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SWRが3の時,送信電力の25%が損失となるとは言えない

SWRが3の時,送信電力の25%が損失となると言えるか?
                             全体目次へもどるは ⇒ こちら

アマチュア無線家の中に次のように説明する方がいますが正しいでしょうか?
  1_反射率は送信電力損失でない3

次の図-1はモデル図です。 21MHz用ダイポールアンテナとして, エレメントを少し長めにすると
ANT給電点のインピーダンスがZ=77Ω+j65Ωとなり,SWR値は3となります。
  (わずか長くしただけでリアクタンス分が+j65と増加し,SWRが悪化します)
   2_説明用モデル図

次の図-2は図-1のアンテナ給電点と同軸ケーブルの接続点における「進行波電力Pr」と
「反射波電力Pr」そして「ANT側へ進む電力Pant」を図示したものです(図を横にしました)。
          3_ANT給電点のPfPr 2


「ANT給電点」の不整合によって生じたSWR(VSWR)の値を「S」とすると,Pf,Prは次の式で表せます。
      (この式の詳細は「フィーダ-上の高周波電力(進行波と反射波)」 ⇒ こちら を参照ください)

        3‗10wのPfPr
SWR=3の時の「進行波電力Pr13.3w」対する「反射波電力Pr3.3w」が25%となるのです。
              (3.3w÷13.3w=0.25 ⇒ 25%)

次の図-3はこれらを図示したものです。
図の右サイドがANT給電点におけるPf(13.3w)と Pr(3.3w),Pant(10w)の値です。
図の左サイドは「送端A」における送信機出力Ptx(14w),Pf(16.7w)と Pr(2.7w)の値です。
「送端A」にはSWR3状態の同軸ケーブル上の実際のインピーダンスと整合させるマッチング回路があります。
 (整合状態であれば送端Aから送信機側へ反射波電力はもどりません)
     4_ANT電力10Wのエネルギ図2

上の図-3の右側の進行波電力Pf(13.3w)が,左側の進行波電力Pf(16.7w)より小さいのは,
同軸ケーブルの損失によるものです。反射波電力Prも同軸ケーブルの損失で差が生じています。
(21MHzにおける同軸ケーブル5D2Vの標準減衰量(損失)は20m当たり1dbを適用して算出します。)
      (この部分の詳細は「フィーダ-上の高周波電力(進行波と反射波)」 ⇒ こちら を参照ください

次の図-4は,送信機出力電力を10wとした場合です。
図-4のようにSWR3の場合、送信機出力10wのうち,7.1W(71%)がANTへ進む,
即ち,損失は2.9w(29%)なのです。
電力10wが電力7.1wへの減少をdbで表すと「-1.5db」です。同軸ケーブルの損失は
1dbだったのに,1.5dbと増加したのは,SWRによる損失増加分が生じたためです。
    
   5_送信機出力10wエネルギ図2

上の場合の損失29%は「SWR3の時は25%が損失」に近いのではと思うかもしれませんが,
これは上のモデルの同軸ケーブルの規格損失によって,たまたまの値です。

次の図-5は,同じ同軸ケーブル長で周波数を7MHzとした場合です。
周波数が下がると同軸ケーブルの標準減衰量(損失)は小さくなり,20m当たり0.5dbです。
ANT給電点のPfに対するPrの比は2.9w÷11.5w=0.25(25%)と変わりませんが,
送信機出力Ptx(10w)に対するANT電力Pant(8.6w)が86%,即ち,送信電力に対する電力損失は
1.4W(14%)となり,「SWR=3の時,25%が損失になる」・・・とは大きく異なります。
   6_損失が0.5の図2


次の図-6は,同軸(or平行)ケーブルの標準減衰量(損失)が全く無い場合です。
送信機電力10wがケーブル上では,送端A側も,ANT給電点側も進行波電力Pf(13.3w),
反射波電力Pr(3.3w)となりますが.ANT給電点からANT電力Pant(10w)としてアンテナへ
進むため,SWR=3であっても、送信電力の損失は生じないのです。
     7_ケーブル損失がゼロの場合のエネルギ図2

同軸(or平行)ケーブルの規格損失が小さければ,SWR=3でも送信機出力電力の大部分が
ANTへ進み,25%が損失となるような状態は発生しません。

5CFB同軸ケーブルを7MHzでSWR=8で使用したとしても,長さが0.5mと短い場合は,
ケーブルの標準損失が小さいので,送信電力の損失は非常に少ないでしょう。

但し,送端Aにおいて,送信機側とSWRが発生しているケーブル側が完全に整合できている
こと,整合回路の損失が無いことが条件です。

ここまでをまとめると,
(1) SWR3の時,25%が送信電力損失となるとは言えない。
    (この25%はケーブル上に生じた進行波電力Pfに対する反射波電力Prの比です)。

