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2.アンテナ線とインピーダンス

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この項は先の話「1.アンテナ線と共振周波数」の続きです。
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最初から,聞きなれない「インピーダンス」と言う文字がでてきました。
アンテナ線のインピーダンスとは,高周波電力を送り込む側から見たアンテナの負荷抵抗(Ω)です。
(ここでは,給電線の長さは0mとして話します)

次の図2.1は,1/2波長ダイポールアンテナのような中央部から給電する線状のアンテナの図です。
図2.1の左は,1/2波長の長さのアンテナ線の中央部へ給電している状態です。
1/2波長アンテナでは高周波電流の分布が点線のようになり,中央部が電流最大点です。
        ---- 図 2.1 ---   (すべての図はクリックで拡大します)
  中央給電アンテナ

オームの法則により,電力=電流の二乗×抵抗値 ですから,抵抗値は=電力÷電流の二乗です。
アンテナ線に適用すると,
抵抗値(アンテナの入力インピーダンス)= 全放射電力÷中央部の高周波電流の実効値の二乗 です。
図2.1左の1/2波長アンテナの中央部への給電しているアンテナの入力インピーダンスは 73Ωとなります。
図2.1の右の場合は,給電点の高周波電流がゼロに近い部分なので,入力インピーダンス=放射電力÷(ゼロに近い高周波電流の二乗) ・・・・分母がゼロに近いので計算値は数kΩのレベルとなります。

下図2.2はこれらの値を連続的に表示にしたものです。0.5λ(1/2波長)の長さの付近は100Ω以下の値です(赤丸部分)。
1.0λ(1波長)の長さ付近の入力インピーダンスは細い導線の場合は9000Ωほどになります。
7MHz(波長約43m)用として,直径2mmφの導線使用した場合は2000Ω程度となります。
       ---- 図 2.2 ---   (すべての図はクリックで拡大します)
     波長と抵抗

前の項「アンテナ線と共振周波数」において,アンテナ線はLCR共振回路の性質をもっていると説明しました。
このため,アンテナ線を給電点からみると,Lの成分,Cの成分を含んだ状態に見えます。
このLとCの成分を総称してリアクタンスと言います。
Lの成分が表れている状態をインダクティブと言い,+記号を付加して表示します。
Cの成分が表れている状態をキャパシティブと言い,-記号を付加して表示します。
下図2.3は,中央部から給電するアンテナ線のリアクタンス成分の変化です。
アンテナ導線の長さが0.5λ(1/2波長)の点と,1.0λ(1波長)の点ではリアクタンス分が打ち消しあって±ゼロになります。
       ---- 図 2.3 ---   (すべての図はクリックで拡大します)
     波長とリアクタンス

上図2.3の0.5λ=1/2波長の付近(赤丸)を拡大すると下図2.4のようになります。
図2,4の実線Rは0.5λ付近のアンテナの抵抗分の変化の拡大図です。
点線は0.5λ付近のリアクタンス分の変化の拡大図です。
          ---- 図 2.4 ---   (すべての図はクリックで拡大します)
     ダイポールANTインピーダンス

上図2.4の横軸0.5λ(1/2波長)の目盛の上の,曲線Rとの交点(上緑丸)で左目盛を見るとアンテナの入力抵抗値が約 73Ωと読めます。
点線のカーブとの交点(下緑丸)でアンテナのリアクタンス成分が約+42Ωと読めます。
これらより0.5λ(1/2波長)アンテナの中央部給電の入力インピーダンスは 約 73+j 42となります。

アンテナ線の長さを0.5λ×0.95の0.48λ付近へ短くすると,リアクタンスの曲線が±ゼロ(赤線)と交差します。
即ち,算術での1/2波長の長さより約5%短くするとリアクタンス成分がゼロとなります(共振状態となる)。

この図にも表示されているように,導体としてパイプを用いるなど波長に比べてアンテナ線の直径が大きくなる,即ち,λ(波長)/d(導体直径)の値が小さくなる144MHz帯,435MHz帯のアンテナの場合,共振点は更にアンテナを短くした点となります。
(上図で言えるもう一つのポイントは,周波数(波長)がわずか±3%ずれただけで,リアクタンス分が約±50~60Ωと生ずる点です=この点は後で述べるアンテナと給電線の接続で見落としてはいけない事項となります)

