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ローコスト(500円)で簡単に自作できるヨット用21MHzアンテナチューナー

ローコスト(500円)で簡単に自作できるヨット用21MHzアンテナチューナー
          言うまでもなく自動車ANT用,自宅ANT用としても使用できます。
       Low-cost, Low loss , homemade easily Antenna Tuner / Antenna Coupler

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このページは目次の,
    A14.長距離航海ヨットの通信用アンテナ ⇒ こちら
    A15.続:長距離航海ヨットの通信アンテナ(アンテナ給電線とアース配線)  ⇒ こちら
    A16.続2:長距離航海ヨットの通信アンテナ (バックステーアンテナの盲点)  ⇒ こちら

 の続編です。

前ページで外洋ヨットのための垂直接地アンテナの設置方法を紹介しました。
                   前ページへもどるは ⇒ こちら

このページではローコストで簡単に作れてメーカ製のアンテナチューナより損失が少なく,故障の心配が少ないアンテナチューナ(整合器)の作り方を紹介します(電気的性能はメーカ製に劣りません)。

本論に入る前にアンテナチューナの機能がわからない方への説明です。
        (お急ぎの方は「本題はここから」へ進んでください)
アンテナチューナとは,アンテナの電気的な状態(インピーダンス)と同軸ケーブルの特性値(50Ω)をマッチング(整合)させるための回路です。
昔は「空中線整合器」とか,アンテナカップラーと言われましたが、最近はアンテナチューナーと言われています。

マッチング回路は,アンテナ給電部のリアクタンス±jX 分を打消すとともに,ANT放射抵抗RLを同軸ケーブルの特性(50Ω)に変換する回路です。
この変換回路は,送信周波数,アンテナの長さと設置状態が決まれば,1つのコイルL と 1つのコンデンサーCで作ることができます。
市販のアンテナチューナは,アンテナの長さや設置状態が異なった場合でも整合できるようにコイルLの値と,コンデンサーの値を変化させる機構となっています。
コイルの値は,コイルのタップをロータリースイッチで切替え,コンデンサーの値はバリコンを回転させて変化させます。
   下はメーカ製マニュアルチューナーの整合部です。 (全ての写真と図はクリックで拡大します)
     5_マニュアルチューナの整合部

     下図は上のマニュアルチューナーの回路図です。

   マニュアルカップラ回路図
写真のように,高耐圧のバリコンとロータリースイッチ,ステアタイト巻きのコイル,バリコン連動用の機構が使われています。
オートANTチューナは リレー接点を使ってコイルの端子や,コンデンサーを切替えて整合させる仕組みです。
オートANTチューナは電子回路の集まりなので,わずかでも水分が侵入すると故障します。故障したら最寄りの港で修理できる代物ではありません。


本題はここからです。
故障率は部品数に比例します。部品数が少なければ故障率は小さくなります。
損失は部品数が少ないほど小さくなります。(部品の品質・作り方にも関係します)。
1つのアンテナを使って,1つの周波数帯で送受信する場合は,アンテナとの整合を変更する必要が無いのでバリコンやスイッチを操作することがありません。

バンド切替にロータリースイッチを使用すると,経年変化で接触不良が起きる場合があります。
また,インピーダンスの低いANTへ接続すると高周波電流によるスイッチ接点の焼損も起きやすくなります。
バリコンは,ローター軸の接触バネ板部が劣化し接触抵抗が増加する虞があります。

これらから周波数とアンテナが決まれば,スイッチやバリコンを使用しない方が信頼性の点からベターです。
放送用アンテナの直下にある同調小屋(整合器の部屋)にはバンド切替のスイッチや回転式のバリコンは見られません。

オートアンテナチューナはロータリースイッチの代わりにリレー接点を、バリコンの代わりにリレー接点でコンデンサーの開閉をする機構のものがあり,接点の経年変化には注意が必要です。

上の写真のメーカ製のアンテナチューナーの回路からバンド切替接点などを取り除くと、次のような回路になります。
     1970年のARRL QST誌の ウルチメイト トランスマッチ Ultimate Transmatch ⇒ こちら  と同じです。
          FC107基本回路
インピーダンスの低いアンテナから高いアンテナまでチューニング(整合)できるように入力側にVC1・VC2の連動バリコンを,出力側にVC3バリコンを使用していますが,ANTが1つなら送信周波数におけるインピーダンスも1つなので,整合は次の基本回路となります。
         ANT側のZLで回路が逆になる

上のマッチング(整合)回路では,コイルLが1つ、コンデンサーCが1つと非常にシンプルですが,LとCをピッタリな値にすると,電気的性能は高価なマニュアルアンテナチューナー,オートアンテナチューナーより優れています。
下図は前ページで説明した1/4波長垂直接地アンテナとマッチング回路です。
          前ページの説明へもどるは ⇒ こちら 

     21MHz 0.5λの整合回路

上図のマッチング回路のコンデンサー92pFは計算値なので,実際には92pF±15%程度の調整が必要な場合があります。
そのため,コンデンサーとしては容量が可変できるバリコンを使用するのが簡便ですが、今回は同軸ケーブルの中心導体と外被導体の容量を利用してコンデンサーとしました。
下の写真が「500円 アンテナチューナー」です。
「エ~こんなチャチなもので良いの~」と言われそうですが,SSB送信電力100W程度でしたらマッチング性能は最初の写真のメーカ製に負けません(もう少しコイルの心線を大きくすると良いですね)。
          Low-cost, Low loss , homemade easily Antenna Tuner
     1_コンデンサを同軸で
コイル0.16μHの巻き方は前ぺーへ戻ってください。前ページへもどるは ⇒ こちら
同軸ケーブルの静電容量は5D2V、3D2Vなどは1mあたり100pFです。
従ってコンデンサー92pFの代わりに使用する同軸ケーブルの長さは計算上では92cmとなりますが、実際のANTインピーダンスが35Ω±0から若干ずれている場合があるので,92cmより20cmほど長くしておき,SWR計を見ながら先端を2cm程度ずつ切り落とします。
切落しすぎた時は,10cm程度の5D2Vを並列に接続し,再び切落し調整をします。

下図は容量調整用の同軸ケーブルの先端部です。外被導体を2~3mm短くして中心導体との絶縁距離を作っておきます。
この部分は最終的にテープを巻いて防水します。
このアンテナチューナーはSSB送信電力100Wでも支障なく使用できます。コイル線を1.4mmφにすると200Wでも大丈夫です。
          2_同軸Cの先端

アンテナ線とアース線の先端は、ケースに入れてから圧着端子を取り付けます。
アンテナからの線にも圧着端子を取り付け,ボルトとナットで接続し,接続部に自己融着テープを巻いて防水します
ヨットの場合,塩分を含んだ水分が付着する虞があるので,同軸コネクターによる接続より確実です。
(下の写真の右はバリコンです。バリコンは使用しませんが、一緒に写真を撮りました)
     3_ANT線もアース線も下に

作製した21MHzアンテナチューナ(マッチング回路)をプラスチックのケースに入れました(お弁当の惣菜入れかな?)。
水滴の侵入を防ぐため,同軸ケーブル,アンテナ線,アース線をケースの下部側に引き出します。
下の写真は完成した「500円 アンテナチューナー」です。
     4_防水ケースに入れる
下の写真は蓋をしたところです。
惣菜の汁がこぼれないようにキッチリと閉まるので防水は期待できます。
線を引出した穴の周辺をコーキングすれば防水は完全です。
     5_フタをしたところ

