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ローコスト(500円)で簡単に自作できるヨット用21MHzアンテナチューナー

ローコスト(500円)で簡単に自作できるヨット用21MHzアンテナチューナー
          言うまでもなく自動車ANT用,自宅ANT用としても使用できます。
       Low-cost, Low loss , homemade easily Antenna Tuner / Antenna Coupler

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このページは目次の,
    A14.長距離航海ヨットの通信用アンテナ ⇒ こちら
    A15.続:長距離航海ヨットの通信アンテナ(アンテナ給電線とアース配線)  ⇒ こちら
    A16.続2:長距離航海ヨットの通信アンテナ (バックステーアンテナの盲点)  ⇒ こちら

 の続編です。

前ページで外洋ヨットのための垂直接地アンテナの設置方法を紹介しました。
                   前ページへもどるは ⇒ こちら

このページではローコストで簡単に作れてメーカ製のアンテナチューナより損失が少なく,故障の心配が少ないアンテナチューナ(整合器)の作り方を紹介します(電気的性能はメーカ製に劣りません)。

本論に入る前にアンテナチューナの機能がわからない方への説明です。
        (お急ぎの方は「本題はここから」へ進んでください)
アンテナチューナとは,アンテナの電気的な状態(インピーダンス)と同軸ケーブルの特性値(50Ω)をマッチング(整合)させるための回路です。
昔は「空中線整合器」とか,アンテナカップラーと言われましたが、最近はアンテナチューナーと言われています。

マッチング回路は,アンテナ給電部のリアクタンス±jX 分を打消すとともに,ANT放射抵抗RLを同軸ケーブルの特性(50Ω)に変換する回路です。
この変換回路は,送信周波数,アンテナの長さと設置状態が決まれば,1つのコイルL と 1つのコンデンサーCで作ることができます。
市販のアンテナチューナは,アンテナの長さや設置状態が異なった場合でも整合できるようにコイルLの値と,コンデンサーの値を変化させる機構となっています。
コイルの値は,コイルのタップをロータリースイッチで切替え,コンデンサーの値はバリコンを回転させて変化させます。
   下はメーカ製マニュアルチューナーの整合部です。 (全ての写真と図はクリックで拡大します)
     5_マニュアルチューナの整合部

     下図は上のマニュアルチューナーの回路図です。

   マニュアルカップラ回路図
写真のように,高耐圧のバリコンとロータリースイッチ,ステアタイト巻きのコイル,バリコン連動用の機構が使われています。
オートANTチューナは リレー接点を使ってコイルの端子や,コンデンサーを切替えて整合させる仕組みです。
オートANTチューナは電子回路の集まりなので,わずかでも水分が侵入すると故障します。故障したら最寄りの港で修理できる代物ではありません。


本題はここからです。
故障率は部品数に比例します。部品数が少なければ故障率は小さくなります。
損失は部品数が少ないほど小さくなります。(部品の品質・作り方にも関係します)。
1つのアンテナを使って,1つの周波数帯で送受信する場合は,アンテナとの整合を変更する必要が無いのでバリコンやスイッチを操作することがありません。

バンド切替にロータリースイッチを使用すると,経年変化で接触不良が起きる場合があります。
また,インピーダンスの低いANTへ接続すると高周波電流によるスイッチ接点の焼損も起きやすくなります。
バリコンは,ローター軸の接触バネ板部が劣化し接触抵抗が増加する虞があります。

これらから周波数とアンテナが決まれば,スイッチやバリコンを使用しない方が信頼性の点からベターです。
放送用アンテナの直下にある同調小屋(整合器の部屋)にはバンド切替のスイッチや回転式のバリコンは見られません。

オートアンテナチューナはロータリースイッチの代わりにリレー接点を、バリコンの代わりにリレー接点でコンデンサーの開閉をする機構のものがあり,接点の経年変化には注意が必要です。

上の写真のメーカ製のアンテナチューナーの回路からバンド切替接点などを取り除くと、次のような回路になります。
     1970年のARRL QST誌の ウルチメイト トランスマッチ Ultimate Transmatch ⇒ こちら  と同じです。
          FC107基本回路
インピーダンスの低いアンテナから高いアンテナまでチューニング(整合)できるように入力側にVC1・VC2の連動バリコンを,出力側にVC3バリコンを使用していますが,ANTが1つなら送信周波数におけるインピーダンスも1つなので,整合は次の基本回路となります。
         ANT側のZLで回路が逆になる

上のマッチング(整合)回路では,コイルLが1つ、コンデンサーCが1つと非常にシンプルですが,LとCをピッタリな値にすると,電気的性能は高価なマニュアルアンテナチューナー,オートアンテナチューナーより優れています。
下図は前ページで説明した1/4波長垂直接地アンテナとマッチング回路です。
          前ページの説明へもどるは ⇒ こちら 

