皆空の中で...

25.垂直接地アンテナと同軸ケーブルの整合(マッチング)

垂直接地アンテナと同軸ケーブルの整合 (1/4波長より短いアンテナへのマッチング例)
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     このページは,外洋航海ヨットの垂直ポールアンテナ,自動車モービルアンテナなど
     垂直接地ANTとの整合(マッチング)の具体例です。


アマチュア無線では「アンテナの長さは使用周波数に共振していないとダメ」と言う人がいます。アンテナのエレメントの長さが使用周波数の1/2波長とか,1/4波長で使用することを推奨する理由は何なのでしょうか? 1/2波長とか1/4波長の長さに合っていないアンテナではダメなのでしょうか?

過去のページで説明しましたが,次の図-1は「1/2波長ダイポールアンテナの給電点のインピーダンス」のグラフです。
   「中央給電水平ダイポールアンテナのインピーダンス」へもどるは → こちら 
インピーダンスZは Z=R±j X で表されます。アンテナの長さが周波数の1/2波長(0.5λ)の時,R分が73Ω,リアクタンスj X分が+43Ωです(下図の緑丸の点)。
1/2波長(0.5λ)より3~5%短くするとリアクタンス分が±0となります。リアクタンス分による不整合が少なくなり75Ωの同軸ケーブルと整合状態に近くなるため,1/2波長ダイポールではアンテナ線を計算上の長さ×0.95で使用します(下図の紫丸の点)

この図で見落としてはいけない点は「わずかな波長(周波数)のズレでリアクタンスが大きく変化する点」です。言い換えると,わずかな周波数のズレでリアクタンス分が大きく変化する=給電点のインピーダンスが変わる=同軸ケーブルとのマッチングがとれなくなると言う点です。リアクタンス分の変化はアンテナ線として太い材料を使用すれば変化が少なくなります。
             (図はクリックで拡大します)
   1_0.5波長ANTとインピーダンス
以上でおわかりと思いますが,「アンテナの長さは使用周波数に同調している」とは,リアクタンスが±ゼロとなる長さで使用すると同軸ケーブルとの整合=マッチングがとれ,送信機からの電力が効率よくアンテナへ伝わる=電波が飛ぶと言う話なのです。
言い換えると,同軸ケーブルの電力が効率的にアンテナへ送り込め,アンテナから効率よく輻射されるならアンテナ長は1/2波長とか1/4波長に合っていなくても良いのです。(実際にUHFやVHFでは5/8波長アンテナなど中途な長さのアンテナが沢山使用されています)。

過去のページの話はここまでにして本題のヨットのグラスロッドアンテナや,自動車のモービルアンテナとして使用される垂直接地アンテナの整合について話を進めます。

下図は,垂直接地アンテナの長さと給電点のインピーダンスの変化のグラフです。下図から,長さが1/4波長=0.25λの接地アンテナの給電点の実数部の値(R分)が約36Ωと読み取れます(下図の赤丸)。1/2波長=0.5λの垂直接地アンテナの場合は給電点の値が1~3kΩと非常に高くなります(下図の右上の紫丸)
    下図のkaはアンテナ線の長さと線材の直径できまる値です。Ka=400は直径8mm長さ5mの場合, ka=300は直径50mmφ,長さ5mと太いアンテナです。
   2_長さと給電点抵抗値
給電点の値が36Ωなら50Ωの同軸ケーブルを直接接続しても,SWRは1.5なので何とかなりそうです。ですが,次の図を見てください。アンテナ長さが1/4波長=0.25λの場合,リアクタンス分が-30Ω発生しています。即ち,1/4波長垂直アンテナの給電点のインピーダンスZは Z= R±j X = 36-j 30 となり,50Ωの同軸ケーブルを直接接続すると不整合状態となります。