500円で作る21MHzアンテナチューナの話は以上です。
部品代として最も高価なのは食品用プラケースでした。ラグ板は150円です。92cmの同軸ケーブルは切落し品を利用したので合計の部品代は350円で完成しました(コイル線を1.4~1.6mmφにすると見栄えが良くなります。コイル線として同軸5D2Vケーブルの中心導体を利用してもOK。その場合は完成後に銅線に薄く油脂を塗って錆び止をします)。
予算に余裕のある方は,IP65規格の防水ケースに入れると良いでしょう。
また,ラグ板はベーク製でなく,FRP板で自作すると良いでしょう。

このページの頭の写真のメーカ製アンテナチューナと比較したところ,損失はメーカ製より少なく優れた性能でした。
(コイルをロータリースイッチで短絡する方式はコイルのQが低下するため,専用のコイルを使用した場合に比べ損失が増えます。)

今回作成したアンテナチューナは21MHz垂直アンテナ(長さ3.40m)用です。
(長さはANT先端からマッチング回路のコイルまでです)。
下図はアンテナの長さとインピーダンス、更に、コイルLとコンデンサCの値の表です。
   10_整合回路のLとCの値
アンテナ線の長さが2.8mの場合(先端からマッチング回路まで)は,上表よりインピーダンス Z=20.3-j124 となります。
この時のマッチング回路のコイルLは1.1μH,コンデンサーは181pFです。
コンデンサーとして同軸ケーブルを利用する場合は,1mの同軸を2本並列して接続し,そのうちの1本の長さを少しずつ切落して81cm付近にすると合計で181pFとなりSWRが下がる(マッチングがとれる)でしょう。
コイル1.1μHの巻き方と値の調べ方は前ページ を参考にしてください。
前ページ「コイルの巻き方とインダクタンス」は ⇒ こちら
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以下は、参考です。

次は食品が入っていたガラスの空きビンへいれた写真です。
防水がしっかりできる,内部が見えるメリットはありますが,蓋の金属が錆びそうです。
     4_防水ケースの例

次は,モービルANT用に作成したものです。800V耐圧のバリコンですがSSB送信電力100W程度まで使用できます。
     11マニュアルカップラ自作機

バリコンを使用して作成した場合は,次の写真のように防水ケースに入れます。
     13_防水箱に入れた
つぎの写真は防水用に使用できる「電気配線用プルボックス」です。
お惣菜を入れるプラケースより丈夫です。
水滴の侵入を防ぐため,不要な穴をあけないようにします。
     12_電気配線防水箱



外洋ヨット用21MHzアンテナと簡易なマッチング方法へもどるは ⇒ こちら

コイルの巻き方とインダクタンスを調べるは ⇒ こちら

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  1. 2015/05/26(火) 15:50:45|
  2. 長距離航海ヨットの通信用アンテナ
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外洋ヨット用21MHzアンテナと簡易なマッチング方法

外洋ヨット用21MHzアンテナと簡易なマッチング方法
   (簡易に見えるマッチングですが,挿入損失はオートチューナより少なく,かつ,故障の心配がありません)

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 の続編です。


下図は垂直接地アンテナ(ANT)の基本図です。
ANT線はコイルとコンデンサの性質があるので給電点のインピーダンスはANTの長さや周波数で変化します。
インピーダンスは R±j X の形で表します。  (Rは位相に関係しない値,j X は位相に関係する値)
    01_垂直ANTの長さとインピーダンス

ANT線の長さが21.2MHzの1/4波長(3.538m)の時,給電点のインピーダンス は下表①の値 Z= 39+j 22 になります。
上図のように給電点に特性インピーダンスが50Ωの同軸ケーブルを接続すると,リアクタンス分(+j 22)があるためSWR:は1.7となります。
1/4波長より約3%短くすると,給電点の Z は下表②の値になり,リアクタンス分が±0となります。この状態を「アンテナが共振している」と言います。
  …ですが,Rが36Ωなので50Ωの同軸ケーブルを基準にするとSWRは1.4となります。
逆に1/4波長より約7%長くすると, Z は下表③の値となり,R分が50Ωとなりますが,リアクタンス分が+j74 となるので,SWRは4.0となります。
   01_垂直ANT21のインピーダンス

いずれの場合も給電点にマニュアルアンテナチューナまたはオートアンテナチューナを取付ければ50Ω同軸ケーブルとマッチング(整合)がとれます。
・・・ですがオートアンテナチューナは複数の周波数帯でマッチング(整合)できるようにコイルやコンデンサを切替える接点や制御用のIC回路が高密度に実装されているため,塩分・湿度・結露・雷誘導に弱く,故障したら容易に修理できません。

ANTと同軸のマッチング(整合)は,基本的にコイル1個とコンデンサ1個で完全整合できます。
ここで紹介する方法はシンプルですが理論に沿った整合方法なのでオートアンテナチューナの性能より劣ることはありません。
部品が少ないため故障が起きににくく,コストも安価で済みます。
 (この手法は身近で安価な部品の組み合わせでできるので電子部品の入手が難しい海外の港でも作製や修復ができるでしょう)
では,ヨットの遠距離通信用21MHzANTを例に具体的な話に入ります。

 :アンテナ線の長さを周波数に共振させて使用する方法】
  ヨットとの通信が行われているOkera-Net(21.437MHz),Seagull-Net(21,382MHz)を考え,中心周波数を21.4 Mhzとすると 1/4波長は3.51mです。
ANT線の長さを1/4波長に短縮率0.97を乗じた長さ3.40mにすると,共振状態となり給電点のインピーダンスが36Ω±j 0 となりまります(上表は21.2MHzなので21.4MHzでは若干短くなる)

ANTのインピダンス36Ωを50Ω同軸ケーブルとマッチング(整合)させるためコイルとコンデンサを使用します(下図)。
   1_ヨット垂直ANT接続(36Ω)2


 :アンテナ線の長さを1/4波長×1.07 で使用する方法】
  この方法は上表の③の状態の使用方法です。
給電点のインピーダンス Z=50+j74 のリアクタンス分 +j 74 を打消してやればよいのです(下図は21.4MHzで計算したので+j78 となっています)。
+j 78 を打消すには -j 78 を直列に挿入すことででOKです( Z=50+j 78 -j 78  ⇒ 50±j0 となる)。
リアクタンス-j 78 を周波数21.4MHzにおけるコンデンサの値に計算すると96pFとなります。
具体的には下図のようにANT給電点と同軸ケーブルの間に96pFのコンデンサーを1個直列に入れるだけでマッチング(整合)できます。
コンデンサー1つの最も簡易なアンテナチューナ(Ultimate Simple Antenna tuner)です。
 (ANT線のみでは共振していないが,直列コンデンサを含めて共振状態になったのです)
   2_ヨット垂直ANT接続(Cのみ)2


ヨットでの具体例: コンデンサ1個でマッチングさせる時の接続,アース配線】
  上図の方法2でヨットANTを作ると,下図のようになります。
ポイントは,
  (1) 垂直ANT部の長さを3.77mにする(3.87mで作り調整しながら長さを切り詰める)。
  (2) ANT線はグラスファイバー釣竿に通線がベスト,通線できない場合は竿の外側でもOK。
           (最適な通信用FRPロッドは ⇒ こちら)
  (3) ANT下部は金属パイプと平行させない(させる場合は平行部分を短くする)。
  (4)  アース配線を太い電線で短く配線する(パルピット裏ナットに締付け,船内をバウまで配線する)。
                      (パルピット裏配線は1.4mmφのステンレス線でOK)
  (5) 船底内側に1平方メートル以上の金属板を張り,アースとする。
                      (海水との間に大きな容量ができ良いアースとなる)。
  (6) 同軸ケーブルは,4.70m,9.39m,14.09mの長さで使用するのがベター。(理由は文末参照)