(2) 7MHzなど低い周波数で,標準減衰量(損失)が小さい同軸ケーブルや平行フィーダ)を
   使用するなら,SWRが3でも送信電力の損失は気にしなくても良い。
   
(3) 但し,送端Aにおいて整合を完全にとることが重要です。
  (これは同軸ケーブル上のSWRの改善ではなく,送信機出力を効率よくケーブル側へ
   送り込むことで送信機出力半導体の熱破壊を防ぐ必要があるからです)

144MHzなどで同軸ケーブル5D2VをSWR3で20m使用すると大きな損失が生じ,送信電力の2/3がケーブル上で熱損失となります。
基本的には
   ・ANT給電点におけるSWR値を小さくする
   ・標準減衰量(損失)の小さいケーブルを使用する
ことが重要です。



では,「SWR3の時に25%が反射損となる」とはどのような場合のものなのでしょうか?

次の図-8は送端AとANT給電点の接続ケーブルの長さをゼロにしたものです。
(送信機出力端子に1cmの配線も使用せずANT給電点に接続するようなことはありえませんが・・・)
     10_送端AとANT給電点の距離をゼロm

次の図-8-2は上記を「教科書的モデル」としして表したものです。
実際に左右を接続する配線(伝送路)をゼロメートルにすることはできませんが,教科書ですから
ゼロメートルとし,接続点に整合回路が無いとの条件にすると,
「SWR3の時,75%が負荷へ供給され,25%が供給されない」となります。
     10 理論上の接続図3


周波数を低くして0.1ヘルツ(≒直流)として考えてみると次のようになります。
     11 図11 負荷が同じ時 


     12 負荷が150Ωの時
     周波数が0.1ヘルツでも反射係数Γ(ガンマ)の式は成り立ちますから
     代入すると次のようになります。
               13 負荷が150Ωの時のΓ係数SWR3_2

信号源側のインピーダンス(50Ω)と負荷側のインピーダンスが同じ状態であれば,
負荷側へ0.5wの電力が伝わりますが,負荷側が150Ω(SWR3)の時、負荷へ伝わるのは
0.375w(0.5w時の75%)です。
言い換えると,0.125w(0.5w時の.25%)が信号源から送り出せなかったとも言えます。


    14 負荷が25Ωの時
               15 負荷が25Ωの時 Γ係数SWR2 2

負荷が50Ωの半分の25Ωの時,SWR2相当となり,負荷へは0.44wが伝わります。
伝わらない0.06wは12%相当となり,「SWRが2.0の時11%が反射損失となる」と同等の値を表しています。

ページ頭の「SWR3の時,25%が反射損失となる」は,信号源と負荷が,周波数成によって
負荷インピーダンスが変化しない長さの線で接続されていて,接続箇所に整合回路が無い
場合のものと言えます。 (教科書モデルの場合に言えることですね)。



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  1. 2017/06/26(月) 14:15:27|
  2. アンテナと整合
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5.SWR値と反射波電力・アンテナへ進む電力

SWR値と反射波電力とアンテナへ進む電力(同軸ケーブルとハシゴフィーダの比較)
          (反射波電力は最終的にどのようになるか・どこへ行くのか)
                                    総目次へもどるは ⇒ こちら
.....................このページは次の1~8の中の「5」です。
     ..........1.アンテナと共振周波数
     ..........2.アンテナとインピーダンス
     ..........3.アンテナとフィーダ(給電線)
     ..........4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
     ..........5.SWR値と反射波電力とアンテナへ進む電力
     ..........6.SWRの測定と問題点
     ..........7.アマチュア用SWR計と注意点
     ..........8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRが下がる?

前ページで「アンテナの給電点のインピーダンスがフィーダーの特性インピーダンスと整合していない場合,フィーダ上の進行波電力一部がアンテナの給電点から反射する」ことを書きました。
          前ページ「フィーダ-上の高周波電力(進行波と反射波)」は ⇒ こちら

このページでは「定在波比(SWR)の大きさによって,アンテナへ進む電力がどの程度になるか」を
同軸ケーブルの場合と平行フィーダー(はしごフィーダ)の場合を具体的に計算してみます。
      (まとめは,ページ後半の「ここまでのまとめ」へ進んでください)