     21MHz 0.5λの整合回路

上図のマッチング回路のコンデンサー92pFは計算値なので,実際には92pF±15%程度の調整が必要な場合があります。
そのため,コンデンサーとしては容量が可変できるバリコンを使用するのが簡便ですが、今回は同軸ケーブルの中心導体と外被導体の容量を利用してコンデンサーとしました。
下の写真が「500円 アンテナチューナー」です。
「エ~こんなチャチなもので良いの~」と言われそうですが,SSB送信電力100W程度でしたらマッチング性能は最初の写真のメーカ製に負けません(もう少しコイルの心線を大きくすると良いですね)。
          Low-cost, Low loss , homemade easily Antenna Tuner
     1_コンデンサを同軸で
コイル0.16μHの巻き方は前ぺーへ戻ってください。前ページへもどるは ⇒ こちら
同軸ケーブルの静電容量は5D2V、3D2Vなどは1mあたり100pFです。
従ってコンデンサー92pFの代わりに使用する同軸ケーブルの長さは計算上では92cmとなりますが、実際のANTインピーダンスが35Ω±0から若干ずれている場合があるので,92cmより20cmほど長くしておき,SWR計を見ながら先端を2cm程度ずつ切り落とします。
切落しすぎた時は,10cm程度の5D2Vを並列に接続し,再び切落し調整をします。

下図は容量調整用の同軸ケーブルの先端部です。外被導体を2~3mm短くして中心導体との絶縁距離を作っておきます。
この部分は最終的にテープを巻いて防水します。
このアンテナチューナーはSSB送信電力100Wでも支障なく使用できます。コイル線を1.4mmφにすると200Wでも大丈夫です。
          2_同軸Cの先端

アンテナ線とアース線の先端は、ケースに入れてから圧着端子を取り付けます。
アンテナからの線にも圧着端子を取り付け,ボルトとナットで接続し,接続部に自己融着テープを巻いて防水します
ヨットの場合,塩分を含んだ水分が付着する虞があるので,同軸コネクターによる接続より確実です。
(下の写真の右はバリコンです。バリコンは使用しませんが、一緒に写真を撮りました)
     3_ANT線もアース線も下に

作製した21MHzアンテナチューナ(マッチング回路)をプラスチックのケースに入れました(お弁当の惣菜入れかな?)。
水滴の侵入を防ぐため,同軸ケーブル,アンテナ線,アース線をケースの下部側に引き出します。
下の写真は完成した「500円 アンテナチューナー」です。
     4_防水ケースに入れる
下の写真は蓋をしたところです。
惣菜の汁がこぼれないようにキッチリと閉まるので防水は期待できます。
線を引出した穴の周辺をコーキングすれば防水は完全です。
     5_フタをしたところ

500円で作る21MHzアンテナチューナの話は以上です。
部品代として最も高価なのは食品用プラケースでした。ラグ板は150円です。92cmの同軸ケーブルは切落し品を利用したので合計の部品代は350円で完成しました(コイル線を1.4~1.6mmφにすると見栄えが良くなります。コイル線として同軸5D2Vケーブルの中心導体を利用してもOK。その場合は完成後に銅線に薄く油脂を塗って錆び止をします)。
予算に余裕のある方は,IP65規格の防水ケースに入れると良いでしょう。
また,ラグ板はベーク製でなく,FRP板で自作すると良いでしょう。

このページの頭の写真のメーカ製アンテナチューナと比較したところ,損失はメーカ製より少なく優れた性能でした。
(コイルをロータリースイッチで短絡する方式はコイルのQが低下するため,専用のコイルを使用した場合に比べ損失が増えます。)

今回作成したアンテナチューナは21MHz垂直アンテナ(長さ3.40m)用です。
(長さはANT先端からマッチング回路のコイルまでです)。
下図はアンテナの長さとインピーダンス、更に、コイルLとコンデンサCの値の表です。
   10_整合回路のLとCの値
アンテナ線の長さが2.8mの場合(先端からマッチング回路まで)は,上表よりインピーダンス Z=20.3-j124 となります。
この時のマッチング回路のコイルLは1.1μH,コンデンサーは181pFです。
コンデンサーとして同軸ケーブルを利用する場合は,1mの同軸を2本並列して接続し,そのうちの1本の長さを少しずつ切落して81cm付近にすると合計で181pFとなりSWRが下がる(マッチングがとれる)でしょう。
コイル1.1μHの巻き方と値の調べ方は前ページ を参考にしてください。
前ページ「コイルの巻き方とインダクタンス」は ⇒ こちら
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以下は、参考です。

次は食品が入っていたガラスの空きビンへいれた写真です。
防水がしっかりできる,内部が見えるメリットはありますが,蓋の金属が錆びそうです。
     4_防水ケースの例

次は,モービルANT用に作成したものです。800V耐圧のバリコンですがSSB送信電力100W程度まで使用できます。
     11マニュアルカップラ自作機

バリコンを使用して作成した場合は,次の写真のように防水ケースに入れます。
     13_防水箱に入れた
つぎの写真は防水用に使用できる「電気配線用プルボックス」です。
お惣菜を入れるプラケースより丈夫です。
水滴の侵入を防ぐため,不要な穴をあけないようにします。
     12_電気配線防水箱



外洋ヨット用21MHzアンテナと簡易なマッチング方法へもどるは ⇒ こちら

コイルの巻き方とインダクタンスを調べるは ⇒ こちら

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  1. 2015/05/26(火) 15:50:45|
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