   3_ANTから送受信機への接続図2
  上図のANT取付用のFRPパイプは,外径48mmの塩ビパイプ(PVC)に包帯を巻くようにガラスマットを巻きFRP樹脂でコーティングする。これを2回実施して強度を高める。


下図は上図のANT下部の「接続箱」の部分です。
ANT線と同軸ケーブル中心導体との間に挿入するコンデンサとしては耐圧1kv150pFのバリコンがあれば調整が容易ですが,防水が心配なので下図右のセラミックコンデンサを使用するのが安価で防水も容易です。
下の右写真のセラミックコンデンサは右から100pF/3kv,47pF/3kv,33pF/3kvです。
47pFと33pFを並列にすると80pF/3kvになります。
コンデンサーは(1.0 1.2 1.5  1.8  2.2  2.7 3.3 3.9 4.7 5.6 6.8 8.2 )×10・・・の数値のステップで作らているので, 68pFと27pFを並列にするか,56pFと39pFを並列にすると約96pFとなります。

(送信電力が50W以上の場合は,22pF3個+33pF1個と 計4個など並列にするなるコンデンサの数を増やして,1つのコンデンサを通過する高周波電力を分散させます)

価格は1つ110円でした。1円玉より小さいので防水箱は簡単です。同軸ケーブルの中に水が入らぬように「エフコテープ」などでしっかり防水します。
     4_3.77mANTの接続部25_DSC01319.jpg


防水が完全ならコンデンサとしてバリコンを使用すると調整が楽です。
バリコン=バリアブルコンデンサは回転羽を回転させることで連続的にコンデンサ容量を変更できます。
下の写真の小さなものは50pF/500v,100pF/500v,大きなものは200pF/1kvです。
ヨットでも船内にマッチング(整合)箱を取り付ける場合はバリコンを使用しても良いですが,上の図3のように船外でマッチングさせる場合はセラミックコンデンサを複数並列にして使用する方法がベターです。
(セラミックコンデンサの利用でバリコンより性能が低下することはありません。)
     6_DSC01321.jpg
以上の説明で省略しましたが,マッチング(整合)が完全にできているか否かはマッチング部の同軸ケーブル接続部(図1,図2のb点)へSWR計を挿入して調べるのが原則ですが,作業がしにくいので,トランシーバ出力部と同軸ケーブルの間にSWR計を入れて調べます(図1,図2のa点)。
  (トランシーバにSWR計測機能があれば,それで計測します)
この時,同軸ケーブルを任意の長さで使用すると,給電点のマッチング(整合)状態を調べることができません。
給電点の状態を送信機出力部に挿入したSWR計で調べるためには,同軸ケーブルの長さを (1/2波長×短縮率)×整数 の長さで使用する必要があるのです。
21.4MHzの場合は,図1,図2に記入したように5D2Vなら 4.70m,9.39m,14.09m の状態で使用します。
     次の写真はSWR計の例です(古いものです)。
          アナログSWR計の例
     次の写真はトランシーバ内臓のSWR計です。送信出力100W目盛まで点灯していますが,SWRの値は1 と非常に良好なマッチング状態を示してます。
          トランシーバのSWR計 


【参考1】 共振状態のANT線(1/4波長×0.97)の場合のマッチング方法
  このページの最初の表で,1/4波長×0.97の長さにするとアンテナ線が共振状態となり,リアクタンス分の無い36Ωとなると説明しました。
この状態でSWRは1.4 なので,5D2V同軸ケーブルの長さを 4.70 m,9.39 m,14.09 m にして使用すれば,トランシーバ出力部のSWRも1.4 となるので,給電点にマッチング回路を挿入しなくてもトランシーバからの送信電力の大部分は同軸ケーブルに送り込まれ,給電部からANT線へ流れ込み電波として放射されます。
・・・ですが,金属のバックステーワイヤが近いことなどから,計算の通り 3.40 m でZ=36Ω±0Ωとなるとは言えません。

そこで,36Ωと50Ωの同軸ケーブルのマッチング(整合)を計算してみた結果,次のようになりました。
        整合回路LとCの値2
コイルが 163.6nH (0.16μH)と小さな値です。
コイルのインダクタンスはコイルの直径・巻き数・コイルの長さで変化します。下表は,直径20mmでの巻き数・コイル長で計算した一例です。
巻き数3回,コイル長15 mm、または巻き数4回コイル長 33 mmで約0.16μHとなります。
実際は,単三乾電池に銅線を4回巻いてコイル作り,調整時に長さを25mm~33mm伸ばして良好なマッチング状態となれば良いのです。
        コイル図2
下の写真は単三電池に巻いて作成したコイルです。右は引き伸ばしてコイル長を3cmにしたものです。このようにして,コイルのインダクタンスを変化させます。
   整合用コイル1_DSC01326   整合用コイル2_DSC01

並列となるコンデンサC:92pFですが,前述のようにセラミックコンデンサを2~4個並列にして作ることもできますが,次のように同軸ケーブルの中心導体と外部導体の容量をコンデンサーとして利用する方法があります。
同軸ケーブル 3D2V, 5D2V, 8D2V の静電容量は1m当り100pFです。
下図のように長さ1m程度の同軸ケーブル5D2Vを取り付けて,同軸ケーブルの長さを少しずつ切ってゆくと92cmあたりで整合できるでしょう。(切り口はオープンでOKですが,水が入らぬようにします)
       同軸でコンデンサを代用2
次の写真は実際に作成したものです。コイルの巻き数が3回で整合できました。
          (クリックで拡大します)。
       1_バリコンを同軸で

35cmの同軸ケーブルを3本作り並列にして,その中の1本を少しずつ切って92pFとしても良いでしょう。
(3C2V, 5C2V, 7C2V を使用する場合 は1mあたり67pFなので長くなります。)

コンデンサの代用として同軸ケーブルを使用するマッチング方法はセラミックコンデンサが入手できなくても作成できるので最も簡便な方法と言えます。5D2Vを使用すれば送信電力100W程度でも使用できます。


以上はアンテナの付近に金属物が無いとして算出された計算値を用いての設計です。
ヨットでは,バックステーやトッピングワイヤなど様々な金属線がANTから近い位置にあるので,計算の通りとはなりません。
このためANTの長さは±10%変化させてみる必要があるかもしれません。マッチング用のコンデンサの容量やコイルのインダクタンスも±30%変化させる必要があるかもしれません。
それを考えると,調整時にはコンデンサ容量が変更できるバリコンを使用し,マッチング状態のバリコンの角度を調べて,その容量に相当するセラミックコンデンサへ取り替えると良いでしょう。
書き遅れましたが,これらの調整はヨットが海面に浮かんでいる状態で行います。また他のヨットと近接していない場所で行います。

【参考2】 7MHz,14MHz,18MHzにおける 1/4波長垂直ANTの長さとインピダンス
     長さとインピーダンス
上表はアンテナ線の直径2mmで計算したものです。ANTの短縮率が周波数が高くなるにつれて変化するのは波長に対するANT線の直径率が変化するためです。ANTをパイプにすると短縮率が0.95以下になります。


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  1. 2015/04/13(月) 16:15:20|
  2. 長距離航海ヨットの通信用アンテナ
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続2:長距離航海ヨットの通信アンテナ(バックステーアンテナの盲点)

続2:長距離外洋航海ヨットの短波通信アンテナ (バックステーアンテナの盲点? ・・・まとめ)
     The communications antenna of a long voyage sailboat.
    外洋ヨットの通信アンテナ(14,18,21MHzアンテナ)とチューナーとアース設計
    (外洋ヨットのHF通信アンテナ_アマチュア無線アンテナ その3・・・まとめ)

    
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     前ページ「続:長距離外洋航海ヨットのHF通信アンテナ_アマチュア無線ANT」の続きです。

【バックステー利用のアンテナは遠距離通信に向かない?】
 バックステーにインシュレーターを挿入して通信用アンテナとしているヨットを多く見かけます。
バックステーをアンテナに利用すれば,スマートで通信用アンテナとしても電波が受信でき,効率よく電波が飛びそうに見えます。なのに,それらのヨットの方から「思ったように遠距離との通信ができない」と言う話を聞いたことはありませんか?