次の図 5-1 は7MHz用1/2波長水平ダイポールアンテナへ20m長の同軸ケーブル5D2Vで給電した図です。
アンテナ地上高が12m~14m(3/8波長)の高さではANT中央給電のインピダンスが約90Ωとなるので,その値で計算してみます。
     (公称値75Ωは地上の影響を受けない場合の値です)
ANTインピダンス90Ωへ特性インピダンス50Ωのフィーダで給電するとANT給電点において反射波が生じ,SWRは1.8 となります。
   b01_同軸でSWR1.8の図2
    上図のPtxは送信機の出力電力,PantはANT給電点からアンテナへ進む電力です。
すべてはANT給電点(受端B)での不整合による反射によって生ずるので,この反射点から整理します。

【SWR 1.8の場合】
ANT給電点のSWR=1.8, ANT給電点からアンテナへ進んだ電力Pantを仮に50wとして計算してみます。
この点における進行波電力 Pf は前ページの「式4-6」へSWR 1.8 と50wを代入します。
          前ページ「フィーダ-上の高周波電力」は ⇒ こちら
  b02_同軸ケーブル_SWR1.8の説明4
ANT給電点ではSWR=1.8 だったのに送信機近くではSWRは1.7 と低く表示されます。
これは同軸ケーブルの損失がSWRで増加したため,低く表示されたのです。

以上は,周波数7MHz,ANTインピダンス90Ω±j0Ω,ANT給電点SWR=1.8,
同軸ケーブル5D2V長さ20mの場合の値です。
周波数が50MHzと高くなると同軸ケーブル損失が高くなるため,ANT給電点SWR=1.8でも
送信機出力の33%が損失になり,アンテナへは送信機出力の67%が進むとなります。

【SWR=3ならどうなるか?】
アマチュア無線家の中には「 SWR=3なら送信機出力10wとすると,7.5w(75%)がANTから
放射され,2.5w(25%)が反射ロスとなる」と言う方がいますが適正ではありません。


SWR=3によって同軸ケーブル上に生ずる進行波電力Pfは,送信機出力10wより高い値
Pf=13.3wとになります。反射波電力Pr は3.3wとなります。
この3.3wが13.3wの25%であり,送信機出力10wの25%ではありません。
          10wのPfPr
反射波電力Pr(25%)はすべて損失となる訳ではありません。
同軸ケーブルのロスがゼロなら損失となりません.。

極端ですが同軸が10㎝と短ければSWR=3でも損失は微小です。
 (上図の送端Aが整合状態なので送信機側へもどることもありません)。



はしごフィーダ(600Ω)を使用し, SWR=8の状態で給電した場合を計算してみます。
下図 5-2 ではアンテナインピーダンスZantが75Ωとなる地上高17mにしています。
  b03_はしごフィーダSWR8の図

  b04_ハシゴフィーダSWR8の説明4

下図 5-3 はこれらを絵にしたものです。
   進行波電力の絵2


ここまでのまとめ,
周波数7MHzの場合、
(1) 同軸ケーブル5D2V 20mをSWR= 1.8で使用すると,送信機出力電力100wの88%がアンテナへ
   進む。  (SWR=1.5で計算すると,89%がアンテナへ進む)

(2) 600Ωの「はしごフィーダ 」を使用するとSWR= 8となり,反射率60%となるが,その反射は
   フィーダ上に発生した進行波電力に対するものであり,送信機出力電力に対するものではない。
   はしごフィーダでは送信機出力電力100wをフィーダへ送ると96%がアンテナへ進む。

(3) 以上の(1)(2)より,SWRが高くても「はしごフィーダ」の方が同軸ケーブル5D2Vより多くの電力を
   アンテナへ送り込める
 (同軸ケーブルSWR=1.5で比較しても送込める率が高い)。

このように「はしごフィーダー」は優れた性能があるが,一方で
   ・鉄柱や他のケーブルから離して引き降ろす必要がある
   ・回転させる八木アンテナなどでは鉄柱から離す仕組みが難しい
   ・平行フィーダー用の整合器(アンテナカップラー:アンテナチューナー)の市販品が少ない
   ・フィーダーの平衡度が低いとフィーダーから電波が輻射される(逆に,ノイズを受けやすい)
   ・フィーダ線の間隔が0.1波長を越えるとフィーダから輻射が起きるので30MHz以上で使用
    できる「はしごフィーダ」の自作が難しい。
などから最近はアマチュア無線ではあまり使用されていない。

ですが,「はしごフィーダー」は7.0MHz~7.19MHzなどバンド幅の両端でSWR値が高くなっても損失が
少ないこと,また,1つのアンテナ線で他の周波数のアンテナとしても使用するなどの際に利用できる
ことなどから,一部のアマチュア無線家の間で今も愛用されています。

