垂直アンテナを使用した時のインピーダンスと整合回路です。これと異なる周波数,アンテナの長さ,太さの時は,前頁のMMANAでのインピダンス算出に戻り、数値を変更すれば同様に整合器の回路常数が求められます。

【ことわり書き】
以上は整合回路の配線などの要素を含まない状態での解析値です。整合回路を自作する時はコイルやコンデンサーの配置や金属ケースからの距離・配線などの影響を受けるので,コンデンサーはバリコンを使用した方がよいでしょう。


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  1. 2015/03/13(金) 18:10:27|
  2. 無線アンテナと整合
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:6
<<MMANAを用いて1波長デルタループANT(正三角形)のインピーダンスを算出 | ホーム | MMANAで垂直ANTのインピダンス算出とアンテナチューナー(整合器)を簡易・安価に作る>>

コメント

すごい解説です

大変助けになります。
ありがとうございました。
最近AA-600を入手し、いろんなアンテナの状態を測定始めましたが最終的にスミスチャートから読み取ることができずに眺めているだけでしたがこれからは調整にしっかり使えそうです。
  1. 2017/12/18(月) 11:55:30 |
  2. URL |
  3. 7k2abv #NpZ642vw
  4. [ 編集 ]

Re: すごい解説です

7k2abvさん

コメントありがとうございます。
アンテナとその関連は面白いですね。

SWR値が3を越えるとダメとか言う人がいますが,実際の電力損失を調べないで話している方が多くいます。
VHF,SHFでは損失が無視できない同軸ケーブルを使用せざるをえないため,SWRが低いことが大切ですが,
HFでは損失の少ないフィーダーを使用すればSWR=8でも送信電力のほとんどが電波となって送信されます。

時間がとれたときに、全体目次ページの項目番号B4,B5,B5-1を開いてみてください。

全体の目次ページのURLは次です。
http://take103.blog.fc2.com/

B4. フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
B5. SWR値と反射波電力・アンテナへ進む電力(同軸ケーブルと平行フィーダの比較)
B5-1. SWRが3の時,送信電力の25%が損失となるは正しいか?


コメントありがとうございました。管理人より
  1. 2017/12/19(火) 11:42:42 |
  2. URL |
  3. 管理人 #-
  4. [ 編集 ]

やっと理解できました

昨年夏 四十数年ぶりに再開局したのですが 昔は自作派でしたが 今は自分で比較的自由に出来るのは アンテナ関係ぐらい

Smith Chart の存在は知っていましたが、まったくわかりませんでした 。
バーチカルアンテナをさがして うろうろしていて 前稿の MMANAで垂直アンテナの・・・・・
から この記事にたどりつき  AMMANA  と Smith  両方 すこしですが使い方が理解できました。
これからは まったくの手探り状態の試行錯誤ではなく すこし理論的な方法で いろいろチャレンジできそうです。
ありがとうございます。


なお 現在 Smith V4.1 に改定されていて 表示される円弧の色が 緑ではなく オレンジ?で 赤 とみまちがえて 何度も緑をさがして トライしました (笑)

また おせっかいですが 操作説明の 
・imの枠へのインピーダンスのjxの値 (今回は-12.3299 ・・・・    の
    小数点の位置が・・・   正は -123.299 ですよね

  1. 2018/03/30(金) 14:39:48 |
  2. URL |
  3. INM Ryu #Dcv.cm6w
  4. [ 編集 ]

Re: やっと理解できました

INM Ryuさん
コメントありがとうございます。
誤記を見つけていただきありがとうございます(後期高齢者に近くなりミスが多くなりました)。

AMMANAもSmithも役立つSoftですね。
実際のANTは,エレメントから近いところに屋根や電柱があったりするので,
インピーダンスはAMMANAの計算ピッタリとはならないでしょうが,
AMMANAによって概の値がつかめるので整合回路のLCとしてどの程度の値のものを
準備すれば良いかがわかるので便利ですね。

全体目次ページ http://take103.blog.fc2.com/ から項目番号
「B34.続:垂直ANT(4~10m)の7MHzでの給電点インピーダンスと整合回路」
あたりも開いてみてください。

私はHF帯ではハシゴフィーダーも使用しています。SWRが高くても同軸ケーブルより損失が少ないので良好です。
目次ページの項目番号の
「B5.SWR値と反射波電力・アンテナへ進む電力(同軸ケーブルと平行フィーダの比較)」
に損失比較を掲載しました。

コメントありがとうございました。管理人より。



  1. 2018/03/30(金) 22:28:13 |
  2. URL |
  3. 管理人 #-
  4. [ 編集 ]

ご教授ください

お世話になります。SmithV4.1しかなかったのでこれをダウンロードしてインストールしました。上記21.4MHzの短縮アンテナを想定し、KeyboardのReに20.329 Imに-123.299 frequencyに21.4と入れOKを押し、次に短縮なのでローディングコイルの直列コイルアイコンを選んでもソフトは直列コイルを算出ません。上記の説明では(L=1.1μH)と出るとありますが・・・。これはバージョンにより操作方法が異なるのでしょうか?それとも私の操作方法が間違っているのでしょうか。ご教授ください。
  1. 2018/09/05(水) 20:10:14 |
  2. URL |
  3. ken #AoLMAL/o
  4. [ 編集 ]

Re: ご教授ください

Kenさん
Smith V4.1をダウンロードして実行してみました。
問題なく動作します。
再度、非公開コメントの形式で、Kenさんのメールアドレスを記入してコメントいただければ、
前V3とV4.1 の違いと注意点を私からKenさんへメールでお知らせします。
管理人より
  1. 2018/09/06(木) 10:25:33 |
  2. URL |
  3. 管理人 #-
  4. [ 編集 ]

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