バックステーのマストトップ側から1~1.5mの位置にインシュレータ-を挿入し,スターン側からも1~1.5m付近にインシュレーターを挿入して,その間を通信用アンテナとすればOK,アンテナとなる区間は長いほうが良い…などと単純に考えている人がいるのではと懸念します。
(艤装をする人が通信アンテナの技術を理解していないかも…)

アンテナ線を垂直にして使用する垂直接地アンテナは「長過ぎると良くない」ことをご存知でしょうか?
「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言いますが,垂直接地ANTの場合は「過ぎたるは及ばないどころか,遠距離へ電波が飛ばなくなる」のです。

長さが1/4波長の垂直接地ANTの基本動作図は次の通りです。(図はクリックで拡大します)

          垂直接地アンテナ

バックステーアンテナも「垂直接地ANT」です。
下図は,垂直アンテナの長さが変化した時の電波の輻射角度,受信点における電界強度を示したものです。図のλとは,通信周波数の波長です。数値は送信アンテナから輻射電力1KWを輻射し,1マイル(1.6㎞)先における電界強度の値です。(図はクリックで拡大します)
     打上げ角度1
     打上げ角度2

波長λは光速度÷周波数です。周波数が21.3MHzの場合,波長は30万km÷21.3MHz=14.08mとなります。
上図①のλ/12の垂直アンテナは14.08÷12=1.17mです。図②は2.35mです。図③のλ/4は3.52mです。図⑤はλ=1波長=7mです。
図①→②→③→④→⑤→図⑥と垂直アンテナを長くすると水平線の方向への電波の輻射が強くなります(電界強度の数値が増加します)。
ところが,図⑥より長くすると水平線方向への電波の輻射が減少し,上空48度方向への輻射が増加します(図⑦)。更に垂直アンテナを長くすると電波が上空54度方向への輻射となります(図⑧)。

遠距離通信には,水平線方向の輻射電波が必要なのに,アンテナ線を図⑥5/8波長より長くすると図⑦,図⑧のように電波の打上げ角度が高くなってしまうのです。(高く打上げられた電波は電離層で反射しないので遠方へ電波が届かないし,遠方からの電波も受信できなくなります)。

上記でお解りと思いますが,21MHz周波数で通信をする場合,バックステーのアンテナ部分は図⑥に相当する8.8mより短い状態で使用するのが効率的となります。それを知らず「長いアンテナは短いものより良い」などと安易な考えでは電波が遠距離へ飛ばないのです(遠距離からの電波も受信できない)。

8.8m分をアンテナとして使用すると,上側のインシュレーターの挿入位置がバックステーの中央部に近づく場合があります。バックステーの中央付近にインシュレーターが存在すると,その重さでバックステーに大きな揺れが発生する場合があります。揺れはバックステーや取付金具類の金属疲労をおこす虞があるので好ましいことではありません。

バックステーANTが思ったより遠距離へ電波が飛ばない もう一つの原因に,アンテナとなる部分が金属線のトッピングワイヤ(Topping Lift)と平行で,かつ近すぎる点です。
近すぎる場合は,トッピングワイヤ-に,3~5m毎に小型インシュレータを挿入して送信電流が誘導されないにすれば解決します…… ですが,あれこれ細工をしすぎると艤装の信頼性を低下させる虞があるので考え物です。
ここまでの話を図にすると次のようになります。(図はクリックで拡大します)
9_バックステーアンテナ58波長

く釈迦に説法ですが,ヨットは通信アンテナが重要ではなく,ステーなど艤装の信頼性が最優先です。
上記の「垂直アンテナ長と電界強度」の図で明らかなように21MHz用の垂直アンテナは1/5波長~1/4波長=2.8~3.5mあれば性能的に十分なのですから,バックステーを長々と使ったアンテナでなく,船尾へ2.8~3.5mのグラスロッドアンテナを建てる方法がステーなど重要な艤装に影響を与えないのでベストです。
グラスロッドの長さが4mあれば,21MHzでは1/4波長+0.5m,18MHzでは約1/4波長,14MHzでは約1/6波長となり,それらの周波数で効率よく電波を輻射する垂直アンテナとなります。

長さが4mの垂直アンテナを用いて7MHzの電波を送信することができますが,7MHzでは4mは1/10波長なるので,アンテナ給電点の値(インピーダンス)が非常に低くなり,送信電力をアンテナへ送込む部分のマッチング(整合)が難しくなります(例え話ですが,直径50mmの管の流れを直径1mmの管へ流し込むようなものです)。

注1
図③1/4波長送信ANTからの電界強度196mV/m,図①1/12波長ANTからは186mV/mと大きな差が無いととれますが,図の電界強度は,送信電力が損失無く完全に放射電力となった場合の値であって,実際は1/12波長ANTへ送信電力を送込む部分で大きな損失が生ずるので,短いANTからの輻射電波は小さくなります。

注2
1/10波長など極端に短いアンテナでは入力インインピーダンスの実数分が非常に小さくなるため整合器(アンテナチューナー)内部で大きな高周波電流が生じます。オートチューナの場合は増加した高周波電流によって内部のコイルや接点の焼損が発生することがあります。
   垂直接地アンテナ線の長さとインピーダンスの値は→こちらの(図2.7,図2.8,図2.9)をご覧ください。

以上のことから,遠距離通信アンテナは,スターン(船尾)に3~4mのグラスロッドアンテナを建てて使用するのがベストと言えます。

以上は,2000kmより遠い距離との通信を想定しての話です。遠距離通信の周波数として21MHzをとり上げた理由は,
(1) 少ない送信電力で遠距離へ電波が届く。
(2) ヨットからの電波を受信・中継してくれるアマチュア無線局が多い。
(3) 受信してくれる陸上無線局は大型アンテナを設置していて弱い電波も受信してくれる。
(4) ヨットからの通信を優先的に支援してくれるマリンネット体制がある。
   (日本では,オケラネット,シーガルネットなど,海外にも支援ネットがある)。
   (日本に近すぎる場合は,逆に遠方のハワイやオーストラリアの無線局が中継してくれる)
などです。

日本沿岸を中心に航海するのなら7MHzを使用する方法があります。電波を反射する電離層は季節や時間帯で変動しますが,7MHzは変動が少なくいため,100km~800㎞程度の中距離通信は7MHzの周波数を使用すれば年間を通して安定して通信ができます。7MHzの5/8波長は26mですからバックステーを長く使ったアンテナでも長すぎることにはなりません。

これらのことから,オケラ5世の航海では,100Km程度を併走するレース参加艇とはバックステーアンテナを使用して7MHzで通信を行い,日本など遠距離との通信はスターンに建てた3.5mのグラスロッドアンテナを使用しました。

下の写真の右上にバックステーに挿入したインシュレーターが見えます。船尾の「日の丸」の上の白いロッドが21MHzアンテナ(3.5m)です。この21MHzアンテナで南大西洋や南インド洋から日本への通信ができました。
          (写真はクリックで拡大します)
オケラ5シドニ沖



