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続:遠距離航海ヨットの通信用アンテナ(アンテナ給電線とアース配線)

続: 遠距離外洋航海ヨットのHF通信用アンテナ (アンテナとアース配線) 
    The communications antenna of a long voyage sailboat.
    外洋ヨットの通信アンテナ(14,18,21MHzアンテナ)とチューナーとアース設計
    (ヨット_オケラとHF通信アンテナ_アマチュア無線アンテナ_その2)
  
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【まず基礎的な話です】
アンテナの基本として「ダイポールアンテナ」があります(下図)。下図左は,一般的な「1/2波長水平ダイポールアンテナ」です。それを垂直にしたものが「1/2波長垂直ダイポールANT」です。垂直ダイポールANTの下側のエレメントをアースに接続した形が「1/4波長垂直接地アンテナ(ANT)」です。
(NHKラジオ放送などは片側をアースにした「垂直接地ANT」を使用しています。)
1_ANTの基本2

ヨットのバックステーアンテナ,グラスロッドアンテナも上図右の垂直接地アンテナ(ANT)です。長さが1/4波長の垂直接地ANTから無線機への接続は下図のようになります。
1/4波長垂直接地ANTの給電点のインピーダンスは約36Ωです。同軸ケーブルの特性インピーダンスが36Ωであれば「ANT側36Ω=ケーブル側36Ω」でピッタリと整合しますが,36Ωの同軸ケーブルは製造されていません。
通信では50Ωの同軸ケーブルを使用するのが標準です。無線機の出力も50Ωが標準です。無線機から50Ωの同軸ケーブルでアンテナ側へ給電しますが,1/4波長垂直接地ANT給電点の値が36Ωなので,50Ωと36Ωの差を整合させる空中線整合器(アンテナチューナ=アンテナカプラ)が必要となります。
   (中波ラジオ送信局ではアンテナ直下の小屋に巨大なコイルの整合器を設置しています。)
   垂直接地アンテナ線の長さとインピーダンスの値は→こちらの(図2.7,図2.8,図2.9)をご覧ください。
1_ヨット垂直ANTへの接続(基本図)2

【ヨットのアンテナの話に入ります】
ヨットの場合は下図のようになります。アンテナから船尾(船内)の整合器(アンテナチューナ)までの給電線として同軸ケーブルを使用せず,被覆電線(単線)を使用します。
    (同軸ケーブルを使用しないのはおかしい・・・と考える人はアマチュアです。
      ラジオ短波(旧:日本短波放送)などプロの送信ANTは同軸ケーブルを使用していません)

同軸ケーブルを使用しないのは,アンテナの給電点が同軸ケーブルの特性インピーダンスと同じ値になっていないからです。また,この部分を単線にすることで14MHzや18MHzなど他の周波数帯のアンテナとしても利用できる利点があります。
垂直接地ANTでは,アースの良し悪しが電波の飛びに大きく影響するので,シッカリとしたアースを設けましょう。
     垂直接地アンテナではアースの良し悪しが大きく影響するは → こちら

2_ANTから送受信機への接続図

下図は垂直ロッドアンテナ部から船内への給電線(単線)の引込み方法の例です。ポイントは「給電線(単線)を金属性の支柱へ密着させない」ことです。ポリエチレンの被覆電線でも金属支柱に密着させて引込むと高周波損失が大きくなる虞があるためです。金属支柱から間隔をとるセパレーターは支柱から3㎝以上あればOKです。またその数は少ないほど高周波損失が少なくなるのでブラブラしない程度の間隔30cm~60cm毎に取り付ければ良いでしょう。セパレーターはFRP板などでOKです(吸湿しないように表面塗装をする)。
     3_ANTからの引込配線(詳細図)

  参考:下図は月刊「舵」1997年5月~7月号に連載した記事から引用です。
        FRPロッド無線アンテナの作り方と取り付け方
         (下図はクリックで拡大します)
   FRPパイプにANTを取付_舵

         (下図はクリックで拡大します)
   ステンパイプにANTを取付_舵から2
   1997年頃は,FAX受信用FRPロッドの中に銅線を通して送信用アンテナとして使用できたが,近年はFAXアンテナの入手が難しい。ホーペック社の電気通信用FRPアンテナ または,漁業用FRP竿の利用で同等の垂直FRPロッドアンテナを建てることができる。


     月刊「舵」1997年5月~7月号の記事は, Okeranetのホームページ ⇒こちら 
     左側のアイコン(下図)をクリックすると開きます。
                    オケラネットの中のアイコン   
     または ⇒こちら http://www.okeranet.com/kazi_3.html で開きます。