アンテナ長を1/4波長より少し長い0.27λにするとR分は約50Ωとなるが,j X分が+j 80Ωとなります(下図の水色丸の点)。この+j 80を打消すための-j 80分のコンデンサーを挿入すると50Ωの同軸ケーブルにピッタリ整合できます。
逆に,アンテナ長を0.23~0.24λにするとR分は30Ωとなりますが,リアクタンス分が±0となるので,30Ω⇒50Ω変換回路を挿入すれば50Ωの同軸ケーブルにピッタリ整合できます。
   3_長さと給電点リアクタンス値

実践的な例で考えてみましょう(1/4波長より短いアンテナの場合)
ヨット用としても,自動車用としても1/4波長(0.25λ)程度のアンテナがあればベターですが,そのような長さのアンテナが使用できない場合もあります(特に自動車用では難しいでしょう)。

以下は2.8mの垂直ロッドアンテナへ21MHzを給電する時の具体例です。
21MHzの波長λは300÷21.3=14.1mです。垂直ロッドアンテナ長÷波長= 2.8m÷14.08m=0.2です。上の図2で0.2λの点のR分の値は約20Ωと読めます(緑色の線)。0.2λの点のリアクタンスj X分はアンテナ線の線径で-70~-150Ωと変化します。ここでは-100Ωとします(図3の紫色の丸)

上の図2と図3より,0.2λの垂直アンテナの給電点[A]のインピーダンスZは,Z=20Ω-j 100Ωとなるので,50Ωの同軸ケーブル[F]と接続しても値が大きく異なるため整合できません(同軸側から送信電力を送り込んでもF点から送信機側へもどってしまいます=同軸ケーブルに反射波が発生します(SWRが高くなります)。
     3_垂直接地ANTの2.8m整合 設計
A点のインピーダンスと同軸ケーブルのインピーダンスをマッチングさせる回路を考えます。
下図の右側はアンテナの等価回路で,R分が20Ω,リアクタンス分-100Ωで表示されます。まず,リアクタンス-100Ωをリアクタンス+100Ωで一消すためのコイルを挿入します(赤文字の+100Ω)。これでリアクタンス分は±0となり,[a点]から右を見るとR分の20Ωとなります。
     4_ANTと同軸の整合の仕組み
上の図に数値を書き込んでしまいましたが,[a点]の値20Ωから[F点]の値50Ωへ変換する(逆に言えば[F点]の値50Ωから[a点]の値20Ωへ変換する)回路定数XLとXcを計算します。
     5_XLとXCを求める
上の上の図の二つのリアクタンス25Ωと+100Ωを合算して+125Ωと表示すると以下の図となります。
     6_コイルのリアクタンスを合算した図
リアクタンスXL・Xcをインダクタンス[μH],キャパシタンス[pF]へ変換します。XL=ωL,Xc=1/(ωC)に代入して計算すれば良いですが,ここでは次の簡易計算で求めました。
     7_リアクタンスの変換
コンデンサー183[pF]は50pFのコンデンサ3個並列し,残り32pF分を可変容量コンデンサー(50pFバリコン)を並列に使用します。インダクタンス0.9[μH]は下図のような空芯コイルを使用します。
     8_コイル2
以上で,1/4波長(0.5λ)の長さでない場合も完全にマッチングがとれることが理解できます。即ち,アンテナ長は必ずしも1/4波長の長さでなくても良いのです。では,マッチングがとれるなら非常に短いアンテナでも良いかと言えば,それは誤りです。アンテナの「実効長」が短くなると輻射効率が下がります。
また,非常に短いアンテナは給電点のインピーダンスが数Ω程度と低くなります。電力は「Z×電流の2乗」ですから,電力100Wの時,Zが1Ωなら電流は10Aとなります。その結果,電力の大部分をアース抵抗やリアクタンスを打消すコイルにおいて高周波電流損が発生し結果として効率が著しく低下します。更に,コイルでリアクタンスを打消せる周波数幅が非常に狭くなるためスポット周波数でしか使用できない状態となります。
垂直アンテナ長は1/4波長×60%程度の長さより短くしなければ効率が大きく下がることは少ないでしょう。(1/4波長以上で5/8波長未満ががベターであることは言うまでもありません。)