【…まとめ…】
(1) バックステーアンテナは長すぎると電波が遠距離へ飛ばない。
(2) ヨットの場合,遠距離通信アンテナとしては船尾へのグラスロッド(3~4m)がベター。
         1/4波長などに合った長さでなくてもOK。
          ANTとして利用できる通信用FRPロッドは ⇒ こちら
          ANTとして利用できる曳き縄用FRP竿は ⇒ こちら

(3) 7MHzなどを利用しての中距離通信が目的ならバックステーアンテナでも良い。
     (トッピングワイヤを電気が流れない材質にするか,トッピングが金属ワイヤーの場合は
      3~5m毎に絶縁物を挿入するとベター)
(4) 船底内側に金属板または金属メッシュを貼り付け,太く短い線でアースを配線する。
    (銅の多対線より,銅の太い被覆単線がベター,太いステンレス線でも良い。)
(5) アンテナチューナーとして「オートチューナー」を使用する場合は,
   波長に比べて極端に短いアンテナを使用しない(内部で焼損故障が起きる)。
          (長距離航海時にはマニュアルチューナを予備機として携行するとベター)
(6) オケラ5世,オケラ8世,スピリットオブユーコーの世界一周は故障しにくい「マニュアルチューナー」を使用した。
          マニュアルチューナーの例は→ こちら

(7) 短期間の航海なら「ツエップ型アンテナ」を使用するのが簡便(チューナが不要)。
   但し,ANT線をバックステーから2m以上間隔をとること。
   市販の「ツエップ型アンテナ」は,所詮,ビギナーアマチュア無線家向けで,かつ,陸上での利用を
    想定した製品であることを承知の上で使用すること。

          ツエップ型アンテナは  → こちら

(8) バックステー(金属線)から間隔がとれないアンテナ線の張り方はダメ。
          ダメなANT,良くないANTの例は → こちら 
--------------------------
追記
30~34フィートのヨットで,船尾へグラスロッドANTを建てる場合は,垂直でなく若干後方へ傾斜させた方がベターです。小型艇ではバックステーと垂直アンテナとの間隔が十分にとれないため,それを少しでも解消するためです。
後方へ傾斜させることによってアンテナが金属ワイヤ-から離れるのでベターなのです。(図はクリックで拡大します)
          垂直ANTを傾斜
このページはヨット雑誌「舵」に掲載した記事の補足です。「舵」の内容は次の「ヨットのアンテナ・無線システムのセッティング」をクリックしてください。

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オケラネットのホームページは  → こちら

オケラネットの「アンテナ・無線システムのセッティング」は → こちら

アンテナチューナー(ANTカプラー)の話10~24項へもどるは ⇒ こちら 
   
垂直アンテナと同軸ケーブルの整合(マッチング)は ⇒ こちら



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  1. 2013/06/08(土) 21:58:16|
  2. 長距離航海ヨットの通信用アンテナ
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続:遠距離航海ヨットの通信用アンテナ(アンテナ給電線とアース配線)

続: 遠距離外洋航海ヨットのHF通信用アンテナ (アンテナとアース配線) 
    The communications antenna of a long voyage sailboat.
    外洋ヨットの通信アンテナ(14,18,21MHzアンテナ)とチューナーとアース設計
    (ヨット_オケラとHF通信アンテナ_アマチュア無線アンテナ_その2)
  
                                     総目次へもどるは → こちら

   このページは前ページ「遠距離航海ヨットのHF通信用アンテナ_HFアマチュア無線ANT」の続きです。
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【まず基礎的な話です】
アンテナの基本として「ダイポールアンテナ」があります(下図)。下図左は,一般的な「1/2波長水平ダイポールアンテナ」です。それを垂直にしたものが「1/2波長垂直ダイポールANT」です。垂直ダイポールANTの下側のエレメントをアースに接続した形が「1/4波長垂直接地アンテナ(ANT)」です。
(NHKラジオ放送などは片側をアースにした「垂直接地ANT」を使用しています。)
1_ANTの基本2

ヨットのバックステーアンテナ,グラスロッドアンテナも上図右の垂直接地アンテナ(ANT)です。長さが1/4波長の垂直接地ANTから無線機への接続は下図のようになります。
1/4波長垂直接地ANTの給電点のインピーダンスは約36Ωです。同軸ケーブルの特性インピーダンスが36Ωであれば「ANT側36Ω=ケーブル側36Ω」でピッタリと整合しますが,36Ωの同軸ケーブルは製造されていません。
通信では50Ωの同軸ケーブルを使用するのが標準です。無線機の出力も50Ωが標準です。無線機から50Ωの同軸ケーブルでアンテナ側へ給電しますが,1/4波長垂直接地ANT給電点の値が36Ωなので,50Ωと36Ωの差を整合させる空中線整合器(アンテナチューナ=アンテナカプラ)が必要となります。
   (中波ラジオ送信局ではアンテナ直下の小屋に巨大なコイルの整合器を設置しています。)
   垂直接地アンテナ線の長さとインピーダンスの値は→こちらの(図2.7,図2.8,図2.9)をご覧ください。
1_ヨット垂直ANTへの接続(基本図)2

【ヨットのアンテナの話に入ります】
ヨットの場合は下図のようになります。アンテナから船尾(船内)の整合器(アンテナチューナ)までの給電線として同軸ケーブルを使用せず,被覆電線(単線)を使用します。
    (同軸ケーブルを使用しないのはおかしい・・・と考える人はアマチュアです。
      ラジオ短波(旧:日本短波放送)などプロの送信ANTは同軸ケーブルを使用していません)

同軸ケーブルを使用しないのは,アンテナの給電点が同軸ケーブルの特性インピーダンスと同じ値になっていないからです。また,この部分を単線にすることで14MHzや18MHzなど他の周波数帯のアンテナとしても利用できる利点があります。
垂直接地ANTでは,アースの良し悪しが電波の飛びに大きく影響するので,シッカリとしたアースを設けましょう。
     垂直接地アンテナではアースの良し悪しが大きく影響するは → こちら

2_ANTから送受信機への接続図

下図は垂直ロッドアンテナ部から船内への給電線(単線)の引込み方法の例です。ポイントは「給電線(単線)を金属性の支柱へ密着させない」ことです。ポリエチレンの被覆電線でも金属支柱に密着させて引込むと高周波損失が大きくなる虞があるためです。金属支柱から間隔をとるセパレーターは支柱から3㎝以上あればOKです。またその数は少ないほど高周波損失が少なくなるのでブラブラしない程度の間隔30cm~60cm毎に取り付ければ良いでしょう。セパレーターはFRP板などでOKです(吸湿しないように表面塗装をする)。
     3_ANTからの引込配線(詳細図)

  参考:下図は月刊「舵」1997年5月~7月号に連載した記事から引用です。
        FRPロッド無線アンテナの作り方と取り付け方
         (下図はクリックで拡大します)
   FRPパイプにANTを取付_舵

         (下図はクリックで拡大します)
   ステンパイプにANTを取付_舵から2
   1997年頃は,FAX受信用FRPロッドの中に銅線を通して送信用アンテナとして使用できたが,近年はFAXアンテナの入手が難しい。ホーペック社の電気通信用FRPアンテナ または,漁業用FRP竿の利用で同等の垂直FRPロッドアンテナを建てることができる。


     月刊「舵」1997年5月~7月号の記事は, Okeranetのホームページ ⇒こちら 
     左側のアイコン(下図)をクリックすると開きます。
                    オケラネットの中のアイコン   
     または ⇒こちら http://www.okeranet.com/kazi_3.html で開きます。