業務用としては,かってNTT名崎無線送信所などで短波送信アンテナへの給電線として平行フィーダ
が使用されました。
現在でも,NHK国際放送の八俣送信所(300kw)のアンテナ用や,ラジオニッケイの短波放送(50Kw)
の送信アンテナの給電線として平行フィーダが使用されています。
(これらの送信所ではアンテナ給電点のインピーダンスが300Ωとなるフォールデット(折り返し)
 ダイポールアンテナを使用し,フィーダとしても片側2線(計4線)の特性インピーダンス300Ωで
 給電するなどしてSWRを低くしているようです。)

「反射波は最終的にどこへゆくのか,どうなるのか」については,
前ページに書いたように「送信機側の送端A(境界点)へもどった反射波電力は,その境界点における
エネルギ-総和 Pf+(-Pr)=Ptx の役割を担っている。
その境界点における進行波電力と不可分の状態であり,境界点(送端A)の整合が完全であれば,
送端Aを通過して送信機側へもどることも,反射波電力が送端Aからアンテナ方向へ再び進むことも
起きない・・・と整理してよいのではと考えます。
   (どこかへ行くには反射電力のみでなく進行波電力も含めてでなければ境界点の条件を満足しない)


【参考】
下図は,ARRLの「The Radio Amateur's Handbook」1964版に掲載されていた同軸ケーブルと
ハシゴフィーダーの損失グラフです。
はしごフィーダーの損失は同軸ケーブルの10分の1です。
下図右は,SWRが発生時の追加損失分のグラフです。
はしごフィーダーはSWR=8程度で使用されるケースが多いですが,下図左のようにハシゴフィーダーの
損失は14MHz帯で100フィート長でも損失は0.07db程度なので,SWR=8による追加損失増加分を
加えてもも0.2db程度でしょう(下図右の図の左側の外側になります)。
          (図をクリックで拡大して目盛をみてください)
     ARRLハンドブックフィーダーロス
     ARRLハンドブック_フィーダー追加ロス


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
訂正:従前、このページで次の図を示し,
 「反射波はフィーダ上を行ったり来たりしながら,ANT給電点から少しずつアンテナ側へ進む」
と書きましたが,
   (1) 反射波電力を進行波電力でなく送信機出力電力に対するものとした,
   (2) 送信機側の送端Aへもどった反射波が「再びアンテナ方向へ進む」とした,
の点が適切でないとわかりました。
     反射波はフィーダ上を再び進む
仮に「再び進行波電力に加わってアンテナ方向へ進む」としたら,加わった分 進行波電力が
増加します。
増加した進行波電力がANT給電点で反射することとなり,これを繰り返すとフィーダー上の
電力が増大を続けることとなる・・・そのような事はありえないでしょう。


次ページのSWR計の注意事項へ続くは ⇒ こちら


総目次へもどるは ⇒ こちら

  1. 2017/04/10(月) 17:11:17|
  2. アンテナと整合
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4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)

【4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波】         総目次へもどるは ⇒ こちら
               反射波は最終的にどうなるのか,どこへゆくのか
................このページは次の1~8の中の「4」です。
    ..........1.アンテナと共振周波数
     ..........2.アンテナとインピーダンス
     ..........3.アンテナとフィーダ(給電線)
     ..........4.フィーダー上の高周波電力(進行波と反射波)
     ..........5.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算)
     ..........6.SWRの測定と問題点
     ..........7.アマチュア用SWR計と注意点
     ..........8.同軸ケーブルの長さを調整するとSWRが下がる?



このページは「3.アンテナとフィーダ」の続編です。
このページではフィーダを経由してアンテナへ高周波電力がどのように伝わるかをできるだけやさしくまとめてみます。

直流電力なら発電機から負荷までの電線の抵抗値がゼロであれば電力を100%負荷へ伝えることができます。高周波の場合は電線間の静電容量・電線のインダクタンスが影響するので直流のように簡単ではありません。送信機出力電力がフィーダを経由してアンテナへ進行方向のみの電力となって進むようにすることが課題です。
   a001 フィーダ上の波2
   (このページでは送信機出力電力を Ptx ,フィーダ上を前方向へ進む電力を Pf (Pfront),
    アンテナへ進む電力を Pant とします)


下図4-2~4-4はフィーダを進む送信電力(進行波電力)の波形を海の波にたとえた絵です。
海の中に波より堤防があると(図4-3)堤防で波(エネルギー)が反射して逆方向へもどります。
堤防が低い場合は(図4-4 ),波のエネルギの一部が堤防を越えて進行方向へ進みます。
残りの波のエネルギーは堤防で反射して逆方向へもどります。

    a002 海の波3

フィーダを進む高周波エネルギー(進行波電力)がアンテナ給電点(上図4-1の受端B)からアンテナ方向へ100%進むならば反射は生じません。100%完全にアンテナ方向へ高周波エネルギーが進むためには受端Bにおいてフィーダのインピーダンスと,アンテナ側のインピーダンスが完全に同じ状態となる必要があります。

