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ANTフィーダーの反射波は最終的にどうなるか(どこへ行くのか)

ANTフィーダー(同軸ケーブル)の反射波はどのようになるか(どこへ行くのか)
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お詫び、このページの反射波の説明は正しいとは言えないので近日中に書きかえします。


このページは「5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)」のページの追加資料です。
「同軸ケーブルなどANTフィーダーに生じた反射波はすべて熱となるのでしょうか。

         「5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)」のページは ⇒ こちら



アンテナ(ANT)給電点のインピーダンスと同軸ケーブルなどフィーダーの特性インピーダンスが合っていないとANT給電点で反射が生じます。ANT給電点のインピーダンス150Ωへ特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルを接続するとSWR3の反射波が生じます。
下図はこの反射波がどのようになるかの説明のための図です。

ANTチューナーからANT方向へ青色矢印のように送信電力が進みますが,SWRが3の時,チューナー出力部の電力10Wが同軸ケーブル5D2Vの損失(SWR=3による増加分含む)によってANT給電点では8.5Wに減少します。

給電点へ届いた8.5Wの75%分(6.4W)がANT本体へ進み,25%分(2.1W)が反射されます。
反射された電力は赤色矢印のようにANTチューナー側へもどります。
もどる反射波も同軸ケーブル5D2Vの損失によって減少します。

ANTチューナーへもどった反射波は送信機からチューナーの整合回路のLとCに送り込まれて流れている高周波エネルギとして合成されフィーダ側へ戻ります。反射波はチューナを抜けて送信機方向へはもどりません。
送信機とチューナー間は50Ω~50Ω~50Ωと完全に整合されたSWR=1の状態なので,反射波が発生しない・・・即ち,送信機側へもどる電力は存在しないのです。

  追記:ANTチューナー内臓のSWR計はチューナーの入力側を測定しています。
      チューナーを操作して内臓のSWR計が下がった状態は,
      送信機からチューナー間の整合がとれたことを意味するもので,
      チューナーからANTへの同軸ケーブル上のSWRは下がりません(変化しません)。


話をもとに戻します。
ANT給電点から反射してチューナへもどった反射波は,送信機側からチューナへ連続的に送り込まれる高周波エネルギー(LC回路の高周波電流)の一部となって合成され,再びチューナ出力側へ送りだされANT側へ進行波の一部となって進みます。

進行波も反射波も同じ周波数:波長のエネルギーなので,それらは位相差によってフィーダ上で重なったり打ち消したりします(定在波状態の高周波エネルギー)。
フィーダ上で重り・打消し状態の合成高周波波エネルギーの構成要素となった反射波がチューナ側へもどると言えないかもしれません。


同一周波数成分の合成高周波エネルギーから反射波だった分を分離できるかどうかわかりませんが,ここでは分離できたとして計算してみます(水色矢印)。

再度ANT側へ到達した電力1.5Wの6割がANTへ供給され,反射された分が再再度もどると言う状態を繰り返し,合わせるとANTチューナ出力の77%程度がANTへ供給されます(実際はその他の損失も加わるので77%未満となります)。
         (下図では,ANT給電点の平衡/不平衡変換器=バランを省略しています)
   1_反射した電力同軸SWR=3
   追記:上図でお気づきかも知れませんが,ANT給電点では進行波電力8.5W 反射波電力2.1WなのでSWR=3ですが,チューナ出力点では進行波電力10Wに対し反射波電力1.8WなのでSWR=2.5となります。
        同軸ケーブル損失があるためチューナ出力点のSWR値はANT給電点より低く表示されます。


次は同軸ケーブルでなく「はしごフィーダ」で給電した場合の図です。 
給電点75ΩのANTへ特性インピーダンス600Ωの「はしごフィーダー」を接続するとSWR=8となります。SWR=8の時,ANT給電点では40%がANTへ進むが、60%は反射されてもどります。
反射された電力はANTチューナー部から再び進行波となってANT側へ進み,また60%が反射される・・・を繰り返します。

「はしごフィーダー」は同軸ケーブルより損失が低く,SWRが高くても損失が増加しないため,送信電力が行ったり来たりしても減衰が少ないため,最終的に90%近くがANTへ送り込まれることになります。
 (SWR=3の同軸ケーブルより,SWR=8の「はしごフィーダー」の方が電波が飛ぶ・・・となります)
   2_反射した電力 ハシゴフィーダ
                        参考:上図の平衡出力ANTチューナー(カップラー)の回路
                      平衡型ANTチューナー

以上は,SWRが高くても損失が大きくならない給電ケーブルを使用すれば送信電力の大部分はANTへ送り込まれるという説明です。
この時の条件としては,送信機出力部と給電ケーブル下端は損失の少ない整合回路(ANTチューナ)で整合できていることです。


次は,SWR値が高いのに送信機出力へ整合回路を設けず同軸ケーブルを接続した時の状態です。
下図のように,ANT給電点が150Ω,送信機までの同軸ケーブル50Ωの長さが1/4波長(または3/4波長)の場合、同軸ケーブルの送信機端 a b のインピーダンスは16.7Ωになります。
SWRによって16.7Ωとなっている状態のケーブルへ出力インピーダンス50Ωの送信機を接続しても同軸ケーブル側へ送信電力が効率よく伝わりません。
        3_SWRが高いケーブルを直接接続する

送信機の電力増幅部の効率は約50%程度です。,残りの50%は熱となります。
上図のように送信電力部へDC13.5V,DC7.5Aの直流電力100Wが加わり,正常動作をしても送信電力となって出力されるのは50~60%の50W~60W程度です。
即ち,残りの50%~40%は送信電力増幅部の半導体の中で熱となります。