注書き:
以下は,「何故,垂直ロッドアンテナ下端から同軸ケーブルで引込まないのか?」と思う方のための注書きです。

(なぜ単線で引込むのか?)
アンテナの給電点のインピーダンス(高周波特性値)はアンテナの長さ・高さ・傾き,周辺の金属物体などの影響で理論通りの値になりません。同軸ケーブルの特性値とアンテナのインピーダンスが合っていないまま接続すると同軸ケーブルの中で反射波が発生し,結果的に大きな損失が生じます。単線で引き込む場合も反射波が生じますが,セパレーターで絶縁した単線を使用すると損失は小さくて済みます。損失が少ない分,送信電力が効率的にアンテナから輻射されます。
  (くどいですが,ラジオ短波:旧日本短波放送の送信ANTは同軸ケーブルを使用せず,平行線給電です)
アンテナ下端(船内)にANTチューナー(整合器)を設置し、整合器から無線機までは同軸ケーブルで給電します)。
          詳しくは⇒こちら



次は,通信用アースの方法です。
くどいようですが,垂直接地ANTやバックステーANTは下半分をアースで代行するため,アースの良し悪しが電波の飛びに大きく影響します。最も望ましいのは,整合器のアース端子から短い電線で海水へ接する金属板へ接続する方法です。船底が金属でないFRP製のヨットでは海水に接する船底へ金属板を張ることは難しいので,下図のように船底内側へ金属板を張り,アース配線を接続します。
 (通信用アースは直流的なアースの必要性はない。電食防止亜鉛のように海水に接触していなくても良い。
 無線周波数において高周波抵抗値(インピーダンス)が小さければ良い。
 船内の船底に金属板を張り,アース線を接続すると良好な通信用アースとなる。)

          4_ヨット船内へ金属板を張りアース配線
船内のアース配線を鳥瞰図的に書くと下図のようになります。アース配線は下図の水色の太線のように船底内側の金属板,エンジン本体,バッテーリーのマイナス端子,キールなどとも接続します。配線用の線材は太めの600VIV線がベストですが,銅線は電食で溶ける事があるのでステンレス線でも良いでしょう。パルピットの取付けボルト(船内側)へもステンレス単線でアース配線をすれば更に良いでしょう。
5_ヨットのアース板

下図は船尾にヤグラがあるヨットの場合です。整合器のアース端子から,下図の水色点線のように船内側でヤグラの足のボルト,パルピットのボルト,船底の金属板にアース線を配線します(アース配線は上図のようにエンジン本体,バッテリーマイナス端子,キールへも配線をします。
6_ANTとアースの図jpg
船底内側の金属板としてステンレス薄板と書きましたが,銅板でもOKです。簡易的には,家庭で「天ぷら」を揚げる時に使用する「アルミ薄」を広く船底に張り付け,それを代用品とすることもできます(天ぷら用アルミ板では耐久力は期待できません)。

船内船底へ金属板が張れない場合は,
(1) 上図の水色配線に「1.6mmφIV単線」を接続し,左右のパルピット下部(デッキ内側)に沿って
   船首まで「1.6mmφIV単線」を引きまわし、船首で左右から引いた「1.6mmφIV単線」を接続します。
(2) または,水色配線に「1.6mmφIV単線」を4~5本接続し,それらの線を個々に左右に広げて
   バッテリーのアース端子へ接続します。

……以上はヨットの船体(ハル)がFRPの場合です。ハルが金属板のヨットはアース線をハルへ短く接続すればOKです。


【理論に興味がある方へ】
参考ですが,船底内側に張った金属板による静電容量とインピーダンスの試算をしてみましょう。
     7_アース板のインピーダンス
   アース抵抗値と垂直接地アンテナの効率は → こちら

整合器(アンテナチューナ)はどのような形式のものが良いかを書きわすれました。
便利のは「オートチューナー」です。オートチューナーはプロセッサを内蔵し,無線機側からの操作で自動的に整合(チューニング)をとってくれます。整合調整を知らぬ人でも利用できます。
但し,オートチューナはプロセッサーなどの部品で製造されているため,不具合が発生すると自分で修理ができません。

マニュアルチューナーは部品点数が非常に少ないため,まず故障の心配がありません(防水は必要です)。
チューニング時に手動でツマミを操作する手間が必要ですが,一度,調整すると周波数帯を変えないかぎり,そのまま使用できます。
信頼性の点ではマニュアルチューナーが優れています(放送局はマニュアル式です)。
     アンテナ整合器の例は → こちら
     マニュアルチューナーの製品例は → こちら

以上,くどい書き方をしましたが,それは「アンテナと整合器(アンテナチューナー)があればOK」と考えやすいので,バックステーアンテナや垂直アンテナはアースがシッカリしていないと電波の飛びが悪くなることを理解して戴きたいからです。

このページはヨット雑誌「舵」に掲載した記事の補足です。「舵」の内容は次の「ヨットのアンテナ・無線システムのセッティング」をクリックしてください。
     オケラネットのホームページは  → こちら
     オケラネットの「アンテナ・無線システムのセッティング」は → こちら


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    アンテナチューナー(ANTカプラー)の話10~24項へもどるは ⇒ こちら    
    垂直アンテナと同軸ケーブルの整合(マッチング)の技術話は ⇒ こちら


   簡単で高性能のヨット用21MHzアンテナとマッチング方法は  ⇒ こちら

 
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  1. 2013/06/03(月) 14:21:58|
  2. 長距離航海ヨットの通信用アンテナ
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長距離航海ヨットの通信用アンテナ

長距離外洋航海ヨットのHF通信用アンテナ (ヨット_オケラとアマチュア無線アンテナ_その1
   The shortwave communications antenna of a long voyage sailboat.
   外洋ヨットの通信アンテナ(14,18,21MHzアンテナ)とチューナーとアース設計
                                       総目次へもどるは→こちら

世界一周レースなど長距離航海ヨットの短波通信用アンテナ(アマチュア無線ANT)の話です。
ヨットの無線通信としては,外国の港への入港の際や,航海中に接近した本船などとの連絡用として「国際VHF」がありますが,国際VHFは無線周波数が150MHz帯のため見遠し距離をこえると通信ができません。21MHzや18MHz,14MHzのアマチュア無線周波数を利用すると北太平洋・南太平洋・インド洋などから日本へ通信ができます。
商船や遠洋漁業の船舶には短波通信装置が備えられていて,プロの無線通信士の乗船が義務付けられていました。今は,人工衛星を使用して航行中の船舶と通信が可能となりました。ヨットでも衛星通信が可能な装置を搭載すれば衛星経由の通信が可能ですが,21MHzなどの短波帯のアマチュア無線周波数を利用すると様々な情報が入手できますし,衛星通信装置が故障した場合のバックアップにもなり,航海の安全性が高まります(シングルハンドの航海では,孤独感の解消にもなるでしょう)。
前置きはこのくらいして,ヨットの短波通信アンテナの話に入ります。

先ず最初に【ダメなアンテナ】す。A useless shortwave antenna.
次の図のような逆V型アンテナ線の張り方は全くダメです。その理由は次の通りです。
(1)アンテナ線が金属線のフォアステー,バックステーに近すぎるため電波が飛ばない。
     (フォアステー,バックステーが非金属ならOKだが,ありえない話)
(2)マストトップにおいて左右のアンテナ線と給電用同軸ケーブルを接続しても金属ステーの
  影響でインピーダンスが合わない(不整合)ため,アンテナへ送信電力が送り込めない…
  …電波となって飛ばない。
(3)アンテナ線が途中で切れ,切れ残りがマストトップでハリヤードにからむとセールダウンが
  出来なくなる。(マストトップには必要最小限のものしか取付けるべきでない…
  …トラブルのもとは最小限とすべき)。
          (図はクリックで拡大します)


    1_ヨットにダイポールはダメ

  【良くないアンテナ】The shortwave antenna whose radiation efficiency is not good.
 アンテナ線を船尾のパルピットからマストトップへ張り,オートアンテナチューナを使って利用すればOKなどと安易に考えてはいけません(下図)。
 下図の方法の問題点は「アンテナ線とバックステー(金属線)との間隔があまりにも狭い」ことです。
電波を放射するアンテナ線に平行に金属線が存在すると「平行フィーダー」のようになり,アンテナ線から電波が効率的に輻射されません。(上図のダメなやり方 その1よりはマシですが…)

アンテナ線から電波を効率的に輻射するには金属物や金属線,海面からできるだけ間隔をとるのが基本です。

バックステーにインシュレーターを4~5m間隔で挿入すれば問題は解決しますが,インシュレータを多く挿入するとステーとしての信頼性(強度)が下がります。
The following figure is a shortwave antenna whose radiation efficiency is not good. This is because metal buck stays and the interval of an antenna wire are narrow.