注書き:
以下は,「何故,垂直ロッドアンテナ下端から同軸ケーブルで引込まないのか?」と思う方のための注書きです。

(なぜ単線で引込むのか?)
アンテナの給電点のインピーダンス(高周波特性値)はアンテナの長さ・高さ・傾き,周辺の金属物体などの影響で理論通りの値になりません。同軸ケーブルの特性値とアンテナのインピーダンスが合っていないまま接続すると同軸ケーブルの中で反射波が発生し,結果的に大きな損失が生じます。単線で引き込む場合も反射波が生じますが,セパレーターで絶縁した単線を使用すると損失は小さくて済みます。損失が少ない分,送信電力が効率的にアンテナから輻射されます。
  (くどいですが,ラジオ短波:旧日本短波放送の送信ANTは同軸ケーブルを使用せず,平行線給電です)
アンテナ下端(船内)にANTチューナー(整合器)を設置し、整合器から無線機までは同軸ケーブルで給電します)。
          詳しくは⇒こちら



次は,通信用アースの方法です。
くどいようですが,垂直接地ANTやバックステーANTは下半分をアースで代行するため,アースの良し悪しが電波の飛びに大きく影響します。最も望ましいのは,整合器のアース端子から短い電線で海水へ接する金属板へ接続する方法です。船底が金属でないFRP製のヨットでは海水に接する船底へ金属板を張ることは難しいので,下図のように船底内側へ金属板を張り,アース配線を接続します。
 (通信用アースは直流的なアースの必要性はない。電食防止亜鉛のように海水に接触していなくても良い。
 無線周波数において高周波抵抗値(インピーダンス)が小さければ良い。
 船内の船底に金属板を張り,アース線を接続すると良好な通信用アースとなる。)

          4_ヨット船内へ金属板を張りアース配線
船内のアース配線を鳥瞰図的に書くと下図のようになります。アース配線は下図の水色の太線のように船底内側の金属板,エンジン本体,バッテーリーのマイナス端子,キールなどとも接続します。配線用の線材は太めの600VIV線がベストですが,銅線は電食で溶ける事があるのでステンレス線でも良いでしょう。パルピットの取付けボルト(船内側)へもステンレス単線でアース配線をすれば更に良いでしょう。
5_ヨットのアース板

下図は船尾にヤグラがあるヨットの場合です。整合器のアース端子から,下図の水色点線のように船内側でヤグラの足のボルト,パルピットのボルト,船底の金属板にアース線を配線します(アース配線は上図のようにエンジン本体,バッテリーマイナス端子,キールへも配線をします。
6_ANTとアースの図jpg
船底内側の金属板としてステンレス薄板と書きましたが,銅板でもOKです。簡易的には,家庭で「天ぷら」を揚げる時に使用する「アルミ薄」を広く船底に張り付け,それを代用品とすることもできます(天ぷら用アルミ板では耐久力は期待できません)。

船内船底へ金属板が張れない場合は,
(1) 上図の水色配線に「1.6mmφIV単線」を接続し,左右のパルピット下部(デッキ内側)に沿って
   船首まで「1.6mmφIV単線」を引きまわし、船首で左右から引いた「1.6mmφIV単線」を接続します。
(2) または,水色配線に「1.6mmφIV単線」を4~5本接続し,それらの線を個々に左右に広げて
   バッテリーのアース端子へ接続します。

……以上はヨットの船体(ハル)がFRPの場合です。ハルが金属板のヨットはアース線をハルへ短く接続すればOKです。


【理論に興味がある方へ】
参考ですが,船底内側に張った金属板による静電容量とインピーダンスの試算をしてみましょう。
     7_アース板のインピーダンス
   アース抵抗値と垂直接地アンテナの効率は → こちら

整合器(アンテナチューナ)はどのような形式のものが良いかを書きわすれました。
便利のは「オートチューナー」です。オートチューナーはプロセッサを内蔵し,無線機側からの操作で自動的に整合(チューニング)をとってくれます。整合調整を知らぬ人でも利用できます。
但し,オートチューナはプロセッサーなどの部品で製造されているため,不具合が発生すると自分で修理ができません。

マニュアルチューナーは部品点数が非常に少ないため,まず故障の心配がありません(防水は必要です)。
チューニング時に手動でツマミを操作する手間が必要ですが,一度,調整すると周波数帯を変えないかぎり,そのまま使用できます。
信頼性の点ではマニュアルチューナーが優れています(放送局はマニュアル式です)。
     アンテナ整合器の例は → こちら
     マニュアルチューナーの製品例は → こちら

以上,くどい書き方をしましたが,それは「アンテナと整合器(アンテナチューナー)があればOK」と考えやすいので,バックステーアンテナや垂直アンテナはアースがシッカリしていないと電波の飛びが悪くなることを理解して戴きたいからです。

このページはヨット雑誌「舵」に掲載した記事の補足です。「舵」の内容は次の「ヨットのアンテナ・無線システムのセッティング」をクリックしてください。
     オケラネットのホームページは  → こちら
     オケラネットの「アンテナ・無線システムのセッティング」は → こちら


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    アンテナチューナー(ANTカプラー)の話10~24項へもどるは ⇒ こちら    
    垂直アンテナと同軸ケーブルの整合(マッチング)の技術話は ⇒ こちら


   簡単で高性能のヨット用21MHzアンテナとマッチング方法は  ⇒ こちら

 
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  1. 2013/06/03(月) 14:21:58|
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  1. 2014/06/03(火) 11:29:40 |
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