現実的には,周波数が少し変化しても,また地面が雨で濡れただけでもアンテナのインピーダンスは大きく変化するので,反射波が完全に発生しない状態は少ないでしょう。
わずかでも反射波が生じフィーダ上を逆方向へ進むと,進行波との間で重なったり打ち消したりする状態が発生します。

下図4-5の「波①」は右方向へ進む進行波,「波②」は左方向へもどりる反射波です。
「波③」は「波①」と「波②」の位相が合った状態を示したものです。
波①と波②が重なると,フィーダ上の合成波(赤色波)の電圧が送信機側から送込まれた進行波より高くなります。

時間がλ/4分経過すると波①は右方向へλ/4波長右へ進み「波⑤」の状態になります。
一方,波②はλ/4波長左へもどり「波⑥」の状態になります。
「波⑦」は波⑤プラス,波⑥がマイナスと位相が逆の状態なので打ち消しあってフィーダ上の合成波電圧(赤色波)が低くなります。

   a003_進行波と反射波の合成波電圧の変化3
   注:下図の赤色の波形は合成波です。これから説明する「定在波」ではありません。

上図4-5の波形③の合成波の赤丸点が合成波の最大電圧Vmax,波形⑦の合成波の赤丸点が合成波の最小電圧Vminです。
波形③と⑦は位相が重なったタイミングと,逆位相になったタイミングの波形ですが,次に重なるまでの時間の間の合成波の電圧はVmaxより少しずつ低くなりVminとなり,再びVminより少しずつ高くなりVmaxの電圧となります。
 
次の図4-6は,VmaxからVminへ変化し,再びXminからVmaxへの変化を図示したものです。
これを「定在波」と言います。(進行波でも反射波でもありません)。
            (上図4-5の波③の赤丸の点が下図4-6の赤丸Vmaxと合って見えますでしょうか)
             a004 定在波の形3

次の図は,反射波の大きさによって生じる定在波の例です。
図 4-7 は,ANT給電点(受端B)で断線・短絡が起きた時の定在波です。
この時は全面反射の状態なので,反射波電圧(Vr)が進行波電圧(Vf)と同じになります。
        Vr=Vf
進行波電圧(Vf)と反射波電圧(Vr)の位相が重なった点の電圧(Vmax)は
        Vmax=Vf+Vr ・・・ Vr=Vfだから・・・
        Vmax=Vf+Vf=2Vf (進行波電圧の2倍) となります。

Vminは位相が打ち消す点ですから Vmin=Vf-Vr です。
Vr=Vfだから・・・ Vmin=Vf-Vr=0 (ぜロvとなります)。
   a005 反射波と定在波3

上の図 4-10 は,反射波電圧が非常に小さい(Vr=0)場合です。
従って,Vmin =Vf となります。

VmaxとVminiの比を「定在波比」:SWR(Standing Wave Ratio)と言います(電圧比なのでVSWRとも表示します)。
     a006 定在波比SWR式3

ANT給電部(受端B)が断線・短絡状態の場合は,完全反射するので Vmin = Vf-Vr = 0となり ,上の式の分母がゼロ・・・即ちSWRの値は∞になります。
反射電圧が非常に小さい(ゼロに近い)時は, Vr=Vf ,Vmax=Vf と分母分子が同じ値となるので SWRの値は1となります。

アマチュア無線なので難しい話はさけたいですが,少しだけ数式の話に入ります。
   (数式をスキップして結果を知りたい方はページ後半の「ここまでのまとめ」へ進んでください。)

進行波電圧(Vf)と反射波電圧(Vr)の比を「電圧反射係数」と言い,記号ガンマ「Γ 」を使用します。
反射によって損失がどの程度となるのかが最も気になる点なのでそれを調べましょう。

その前に,SWRと反射係数の関係を整理しましょう。
  a007 電圧反射係数とSWR2_3


ここから主題の「反射波が発生すると送信電力の何%が損失になるか」を整理してみましょう。
そして「反射波電力は最終的にどこへ行くのか」も考えてみましょう。

    送信機出力電力×ANT給電点反射率=損失 ではありません。
    反射波によってフィーダ上に発生した進行波電力(見かけ上の電力)をもとに
    実質的な損失を調べてみましょう。


次の図4-11 は,こページで使用する記号と定義です。
一般に負荷をZrと表示したりしますが,ここではアマチュア風に右側にアンテナZant, Pant, 
左側に送信機Ztx,Ptxとしました。 Pfは P front, PrはP return の略です。
  a008フィーダ上のPfPr説明3