出力されるべき約50%の送信電力が同軸ケーブル側へ進まない状態となると、結果的に電力増幅半導体に加わった直流電力100Wのすべてが熱となり、電力増幅半導体が短時間で熱破壊を起こします。

このような半導体故障を防ぐため,送信機の出力部に反射を検知する回路を設け,感知した瞬時に電力増幅半導体の入力信号を低下させ電力増幅半導体に直流電力が加わらないように仕組み(保護機能)を設けています。
この保護機能によって送信電力増幅が大幅に低減するため電波が出ない=飛ばない状態となります。

上図は説明のためにシンプルにしましたが、実際のアンテナのインピダンスはR分とリアクタンス分があります。リアクタンス分はアンテナ長が少し変化しただけで大きく変動します。例えば,7MHz(波長40m)の1/2波長水平ダイポールを1m長くしただけでもSWR値は3をこえる値となります。


以上で理解できたと思いますが、送信機出力部にANTチューナを設置すると,

(1)  同軸ケーブル上にSWRが生じている状態でも,送信機からチューナまではSWRを1に保つことができる。
(2)  送信出力部へ反射電力が戻らないため,送信電力増幅半導体を壊すことが少ない

と言う効果がありますが,これだけでは

 ① チューナからANT給電点までの同軸ケーブル上のSWR値を下げることはできない。
 ② 同軸ケーブルの中で生ずる損失は減らない・・・改善できない)。
 ③ SWRが高いままでは同軸ケーブルから不要輻射が発生する。
 ④ 受信のノイズが増加する。

などの問題は残ったままなので,ANT給電部において同軸ケーブルと整合をとることが大事なのです。



    参考:真空管の時代には出力部に「パイ型整合回路」があり,この操作で整合がとれるため,
         SWRが少し高い場合でも送信電力をANTへ送り込むことができた。

            πマッチ整合回路

言うまでもないことですが、ANTチューナーは高周波損失が少なく,使用電力容量が十分なものでないとチューナー挿入による損失が増加します。太い線による大きなコイル,ギャップが十分なタイトバリコン,接点電流容量の大きい周波数切り替えスイッチを用いる必要があります。
     (周波数切り替え接点を使用しない単一周波数専用のものがベター)

以上,送信機から近い位置へのANTチューナー設置の話をしましたが、下図のように,ANTチューナーをANTと同軸ケーブルの接続部に設置するのがベストです。同軸ケーブルの反射波は最小になりSWR値による損失分が最小となります。
          4_ANT給電点へ整合器
中波ラジオの放送アンテナでは、垂直ANT直下に小屋を設け,大型コイルと金属板を重ね合わせたコンデンサーの整合器を入れています。

このページのまとめ
 (1) SWRの反射波は送信機から連続的に送られてくる進行波エネルギと合成され,
    再びANT側へ進むため反射波の全てが熱損になるとは言えない。
    
 (2) 同軸ケーブルはSWR値が高いとSWR損失分が増加し,ANTへ到達する電力が減少する。
            (同軸の中心導体と外皮の間の充填物を少なくする)

 (3) はしごフィーダーはSWRが高くても1/2波長~1波長の長さで使用するなら,
    損失が少ないためANTへ進む電力は大きく減少しない。
    反射波が熱損となる分が小さいので,フィーダ上を行ったり来たりしながら大部分はANT側へ進む。
         
その他
 はしごフィーダーは損失が少ないと書きましたが、積雪や雨、特に塩分を含む水などが2線の間のセパレーターに付着すると損失が増加します。この損失増加を少なくするためにはセパレータの数を少なくすればよいが,少なくすると2線の間隔を一定にすることが難しくなります。
また, はしごフィーダは2線が大地や建物、鉄柱などから均等な距離を保つように配置する必要があります(平衡度を保つ)。 このため回転機構を有する八木アンテナなどでの使用は難しいでしょう。


はしごフィーダーなど平行フィーダーは数十kWの送信電力を低損失でANTへ給電できるため、ラジオNIKKEI の送信所では現在もアンテナ給電線として使用されています。
ラジオNIKKEI は以前NSB日本短波放送「ラジオたんぱ」で,千葉県長生郡長柄町から出力50 KWで送信されています。

【後日追記】
反射波がフィーダ上をチューナ側へもどると書きましたが,反射波も進行波も同じ周波数(波長)の電気エネルギーに変わりはありません。両者とも1/2波長の間に位相が180度遅れます。
従って,反射波がフィーダ上をもどる段階で,遅れて進んできている進行波との間で、相互の位相が重なる点では電圧が高くなったり、打ち消す点では電圧が低くなったりする合成波エネルギー状態となります(定在波)。
(同一周波数のエネルギー波である反射波が進行波エネルギーと全く合成されない状態・・・定在波状態とならないままチューナまでもどるととは考えられません)。
反射波エネルギーの一部がチューナ側へもどったとしても,送信機から連続的に送られるエネルギーによってチューナの集中定数回路(LとC)へ流れている高周波電流の一部として合成され,合成された状態で再びフィーダ側へ押し出され,ANT給電点方向へ進むと考えます。

従って、このページのような単純計算での数値とならないかも知れません。
言えることは,反射した電力の全てが熱損となることは無く,
フィーダの損失を少なくすれば反射波も再びANT側へ送りこまれると言うことです。



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  1. 2014/12/02(火) 22:13:10|
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