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11.続:アンテナチューナー(オートチューナー)

11.続:アンテナチューナー(ATU:オートアンテナチューナー)
                          パソコン関係は こちら   総目次は こちら
......................カテゴリ「アンテナと整合」の4~10までのページ
...........4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
...........5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)
...........6.SWRの測定と問題点
...........7.SWR計と注意点
...........8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRがさがる
...........9.非同調フィーダーと同調フィーダー
..........10.アンテナチューナー(アンテナ カプラー:空中線整合器)

このページは「10.アンテナチューナー(アンテナ カプラー:空中線整合器)」からの続編です。
前ページで述べたようにアンテナチューナーは,基本的に,コイル1つと,コンデンサー1つで構成できますが,アンテナのインピーダンスが大地や周辺の建造物などの影響で設計値通りとならないことから可変できるコイルとコンデンサー(バリコン)で構成とします。

更に,3.5MHzから28MHzなど異なる帯域の周波数でも整合できるように,スイッチで各周波数帯に合ったコイルに切替えられる回路が組み込まれるため,回路が複雑に見えますが,基本部分は前ページのようにシンプルな回路です。
基本的にはシンプルであることを理解していただくために,複雑そうな「オートアンテナチューナー」の仕組みから説明します。

オートアンテナチューナー(ATU)とは,手動で可変コンデンサー(バリコン)などを動かして整合させるのでなく,モータや電気接点の動作で整合してくれる仕組みのものです。

オートアンテナチューナーは軍用航空機のアンテナ線へ任意の周波数の電波を乗せるために開発されたようです(コリンズ社 180L-2型オートアンテナチューナー)。
アマチュア無線用としては,1983年,TS-930トランシーバーに下図のようなオートアンテナチューナーが内蔵されました。基本的には前ページのT型と同じです。マニュアルチューナーではバリコン(VC)を手で回しますが,これをモータードライブで回転させ,入力側のSWRが1.0となるようチューニングをさせる方式です。
SWRを検出し,モータを素早く回転させ,正確に回転を止める制御をアナログ回路で動かしていました。
          (図はクリックで拡大します)
     1_TS-930のAT

下図は,TS-950トランシーバーに採用されたオートアンテナチューナーです。上図のものと基本的には同じT型チューナーです。違いは,モータードライブ制御をマイコン(CPU)制御に改善しています。CPUのメモリに前回の制御情報を記憶できるため,周波数切替をしても素早くチューニングがとれるようになりました。
          (図はクリックで拡大します)
     2_TS-950のAT

1979年,モトローラー社から業務用オートアンテナチューナー「T-1959A」が発表されました。その基本回路は下図のようなものでした。図のスイッチ部はリレー接点です。リレーのON,OFF動作はマイコン(UPU)で行います。
L2~L10コイルの接点を全て閉じ,左右のコンデンサーの接点をそれぞれ1つ閉じると,下図の「パイ型チューナー」と同じ回路となります。T-1959Aオートアンテナチューナーはバリコン(VC)を回転させるのでなく,容量の異なるコンデンサーを組合わせてバリコンのようにに容量を変化させ,同時にインダクタンスの異なるコイルを組合わせて様々なインピーダンスのアンテナと整合をとることができるのです。9個のコイルだけでも2の9乗=512通りの組合せがとれます。更にコンデンサーの切替も考えると20万通りを超える組合せがとれます。
          (図はクリックで拡大します)
 3_ モトローラーT-1959Aの基本回路
  パイ型チューナー

「T-1959A」が発表された3年後の1982年,アイコムから防水箱に納められた「T-1959A」の方式のオートアンテナチューナー「AH-2」が発表されました。1993年にはJRC社のトランシーバ「JST-245」にオートアンテナチューナーが内蔵されました。下図はJRC社のオートアンテナチューナー「NFG-230」の基本回路です。
     (図はクリックで拡大します)
4_JRC NFG230の基本回路
上図のオートアンテナチューナーには入力側のコンデンサー(VC1側)が6組,出力側のコンデンサー(VC2側)が6組,コイルが10組あります。出力部のコンデンサーCを加えると,これらの組合せは2の23乗=838万通りとなります。この組合せ制御をCPUで実施します。
動作としては,アンテナのインピーダンスが送信機側より低い時は,VC2側のコンデンサーは全てオープンにし,VC1側のコンデンサーとコイルの組合せでチューニング動作をします。
アンテナのインピーダンスが送信機側より高い時は,VC1側を全てオープンにし,VC2とコイルの組合せでチューニング動作をします。
すなわち,L型チューナー(L型整合器)と同じ仕組みでチューニング(整合)をさせているのです。

下図はクラニシ社のマニュアル式アンテナチューナ「NT-535」の基本回路です。基本的には上図のTS-950と同じです(一般的なT型整合回路)。TS-950との違いは,モータードライブか,手で回すかです。コイルのインダクタンスを連続的に変化できる「バリL」の代わりに,コイルから多数の端子を出して,多接点のスイッチでコイルの端子を切り替え,「バリ・エル」に近い機能を持たせている点が特徴ですが,基本的にはT型チューナーそのものです。
          (図はクリックで拡大します)
     5_クラニシNT535
以上,オートチューナーの基本回路を述べた理由は,基本的には一般的なマニュアルチューナと同じあることを理解していただきたかったためです。最初に書いたようにコイル1つと可変コンデンサ(バリコン)が1つあればアンテナとのチューニング(整合)ができるのです。周波数もアンテナも固定の場合はマニュアルチューナーが損失面などで優れています。

オートチューナーとマニュアルチューナのどちらを使用するのが良いかは用途で決まります。
放送局は周波数もアンテナも固定であり,電力も大きいためオートチューナーは使用しません。

オートチューナーは1つのアンテナで任意の周波数の電波を発射する時に便利です。太平洋などを就航する航空機には非常時のために任意の周波数で送受信ができる通信機が搭載されていました。そのような場合は1つのアンテナに短時間で整合できるオートチューナーも搭載されていました。

信頼性の点から比較すると,マニュアルチューナーは構成部品数が少ないため故障率が小さいこと,雷誘導などにも強いと考えられます(単一周波数用としてスイッチ類を使用しなければ故障率は更に小さくなる)。

オートチューナーにはCPUなど高密度部品が数多く使用されています。動作電源も必要です。電解コンデンサーなど経年劣化する部品も含まれています。これらのことから長期間の使用時の故障率はマニュアルチューナより高いでしょう。雷誘導なども弱いと考えてよいでしょう。

接続に当たって,マニュアルチューナーはトランシーバーを選びませんが,オートチューナーはトランシーバーからの制御信号や接続形態がメーカ毎に異なる場合がありますので,その点についても注意が必要です。

特殊な用途ですが,数年間かけて長距離航海をするヨットなどにオートチューナーを使用する場合は,防水に気を配っていても,気温や気圧の変化などで長い航海中にわずかずつ塩分を含む空気がオートチューナの内部へ侵入し,内部のCPU基板が不良になったり,リレー接点に皮膜が生じたりする場合もありますので,シンプルなマニュアルチューナを予備として積載しておくと良いでしょう。

陸上でのモービル運用など,1/4波長より非常に短いアンテナを使用する場合は(例えば,2mの長さのアンテナから7MHzを送信),アンテナの給電インピーダンスが非常に低くなるので,オートチューナーのみで整合させるのは問題が起きそうです。このような短いアンテナへの整合方法は別項で記述します。

次回,続:アンテナチューナ(自作時のコイルの巻き方,バリコンの容量)へと続きます。

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  1. 2012/06/13(水) 15:00:11|
  2. アンテナと整合
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