2.8mの垂直アンテナを21MHzで使用する場合の整合器(マッチング回路)の机上設計は以上ですが,実際の給電はアース抵抗が完全ゼロでないこと,アンテナ線が周辺の金属線などの影響を受けることなどから,机上計算で求めたコイル0.9[μH]とコンデンサー[183pF]でピッタリとマッチングがとれるとは限りません。

このため,コイルを多めに巻き,タップ切替で0.5~1.5[μH]と変化でき,コンデンサーは100~250pFと可変できるバリコンを使用するとピッタリとマッチングできるでしょう。
アマチュア無線の場合は,SSB通信でも21.150MHz~21.440MHz付近まで周波数を変えて通信をしますので,整合回路の値が固定的ではマッチングのずれが大きくなることがあります。

これらのズレをカバーするためには,過去のページで説明したアンテナチューナー(アンテナカップラー)を使用するのが最も簡便です。アンテナチューナーはアンテナとのマッチングのための機器です。戦前は「空中線整合器」の名称でした。アマチュア無線ではアンテナカップラーの名称でしたが,最近はアンテナチューナの名称となりました。
いずれも同じ機能であり,基本は上図で説明した「LとCの組合せ回路」です。

【最初の疑問への回答】
このページの頭の「アンテナの長さは使用周波数に共振していないとダメ」との言い方は基本が理解できていない人の話です。 中波のNHKラジオの送信ANTや,外国航路を航海する船舶の短波送信ANTの長さは,送信周波数の1/4波長より短いものが沢山あります。
アマチュア局でも5/8波長ANTなど長さが周波数に共振していないANTがあることをご存じでしょう。

1/4や1/2波長の長さにすると,リアクタンス分が最小になる点があるので,同軸フィーダーを直接接続してもSWRが大きくならず,結果的に送信電力がANTへ効率よく吸い込まれる(電波が飛ぶ)と言うことになります。
ANTと同軸の接続点へ整合器(チューナー)を挿入すれば,リアクタンス分が大きくても,整合器でそれを打消しできるので,送信電力がANTへ効率よく吸い込まれます。
中波のラジオ放送ANTや船舶の短波送信ANTは,給電部に整合器(チューナー)を使用するので、ANT線の長さが送信周波数に共振していなくても良いのです。
アマチュア局の5/8λANTなども給電部にLとCの整合回路が内蔵されています。


アンテナチューナーについては,オートチューナを含め以下を参照ください。
このブログの総目次の中に,中項目【アマチュア無線のアンテナ技術】があります。この中項目の「10.アンテナ チューナー(アンテナ カプラー:空中線整合器)」から「24.はしごフィーダー用アンテナカップラー(アンテナチューナー)」のページへ基本回路からメーカ回路まで掲載してあります。

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アンテナ チューナー(アンテナ カプラー)10~24項へもどるは ⇒ こちら

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  1. 2013/07/03(水) 12:18:21|
  2. アンテナと整合
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コメント

初歩にたちかえり

小谷さん、誠にありがとう御座います。 忘れかけていた、事を小谷さんのブログで勉強して,思い返しております。
  1. 2014/07/19(土) 19:02:36 |
  2. URL |
  3. 大田良春 #-
  4. [ 編集 ]

Re: 初歩にたちかえり

コメントありがとうございます。
少しでもお役にたてれば幸いです。
このところ小樽の会のビデオを見て思い出しています。
話は変わりますが,先日,居間のシーリングライトが「すぐ消える」症状となりました。
その処置を記事として書き加えました。
私のブログの目次の「その他の番号E8「シーリングライトがすぐ消える」に書きました。
これは,知っておくと役立つ話です。
コメントありがとうございました。
  1. 2014/07/19(土) 22:06:59 |
  2. URL |
  3. take103 #-
  4. [ 編集 ]

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