ここまでの まとめ
  (1) 1/2波長(0.5λ)アンテナの中央部の入力インピーダンスは約73Ω+j 42Ωとなる。
  (2) この長さ×0.95のアンテナ長にすると,入力インピーダンスはリアクタンス分の無い約70Ωとなる。
  (3) アンテナ長が波長から,わずかずれただけで,リアクタンス分が生ずる。
  (4) 1波長アンテナの中央給電の入力インピーダンスは非常に高い値となる。
    即ち,1/2波長アンテナの右または左端から給電する場合の入力インピーダンスは非常に高くなる。

1/2波長(0.5λ)アンテナの給電は(2)のポイントで行うのが一般的です。
1/2波長(0.5λ)アンテナを中央部から給電せず,片端から給電する手法をツエッペリン型給電と言います(飛行船ツエッペリンで使用されたアンテナ)。

1/2波長アンテナの中央部給電の入力インピーダンスを約73Ωと述べましたが,この値は理論値であって,実際は,アンテナの地上高によって変化します。
下図2.5は1/2波長アンテナのインピーダンスが地上高でどのように変化するかを示したものです。
          ---- 図 2.5 ---   (すべての図はクリックで拡大します)
     地上高とインピーダンス
まとめのまとめ
1/2波長水平アンテナの中央給電インピーダンスは,大地からの高さで変化する。
高さ1.3波長以上にすればインピーダンスは70~80Ωと理論値に近くなる。
高さが1波長より低い場合は建ててみないと判らない。1波長の高さとは7MHzの場合40mもの高さです。7MHz1/2波長水平ダイポールアンテナを高さ12m程度にした場合はインピーダンスが90Ω近くになっているかもですね。

更に加えて,アンテナ線が付近の電力線や建物から十分に離れていな場合は,それらからの影響を受けて入力インピーダンスは変化します。
また,下図2.6のように,アンテナ線が左右に180度の角度でなく,両端が中央部より高くなったり,両端が低くなったりするとアンテナの入力インピーダンスは低くなります。
             ---- 図 2.6 ---   (すべての図はクリックで拡大します)
     逆V型
…このようなものですから,1/2波長水平アンテナ(1/2波長水平ダイポール)の中央給電に75Ωの同軸ケーブルを使えばピッタリだとは言えないのです。十分な高さにあげられないアマチュア無線アンテナの場合,アンテナ線の両端に調整用の短い電線を付加し,その部分のカットアンドトライで調整します。
この辺は,次の3章以降で説明します。

【追記:垂直接地アンテナとインピーダンス】
あとのページで,垂直設置アンテナの話が出てきますので,垂直接地アンテナとインピーダンスを示すグラフを添付します。
垂直接地アンテナとは,下図2.7のように大地の上に垂直にアンテナを建てた構造のものです。
1/2波長ダイポールアンテナの半分が大地より上にあり,半分が大地の中にあるような動作をします。
給電点の入力インピーダンスは1/2波長水平ダイポールアンテナの値73Ωの1/2=36Ωとなります。
          ---図2.7---   (すべての図はクリックで拡大します)
          垂直接地アンテナ

下図2.8は,垂直接地アンテナの長さと入力抵抗(インピーダンス実数部)の変化を示したものです。
長さが1/4波長の時に36Ωとなります(実際は短縮率があるので1/4波長より若干短い点で36Ωとなる)。
長さが1/2波長の場合,入力インピーダンスは急激に高くなります。
図のKaはアンテナ線の長さに対する線の太さで算出した数値です。細い線の場合Kaの値は大きくなります。
          ---図2.8---   (すべての図はクリックで拡大します)
     垂直ANTの長さとインピーダンス(実数部)

下図2.9は,垂直接地アンテナの長さとリアクタンスの値を示したものです。
長さが1/4波長の整数倍の時にリアクタンスは「ゼロ」となります(実際は短縮率があるので若干短い点となる)。
この長さから少しでもずれるとリアクタンスの値が急激に増加します。
Kaはアンテナ線の長さに対する線の太さで算出した数値です。
細い線の場合Kaの値は大きくなり,リアクタンスの変化が急激になります。
     ---図2.9---   (すべての図はクリックで拡大します)
     垂直接地ANTとリアクタンスの変化

以上のような 1/4波長の垂直アンテナ:給電インピーダンス36Ωへ特性インピーダンス50Ωの同軸ケーブルを接続する時は,インピダンス整合回路を使用します。
整合回路については,後の「25.垂直接地アンテナと同軸ケーブルの整合」のページで説明します。


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  1. 2011/12/30(金) 22:44:22|
  2. アンテナと整合
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