すべてはANT給電点(受端B)の反射が原因なので,受端Bの反射電力Pr,進行波電力Pfの関係を整理します。
  a009 送信電力からpfPrを求3

次いで,送信機側(送端A)の進行波電力・反射波電力などの関係を整理します。
  a011送端Aの計算4

次の図4-13 は以上の計算例の結果を図に書き込んだものです。
  a012 計算例を図示したら2
この図でわかるようにANT給電点のSWR=3が送信機の出側ではSWR=2.3と小さくなりました。
逆に言えば,送信機の近くでSWRを測定してSWR=2.3 だったらANT給電点では 3 と考える必要があります。


ここまでの まとめ
(1) ANT給電点で反射が起きると送信機出力より大きな進行波電力がフィーダ上に発生する。

(2) 反射電力はフィーダ上に発生した進行波電力に対するもので,送信出力電力に対するものではない。

(3) フィーダ上の進行波電力と反射波電力は見かけ上のもので,それぞれを分離して取り出すことはできない。
     (フィーダ上で増大した進行波電力のみを取り出せるなら,
       SWRを高くするだけで増大する電力を取り出し,売電してもうけたい・・・)


(4) 送端Aの反射波電力はその点の進行波電力と実電力との関係をとる役目を担っている。
   (送端Aが整合時)反射波電力は送端Aから送信機方向へもどらず,再びアンテナ方向へ進むこともない。

      (境界点でのエネルギ和 Ptx=Pf+(-Pr)が成立しなければならない)。

(5) フィーダ上に大きな反射波が発生しても(SWRが高くても)フィーダ損失がゼロに近ければ,
   実質的な電力損失は小さい。

      (フィーダ損失の少ない長さ1波長程度の「はしごフィーダ」ではSWRが高くても
        損失が小さいため送信機出力電力の大部分がアンテナへ届く)・・・これは次のページで・・・)


(6) フィーダ損失があるとSWR値に応じて損失が更に増加する。

「反射波は最終的にどこへゆくのか,どうなるのか」ですが,
「反射波電力は送端A(境界点)でエネルギ-総和 Pf+(-Pr)=Ptx の役割を担っている」
としてよいのではと考えます。
  (そこからどこかへ行くには反射電力のみでなく進行波電力も含めてでなければ境界点の条件を満足しない)

図では省略していますが,
送端A点には,フィーダに発生しているリアクタンス分を含む実インピーダンスと送信機側を整合させる機能を設けるので,送端Aから送信機内部へ反射電力がもどることはありません。
    (SWRが完全に1となることは少ないので基本的には整合回路が必要)

「SWRが高く反射波が送信機へ戻って送信機の半導体を破壊した」と言う人がいますが,
それは送端Aでの整合が完全でないため送信機出力部から見た負荷インピーダンスが設計値と異なる値となり
電力増幅回路が効率よく働かないために壊れたのです。
(電力増幅回路に流れ込んだ直流電力の大部分が熱損となり半導体が壊れます)


このページはこの辺までにします。次のページで,
同軸ケーブル・ハシゴフィーダの場合のアンテナとフーダによる損失を具体的に計算してみます。
はしごフィーダは規格損失が非常に小さいのでSWRが高くても電波が好く飛ぶと言われる仕組みを調べててみましょう。

以下は,文中の式の参考です。
     参考1
     40 参考1
    a41 参考3
参考4
下図はSWRと損失の増加分をグラフにしたものです。
SWR=1の損失が1dbのフィーダーを SWR=3の状態で使用すると,損失は0.5 db増加し,総合損失1.5 dbとなると読みます。
「はしごフィーダー」の損失は0.1db/20m以下(SWR=1.0の時)なので,下図では左のメモリより更に左となり,SWR=8 で使用しても総合損失は0.2 db程度です(図の横軸目盛0.2 の更に左外)。
          (出典:昭和28年ラジオアマチュアハンドブック) 
      (図はクリックで拡大します)
     SWRによる損失増加分

参考5
下図は「はしごフィーダーの損失」です。100mあたりなので,10mの場合は十分の一の値になります。同軸ケーブルと比較する場合は長さの換算が必要です。
      (図はクリックで拡大します)
     オープンワイヤーの減衰量

次ページの「5章.定在波(SWR)とアンテナ電力(試算例)」へ続くは ⇒ こちら


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  1. 2017/04/07(金) 18:00:11|
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7MHz 逆L ANTのインピーダンスと整合回路