     ダメなANT2


【本題に入ります】 スペースが限られるヨットにおいては,どのようなアンテナが良いか実例で示しましょう。


1.バックステーをアンテナとして使用する方法(下図)

 バックステーの上部と下部にインシュレーターを入れ,中間部をアンテナとして利用する方法です。
 【長所】
 ・バックステーをアンテナ線として利用するため,新たにアンテナを設ける必要がない。
 ・アンテナ線として利用できる部分が長くとれるため,10MHz以下の周波数でも利用できる。
 【注意点】
 ・インシュレーターを上下2か所に挿入するため,バックステーの強度(信頼性)に影響しないとは
  言い切れない。 (信頼性の高いインシュレータの選定が重要)
 ・インシュレーターは信頼性低下を考慮して定期的な交換が必要。
 ・インシュレーターは強度だけでなく,高周波的に優れた性能(低損失)のものが必要。
   (上部のInsulatorの表面に塩分が付着すると絶縁不良によってアンテナの性能が低下する)
 ・ブームの動きに伴ってトッピングワイヤ(Topping Lift 金属線)が動くとバックステーとの間隔が変化し,
  アンテナ部の特性(インピーダンス)が変化する。
 ・トッピングワイヤ(Topping Lift 金属線)を使用する場合は,ワイヤに3m~4m間隔で
  小型インシュレーター挿入し,バックステーアンテナに影響を与えないようにする。

・ アンテナチューナはアース配線が必要(アースは海水と接触させる必要はない)。
          (図はクリックで拡大します)  
    2_バックステーANT

 【その他の注意事項】
 ・アンテナ部分は長すぎてはいけません。長すぎると電波の輻射角度が高くなり
  電波が遠距離へ飛ばなくなります。詳しくは「続2」のページで説明します。
  
アンテナ部分の長さは通信周波数の5/8波長未満とします。(通信周波数が21MHzの場合,5/8波長は約9m)
  (インシュレーターをマストトップから下部1m,スターンから上部1.5 m程度に入れ,その間のアンテナとなる部分の長さが何メートルかわからないなど無神経なやり方はダメです)

 ・アンテナ部の長さ+アンテナ下部からアンテナチューナーまでの引込線の長さの合計が使用周波数の1/2波長の整数倍とならぬよう注意が必要(合計の長さが1/2波長の整数倍となる点はインピーダンスが非常に高くなるためアンテナチューナーの整合が難しい⇒オートアンテナチューナーでは整合できません)。

 次の写真は,バックステー下部からの引込線の配線の実例です。
ステンレス製のパックステーと銅の引込線(単線)を接続させると,接触面において電食錆が発生し,電気的接触が不完全となるので,接続部の防錆処理が必要です。引込線として銅線を使用せず,ステンレス線を使用し,ステンレス製のワイヤークリップ2個で締付ければ接続部での電飾錆の錆は少なくなります。この方法をとった時,ステンレス製の引込線から銅線(単線)の引込線への接続は,0.5~1mほど下部で良いでしょう。
 引込線はインシュレーター(Insulator)や他の金属線から10cm程度間隔をとって引込します。間隔をとるためのセパレーターはFRP板で自作しても良いでしょう。
          (写真はクリックで拡大します)
    インシュレーターと引込線
          (下図はクリックで拡大します)
バックステーと引込線の接続





2.グラスロッドアンテナ(バックステーを利用しない方法-1)・・・最もお勧めのアンテナ

 下図はスターンにグラスロッドを建て通信アンテナとする例です。
 バックステーもマストトップも使用しないアンテナです。
 世界一周などロングラン航海に向いているアンテナです。

 【特長・・・最もお勧めする理由>】
 ・バックステーの強度や信頼性に全く影響を与えない。
 ・マストトップも全く使用しないため帆走時のトラブルの心配が無い。
 ・デスマストしても通信が可能(バックステー利用の方法はデスマストしたら通信ができない)。
 ・構造がシンプルなためアンテナとしてのトラブルが少ない。
 ・アンテナチューナ(カップラー)を使用することで,14MHz~28MHzまで使用できる。
 ・電波の放射角度が低いため,遠距離通信へ向いている。
 【考慮点】
 ・スターンにグラスロッドアンテナを建てるための構造物が必要。
  (パルピットのコーナー部の低い位置へ取り付けても性能的には問題ないが,ヒールした時などに
   人間がつかまるとグラスロッドが折れる虞がある。)
 ・アンテナ部の長さが3~4mとなるため,7MHzなど低い周波数で効率よく電波を放射しにくい。 
 ・強度があるグラスロッドを使用しないと折れる虞がある。
 ・アンテナチューナはアース配線が必要(アースは海水と接触させる必要はない)。

          (図はクリックで拡大します)
    5_スターンへのグラスロッドANT
 
 グラスロッドアンテナで注意すべきはロッドの強度です。磯釣り竿などはFRPの肉厚が少いため短期間で強度が低下します。ヨットオケラ5世では漁師が船から竿を左右にだしてトローリングを行うときに使用する強力なグラスファイバー竿を使用しました。オケラ8世(スピリットオブユーコー)では,船舶用FAXアンテナを使用しました(次の写真はオケラ5世です)。 
オケラ5シドニ沖(部分縮小版)

次の写真はKODEN8(オケラ8世)です。レーダーをマストへ取り付けたため船尾へレーダー用のヤグラを設けず,短波通信用アンテナは船尾のパルピット支柱を補強し,その支柱へ取り付けました。写真ではわかりにくいですが左右2本(常用と予備)の垂直ロッドアンテナを取付けています。(写真はクリックで拡大します)
   オケラ8_0003

 現在,船舶用FAXアンテナの入手は難しいため,つなぎ部分の無い強力な4m程度の鰹一本釣り竿か,キュビカルクワッドアンテナ用として製造されているグラスロッドに電線を挿入してアンテナとするのが良いでしょう。
 下図はキュビカルクワッドANT用グラスロッドの例です。詳しくは,インターネット検索へ「ホーペック 電気通信用FRPアンテナ」と入れて検索すると下図のページが見つかります。
    ホーペック 電気通信用FRPアンテナは ⇒ こちら  ANT用グラスロッド例

上の電気通信用FRPアンテナとは別に トリポール「曳き縄用1本竿」のページがあります。このページの「曳き縄用1本竿」4.5mに電線(単線)を通してグラスロッドアンテナとする方法があります。
    「曳き縄用1本竿」のページは ⇒ こちら
     http://www.hopec.jp/contents/fishing/products/fishery/2_1_toripole_s3.html

ロッドの中に通す単線は1.6~2.0mmΦのIV線で良いでしょう(街中の電柱のアース配線に使用されている緑色の被服電線)。IV線でなく1.6mmΦステンレス単線(裸線)を使用すれば長年使用しても切れる虞は無いでしょう。
ロッドの下部から20~30cm程度の位置に穴をあけて電線をロッド内部へ通します。電線がロッド内でカタカタ揺れないように一定区間ごとにFRP樹脂を塗布して挿入します。ロッドの先端部で電線をFRP樹脂で固定し,併せて防水します。ロッドの表面はウレタン塗装をして紫外線によるロッドの劣化を防ぎましょう。ロッド下部は水が溜まらぬように水抜きを考えましょう。

アンテナ部の長さは,必ずしも使用周波数の1/4波長としなくてもOKです。(アマチュア無線家の中に,アンテナ長は1/4波長や1/2波長に同調していないといけないと思い込んでる方がいますが,使用周波数に同調していない8/5波長アンテナでも良いのです。(使用周波数が21MHzなら,上図のロッドの長さは3~3.5mあれば十分です…あまり長くするとヨットが横転した時に折れる心配があります)。

アンテナ部の直下に同軸ケーブルを接続する場合は,アンテナ部の長さを使用周波数の1/4波長×0.98程度にして,アンテナの電気的特性の中のリアクタンス分を最小にするなどが必要です。 同軸ケーブルを使用せず,単線でアンテナチューナまで引込む場合には,アンテナ線+引込線を含むトータルの調整をアンテナチューナー内部のコイルや可変コンデンサで行うので,アンテナ線を周波数の1/4波長×0.97に合せなくても良いのです。

アンテナの長さが1/4波長より短い場合は,アンテナ中央部あるいは下部へコイルを挿入して使用しても良いですが,ヨットでは塩分がコイルのカバーに付着するので,好ましい方法ではありません。アンテナ下部から最も近い船内側に「アンテナチューナー」を取付けて整合させるのがベターです。


3.ツエップ型アンテナ(バックステーを利用しない方法-2)
 次はマストトップからスターン(船尾)へ「ツエップ型アンテナ」を張る方法です。
 ツエップ型とは,ドイツの飛行船「ツエッペリン号」で用いられたツエッペリンアンテナの変形です。ツエップ型ANTはアンテナ線の部分の長さを使用周波数の1/2波長にして使用します。アンテナ線の片側(図では下側)へ専用のマッチング部を設け,その部分から同軸ケーブルで給電します。このANTの長所と短所は次の通りです。
【長所】
 ・バックステーにインシュレーターを挿入しないので,バックステーの信頼性低下を心配しなくて済む。
 ・アンテナ整合部から無線機まで同軸ケーブルで直接接続することができる。
   (アンテナチューナーが無くても良い)
 ・ヨットの船底へしっかりしたアースがとれなくても電波の飛びに影響が少ない。
 ・比較的簡単に設置できる(コストが安い)。
【短所】
 ・使用できる周波数がアンテナとして設計された周波数に限定される。
   (アンテナチューナを取付けても他の周波数では使用できない)
 ・アンテナ線がバックステーに近いと電波の飛びが大きく悪化する。

【注意事項】
 ・アンテナ線はバックステーから十分な間隔をとること(少なくとも1/8波長以上の間隔)
   21MHzの場合,アンテナ線の上部でも2m以上の間隔が望ましい。
   バックステーから間隔をとるために船尾へパイプを建て,アンテナ線をステーから十分に離す。
 ・アンテナ線の片端のマッチング部をしっかりと防水する必要がある。
   (水が浸入するとアンテナとのマッチング状態が狂い電波が飛ばない)
 ・アンテナ線が切れて,残り部分がマストトップに絡むと危険なので,切れにくいステンレスワイヤーを使用する。
 ・市販品は所詮「ビギナーアマチュア無線用の製品」であること。
                        (図はクリックで拡大します)
    3_ツエップ型アンテナ
 ツエップ型アンテナの片端に取付ける整合部(マッチングコイル部)を初心者が自作することは難しいため,初めての場合は市販品の利用が無難です。市販品は陸上での使用を標準に製造されています。即ち,市販品は塩分を含む強風にさらされ,常に大きな揺れの力が加わる環境での使用を保証しているとは思われません。
市販品はバックステーなど金属線がアンテナの付近に無く,かつ,地上から十分に高い位置にアンテナを張った状態に合わせて製造されています。
 下図は市販のツエップ型アンテナ専用のコイル部(整合部)です。
1821-1.jpg
 ツエップ型アンテナを長距離航海に使用する場合は,アンテナ線の部分をステンレスワイヤーとし,整合部は同軸ケーブルとの接続部を含めてしっかりと防水処理をしましょう。
 バックステーなどから数メートルしか離れていない位置にアンテナ線があるため調整が必要です。
上図の「調整ヒゲ線」とは,アンテナ線の全長を調整するための部分です。この部分を含め,全長が1/2波長より若干長くなるようにアンテナ線の長さを決めます。その状態で,SWR値を計測し,目的の周波数より低い周波数にマッチングしている場合は,ヒゲの長さを少しずつ切りながら目的の周波数でSWR値が最小になるように調整します。

 調整作業時,同軸ケーブルの長さを1/2波長×同軸の短縮率の長さ,もしくはその整数倍の長さで使用することがベターです。5D2V同軸ケーブルの短縮率は0.67です。
(21MHzで同軸ケーブル5D2Vを使用する場合は,1/2波長=(300÷21.3)×1/2=7.04m に短縮率0.67を掛けた4.72mもしくは,その2倍の9.43mの長さの状態で使用すると良いでしょう。その理由は,アンテナと同軸ケーブルの接続部が完全整合状態(SWR=1.0)でない場合,同軸ケーブルに反射波が生ずるが,4.72mの整数倍の点はアンテナとの接続部の状態と同じ状態となるため,アンテナとの整合状態を手元で把握することができる)。

 上の写真のツエップ型アンテナは,陸上で簡便に使用するビギナーアマチュア無線向けなので,世界一周など長期の航海に耐えられるかの不安はありますが,安価に建設できるので2~3か月程度の航海なら問題は少ないでしょう。整合部(マッチングコイル部)の予備を準備して航海すると良いでしょう(海外の港でマッチング部を入手することは難しいと思います)。
下図はツエップ型アンテナを設置する時のポイントをまとめた図です。
   ツエップ型ANTの取り付け方
   上図のアンテナ用パイプの目的・傾けた理由は,バックステーなどの金属物・金属物から
   アンテナ線までの間隔を広くするためです。

   ,船尾から見てFAXアンテナを右側に建てたら,無線アンテナ用パイプは左側,に配置します。



以上の3方式のまとめ
オケラ5世による第1回BOC世界一周レース,オケラ8世(コーデン8)での第3回BOC世界一周レース,スピリット オブ ユーコーでの単独無寄港世界一周の実績から,短波通信用アンテナとしてはヨットの艤装に全く影響を与えない「グラスロッドアンテナ」が信頼性・通信性能の面でもベストと考えます。

通信周波数としては,21MHzを利用すれば50W程度の送信電力でも南太平洋やインド洋から日本への通信ができる利点があります(オケラ5世の時は南大西洋から日本へ電波が飛んできていた)。---2級以上の無線従事者の資格があれば14MHzも利用するとベター。)


アンテナ線から無線機への接続やアース配線(下図)については,次のページで説明します。
         (図はクリックで拡大します)
          ヨットのアース板

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  1. 2013/05/30(木) 22:30:12|
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