7MHz 逆L ANTのインピーダンスと整合回路
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Oさんから「移動運用時に垂直部5m,横6.5m(全長11.5m)のANTを計画しているが,コンデンサー250pFを直列に挿入するだけでマッチングがとれますか」と質問がありました。
結論を先に言えば答えは「NO」です。

先のページ こちら ⇒ 続:垂直ANT(4m~10m)の7MHzでの給電点インピーダンスと整合回路 で,
「ANTの長さを,共振長より少し長い11.5mにすると,250pFのコンデンサー1個を直列に挿入するだけで整合がとれる)」と説明しました。

それは,ANTの先端まで垂直に伸びている場合であって,同じ11.5m長でもANTエレメントの一部が水平になったりするとインピーダンスが大きく変わるのでコンデンサー1個で整合はできません。


でも,次のような条件の7MHz逆L型ANTを張ると,計算上,コンデンサー1個で整合ができそうです。
       (下図はMMANAの形状画面の抜すいです。) MMANAの使い方は ⇒ こちらへ戻ってください

     高さ5m横10.35m逆LANT形状
上の図のANTのインピーダンスを計算すると次の値となりました(MMANA計算結果から抜すいです)。
          15.35mANT Z
インピーダンスのR分は約50.1Ωですが,リアクタンス分が + j422Ωと非常に大きな値です。
SWRは73と非常に大きな値です。

この給電点のインピーダンスを「Smith v3.10」で表示させると次のようになります。
     Smith V3.10の使い方は ⇒ こちらへもどってください
下図のDP1の点がANTのインピーダンス Z=50.1+j422 です。
このリアクタンス+j422(Ω)を打ち消せば Z=50±0となり,50Ωの同軸ケーブルと整合できます(下図のTP2)。
     キャプチャ001

+j422(Ω)を打ち消す-j422のリアクタンスとなるコンデンサーの値は53.2pF / 7MHz と表示されました。
     15m逆LANTシンプル整合回路

以上から,垂直部5m水平部10.35mの逆L型ANTにするとコンデンサー1つで整合できそうです。
しかし,
移動運用先で,10m超の水平部ワイヤの中央部が垂れ下がらないように張るのは簡単ではありません。
また,周囲の構造物・樹木・車などの影響を受けるとインピーダンスは大きく変化します。
低い接地抵抗のアースでないと計算値のようになりません。

これらのことから,実際の移動運用においては,垂直部5m、水平部5~6mの逆L型ANTを建て,ANTチューナー(カップラ)で整合をとるのが良いと考えます。

では,実際に,5m釣竿を2本使用した垂直部5m+水平部5.7m=全長10.9mの逆L型ANTの場合のインピーダンスとマッチングを計算してみましょう。

       垂直部5m+水平部5.7m=全長10.9mの逆L型ANT インピーダンス
   7MHz 逆L ANT
上記のインピーダンスを50Ωに整合させるマッチング回路が必要です。

次の2つはコイルとコンデンサーが各1個で整合できますが,周囲の構造物などでインピダンスが計算通りとならない場合があるので,コンデンサーは可変コンデンサー(バリコン)と固定コンデンサを並列にして使用すると良いでしょう。
(回路はシンプルですが,ANTの高さ長さに合わせてLとCの値を変更が必要です)
     整合回路(A)


次の2つはT型チューナです。CLC型の2つのコンデンサをバリコンにすると整合できる範囲が広くなり,短時間でマッチングできます。
     整合回路(B)

次の2つは市販のアンテナチューナなどに見られるマッチング回路です。
     整合回路(c)


これらの中で,バリコンが150pF以下で済むCLC型が安価で整合範囲も広くとれるマッチング回路かなと思います。


移動運用などに便利なアンテナチューナの自作については こちら ⇒ 7~28MHz Antenna Tuner アンテナチューナーの自作のページを参照ください。


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  1. 2015/07/23(木) 15:40:21|
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7~28MHz アンテナチューナーの自作

7~28MHz Antenna Tuner アンテナチューナーの自作
Homebrew antenna tuner,Homemade antenna coupler.
                                   総目次へもどるは ⇒ こちら

防水機能がありそうな樹脂ケースを100円ショップで見つけたので(200円),
ヨットなど移動用にCLCアンテナチューナ(CLC Type Antenna Tuner)を自作しました。
回路はシンプルですが,簡単に製作できて整合範囲の広いチューナーです。
 (Antenna Coupler アンテナカップラー,空中線整合器とも言います)。
     01_CLC ANT tuner基本回路

下は,200円の樹脂箱の中に部品を並べてみた写真です。
     DSC00700.jpg

下の写真は,半透明のアクリル板にバリコンを取り付け,7~10MHz用のコイルを取り付けた完成写真です。
コイルは2mmφのPEW線を単2電池へ10回巻きしたものを取り付けました。
線の直径が2mmφなので巻き枠なしの空芯でも大丈夫です。
バリコンは手持ちの200pF/1kvを使用しました。14MHz~28MHz用なら100pF/1kvでよいでしょう。
          (写真はクリックで拡大します)
     01_CLC_ANTチューナー

下の写真は,横から見たものです。コイルは500Wでも耐えられる太さです。
配線は同軸ケーブルの網線を使用して高周波抵抗を少なくしています。
入力用コネクタ端子などを取り付けず,30~50cmの同軸ケーブルを直接半田で接続します。
同軸ケーブルの先にコネクターを取り付けます。
          (写真はクリックで拡大します)
     02_CLC_ANTチューナ横写真

下の写真は,うしろ側から見たものです。左側がANT側です(左右対称ですが・・・)。
          (写真はクリックで拡大します)
     03_CLC_ANTチューナ後写真


上の写真のコイルで6MHz~11MHz用アンテナチューナ(カップラ)として動作します。
3.5MHzで使用する場合は,コイルの巻き数を20回巻きにします(巻き枠が必要)。

コイルに端子を作り,14MHz~28MHz用のインダクタンスとなるように工夫します。
1つのコイルの途中に端子を設け,切替スイッチでコイルを部分的に短絡する方法には次のような欠点があります。
高いバンドの時に,低いバンドで使用していたコイルLbをスイッチで短絡し,小さなインダクタンスLaとしますが,
Laの磁力線によって短絡した部分Lbに起電力が生じます(下図)。
Lb部分に生じた電力が短絡電流となり,コイルLaのQを下げてしまいます。
   02_CLC ANT tuner2

送信電力が小さい(QRP)時は次のように低いバンドで使用するコイル部分を短絡しない方法もあります。
ですが送信電力が10W以上になると開放端の高周波電圧が高くなるので危険です。
     03_CTC ANTtuner coil

低いバンドのコイル部が負荷となって高いバンドのコイルのQの低下を防ぐため,
コイルを分割し,次のように配置します。
        04_コイルのQ低下を防ぐ


次の写真は,以上に基づいて高いバンド用のコイルを90度ずらせて配置したものです。
          (写真はクリックで拡大します)
     04_CLC_ANTチューナ 多バンド用

バンド切替は次の写真のように圧着端子をビスとナットで締める方法で実施します。
長所は,ロータリースイッチ接点よりしっかり接触するため信頼性が高い点です。
短所は,バンド切替に手間がかかる点です。
          (写真はクリックで拡大します)
     05_CLC_ANTチューナ 多バンド用横2

次は端子部分の拡大写真です。  (写真はクリックで更に拡大します)
     06_CLC_ANTチューナ 多バンド用拡大

以上は7MHzから28MHzまで使用できるように2個のコイルを使用しましたが,14MHz~21MHz、あるいは18MHz~28MHzの範囲で使用できればよい場合は、1つのコイルで,かつ中間端子なしのシンプルなコイルでもよいでしょう。

【CLC型ANTチューナー(カップラー)のチューニング操作方法】
 操作はコイルのタップの選択し,送信機側バリコンVC1 と ANT側バリコンVC2だけです。
 それらの操作手順は「14.T型(CLC型)アンテナチューナー(カップラー)の自作‐2」の
 ページの後半に掲載していますので参照ください。
 同ページへもどるは  ⇒ こちら をクリックしてください。 

次の写真は,60W電球をダミー負荷とし,21MHz出力60Wを加えてチューニングをとった状態です。
(60W電球が定格で点灯した時の抵抗値は約170Ωです)
     08_電球負荷でテスト2

オートアンテナチューナ(ATU)と比較するとマニュアルANTチューナは手操作が必要ですが,
完全な状態まで整合(チューニング)がとれる長所があります。
ATUはSWR1.5程度までチューニングがとれた時点でチューニング動作を終了するものが多くみられます。

ATUはチューニング可能範囲がSWR3程度までの機種もありますが,マニュアルANTチューナは
1600Ωなど広い範囲まで可能な機種もあります。
チューナーの損失についても部品点数の少ないマニュアルチューナが優れています。

ヨットに取り付ける場合は,銅の腐食防止のために網線部分にミシンオイルを塗ると良いでしょう。
(バリコンのローター軸にオイルを付着させてはいけません・・・ローター接点部の接触不良が生じます)。


「CLCマニュアルチューナの操作手順」の掲載ページへもどるは  ⇒ こちら をクリックしてください。 


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  1. 2015/07/22(水) 11:25:02|
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